<教えてくれた人>
宮田雄吾先生

精神科医。4児の父親。長崎大学医学部卒業後、2003年、園長として児童心理治療施設「大村椿の森学園」を開設。現在、同学園主任医師と医療法人カメリア大村共立病院院長を兼務。著書に「ストレスに強い人になれる本」(日本評論社)、「子育てがつらくなったら読む本」(情報センター出版局)など。


子どものストレスとの向き合い方

適度なストレスは子どもの成長には欠かせません。子ども自身がストレスを乗り越える経験を重ねることで、ストレスに持ちこたえる力がついていくからです。ですので、子どもがストレスを抱えている(何か問題に直面している)と気づいても、手を出さないほうがいい場合もあるのです。親が手を出さないと子どもは翻弄されることもあるでしょう。でも、それをじっと見守りながら、本当の危機に直面した時に手を差しのべてあげること。この見極めは大変難しいのですが、そうした対応が子どもの成長につながっていくのです。

ストレスをなくすことは不可能で、基本的に簡単に解消できるものではありません。ですので、泣いたり、くよくよしながら時間をかけてなんとか乗り越えていけば十分です。子どもがストレスを抱えてしまったら、そんなふうに声をかけてあげるのもいいかもしれません。

子どものストレス対処法・発散方法

大人と同じように、子どももストレスが高まりすぎてしまうと、身体や心に支障をきたしてしまいます。そうならないためには、日々の生活での親の対応が大事になってきます。

巷にはたくさんの情報が溢れていますよね。時に、情報の与え方が子どものストレスを高めてしまうこともあるのです。例えば、幼い子どもは、新型コロナウイルスや戦争に関するニュースを繰り返し見てしまうと、映像の中のことを必要以上に身の周りのことと捉えてしまい、不安や恐怖が高まってしまいます。そのため、年齢や理解力に応じて情報を与えることが大切です。また、子どもは大人以上に噂やデマを信じ込みやすいので、正しい情報を家族や身近な大人が伝えるようにしましょう。

「勉強の遅れが気になって、ついつい学習に口を出しすぎてしまう」
「子どもがゲーム依存になるのが怖くて、過剰に口出しをしてしまう」――そんな心当たりはありませんか?
親は自分自身の不安を減らすために、子どもを支配してしまったり、介入しすぎてしまう場合があります。親から過剰に口を出されたら、子どものストレスが高まってしまうのは当然です。くれぐれも過剰な介入には気をつけましょう。

子どもは学校での10分の休み時間でも、追いかけっこをしますよね。子どもは、大人以上に活動を好み、活動することで落ち着くのです。ですので、ストレスを高めすぎないためにも、積極的に身体を動かしたり、暇を減らすように促しましょう。

何よりも子どものストレスを高めすぎないためには、「当たり前の日常」を可能な範囲で維持することが大事です。


子どもの不安を高めない秘訣

不安な気持ちを打ち消そうとすればするほど不安になった・・・という経験はありませんか? それは、不安が「かまってちゃん」だから起こるのです。要は、解決しよう、打ち消そうと、かまえばかまうほど増えていくということです。
逆に、不安は放置したままにしていると、自然と落ち着いていくという性質を持っています。

ですので、その不安なことに必要以上に関心を向けず、ほったらかしたまま、今、現実にすべき目の前のことにきちんと打ち込むことで、気持ちは落ち着いていきます。

子どもの不安を高めないためには、生活の中で日課を持たせることが大事です。規則正しく過ごせるように、ある程度、この時間に何をするというのを決めておくといいでしょう。そうすれば、宿題など目の前のやるべきことにも打ち込みやすいものです。
日課を持つことで、サーカディアンリズム(体内時計)を保つこともできるので、体調もよくなります。

また、目標や目的を持つことも大切です。ポイントは「テストで80点以上取る」「サッカーの試合でゴールを決める」など、手の届く目標にすることです。あまりに時間がかかる目標では、達成できないかもしれないという不安が高まってしまう場合もあるからです。

気持ちが落ち着くための“型”を持っておくことも必要です。要は、これをやれば落ち着くというものを持っておくこと。子どもなら、ぬいぐるみを抱くなどでもかまいません。そうすれば、不安が高まった時に役に立つでしょう。

不安は自律神経の乱れによって引き起こされるので、身体を健康に保つことが重要です。睡眠時間を十分確保する、早寝早起き、規則正しい食事、運動をする、光に当たるなどを日頃から心がけましょう。


ストレスに強い子どもになるためには?

子どもにはストレスに強くなってほしい、と思う親御さんも多いのではないでしょうか。
ストレスに強い人というのは「ストレスを受け流す技術が高い人」ということです。
ストレスを受け流すためには、大きくは下記の4つがポイントです

・どうしてもできないことは、「手伝って」と他の人に頼む
・知らないことは教えてもらう
・嫌なことは丁寧に断る
・不満が溜まったら、愚痴をこぼす

頑張り屋の子どもは「手伝って」というセリフが言いづらかったりするものです。教えてもらうことは恥ずかしいと思っている子や、嫌なこともなんでも引き受けてしまう子もいるでしょう。それではストレスが高まってしまいますよね。でも、上記のような考え方を持つことができるようになれば、ストレスを上手く受け流せるようになるということです。
他にも「休むことをよしとする」「誰にでも好かれようとしない」「相手にはいろんな側面があることを受け入れる」「手を抜く部分を見極める」などが、ストレスに強くなる考え方です。

ただ、こうした考え方は、学校で教わる模範的な考え方と必ずしも一致しません。どちらが正しいというわけではないので、気持ちに余裕がある時は模範的な考え方をするなど、置かれた状況や疲労度に応じて、いろいろな考え方を使いわけられるといいでしょう。重要なのは、どちらの考え方も大事だと知っておくことです。
ストレスを上手に受け流せるようになるために、上記のような考え方を子どもに伝えておくといいでしょう。

新型コロナウイルスによる子どものストレスへの影響は?

新型コロナウイルスの流行当初、子どもたちは通学という身体を使う機会が減り、光に当たる時間も減ってしまいましたよね。先に述べたように、子どもは活動することで心が落ちつくので、少なからずストレスを受けたのではないでしょうか。

また、コロナ禍になり、学校でも黙食をするなど圧倒的に会話が減っています。通常は話すことで不安を解消・共有できるのですが、会話が少なくなったことで、不安がなかなか解消できない子もいるでしょう。一方、急速に人との接触機会が元に戻り始めることで、この環境の変化についていけない子も多いと言えます。
コロナにより社会不安が煽られ、子どもは経済状況がわからないながらも、不安だけが高まったり、新型コロナウイルスそのものへの恐怖や先の見えない不安を抱いている子もいるでしょう。

子どもが何に一番不安を感じているかを見極め、上記でお伝えしたようなことを取り入れながら、子どもの不安を高めないように日々を過ごしてほしいと思います。

前編「ストレスを抱えるとどうなるの?子どものストレスサインを知っておこう」はこちら