夏が近づくと気になるのが紫外線。子どもの日焼けを防ぐ方法や正しい日焼け止めの選び方、日焼けをした時の対処法について、皮膚科専門医の泉さくら先生に伺いました。
<教えてくれた人>
泉 さくらさん
ココメディカルクリニック院長。琉球大学を卒業後、東京大学医学部附属病院、帝京大学医学部附属病院などに勤務。漢方医、美容・皮膚科専門医としてメディア出演や医療監修でも活躍。
子どもに日焼け止めは必要?

子どもにとって、なぜ日焼けを防ぐことが必要なのかを知っていますか?
子どもは体重あたりの体表面積が広いので、大人よりも水分が蒸発しやすく、肌のバリア機能も弱いため、紫外線を浴びるとやけどをした時のように水ぶくれができたり、脱水や発熱を起こしてしまうことがあるのです。また、紫外線によるダメージが蓄積されると、皮膚がんのリスクが高まってしまいます。子どもの肌の健康を守るためにも、日焼け予防は大切なのです。
日焼けには、急性的に炎症をおこして肌が赤くなり、やけどのようにヒリヒリする状態「サンバーン」と、その後、色素が沈着して肌が黒くなる状態「サンタン」の2種類があります。
日焼けをして肌が黒くなるのは、身体を守る反応であり、実は肌が強い証拠です。また、日焼け止めを塗っていても、体質によっては肌が黒くなってしまう場合もあります。でも、子どもは肌の代謝が早いので、翌年には元に戻ると言えるでしょう。
子どもの日焼け止めを選ぶポイント
子どもの日焼け止めは、敏感肌用、無香料・無着色、アルコール無添加の肌にやさしいタイプを選びましょう。SPFは10〜30、PAは+++程度で十分です。
ちなみにSPFは肌が赤く炎症する原因になる紫外線B波(UVB)を防ぐ値(最大50+)、PAは黒く日焼けするのに関わる紫外線A波(UVA)を防ぐ値(+から++++の4段階)の略称です。どちらも数値が高いほど効果は上がるものの、肌への負担が大きくなる場合があります。
乳児期から使用するなら、紫外線吸収剤が不使用の「ノンケミカル処方」がおすすめです。ベタつきが少なく保湿感もあり、何より肌への負担が少ないので、外出が増える生後半年くらいから塗ってあげるといいでしょう。
日焼け止めの塗り方、塗るタイミング

日焼け止めは、十分な量をむらなく塗ることがポイントです。塗る量が少ないと、表示されているSPFやPAの効果を得られない可能性もあるからです。何よりも大事なのは、外出する直前に日焼け止めを塗ることです。日焼け止めは浸透するものではなく、肌の表面をカバーすることで効果を発揮します。外出するからと早めに日焼け止めを塗ってしまうと、汗や摩擦で落ちてしまいやすいので、家を出る前に塗ってあげることが大切。髪の毛も日焼けをするので、髪の毛にも使用できるスプレータイプの日焼け止めを外出前にサッとかけてあげるといいでしょう。
また、日焼け止めはこまめに塗り直すことも大事です。汗をしっかり拭き取ってから、2〜3時間おきに塗り直しましょう。
日焼け止めは、保湿剤や虫よけと併用しても大丈夫。保湿剤を使用する場合は、保湿剤を塗ってから最後に日焼け止めを、虫よけは日焼け止めを塗った後に使用しましょう。
日焼け止めが落ちていないと感じたら…
日焼け止めが残っていると肌荒れの原因になってしまうため、泡立てた石けんなどで、しっかり落とし切ることが大切です。子ども用の日焼け止めは「石けんで落ちる」と謳っているものも多いのですが、中には落としきれない場合も。十分落とせていないと感じたら、敏感肌用のクレンジング(大人用)を使うといいでしょう。石けんでゴシゴシ洗うよりも、肌にとっての負担は少ないものです。
なお、日焼け止めは肌への研磨作用があるので、肌に傷があったり肌が弱いと、肌荒れが生じてしまうこともあります。日焼け止めを塗ることを優先させるのではなく、子どもの肌状態を見て対応することが大切です。
すぐできる!子どもの日焼け対策

外出する時は、子どもに日焼け止めを塗り、つばのある帽子をかぶせましょう。キャップでもハットでも、つばが広いほど、より紫外線をカットできます。肌の露出を少なくするために、できるだけ長袖や七分袖を着用させるといいでしょう。
また、UVカットの子ども用サングラスをかけさせるのもおすすめです。肌と同様に眼も紫外線のダメージが蓄積してしまうと、大人になってから白内障など眼の病気のリスクが高くなってしまうのです。
1日の中で紫外線が最も強くなる10~14時は、なるべく屋外活動は避けるようにしましょう。外遊びをするなら日差しが控えめな朝や夕方に。日陰の紫外線は日向の約半分だと言われているので、外ではなるべく日陰を歩くように意識するといいでしょう。
ベビーカーで赤ちゃんと外出する際も紫外線に注意を。ベビーカーは地面から近く、地面からの照り返しによる紫外線も受けてしまうので、必ず日よけカバーをしましょう。抱っこひもを着用する時は、大人が日傘を使うなど赤ちゃんに直射日光があたらないように気をつけて。
お昼寝をする時は、窓側を避けることが大事です。紫外線を浴びるだけでなく、脱水になるリスクも高くなってしまいます。
プールや海水浴など水遊びをする際は、ラッシュガードを着用させましょう。水の中に入っていると日焼けしにくいと思いがちですが、水の反射で紫外線の量は増えてしまいます。
子どもが日焼けをした時の対処法

赤みやヒリヒリ感がある場合は、身体が炎症を起こして体温が上がっている状態です。まずは、冷水シャワーや濡れタオルで患部を冷やしましょう。やけどと同じ状態になっているので、痛みや炎症が落ち着くまで、ひたすら冷やすことが肝心です。
また、皮膚の表面からは水分が蒸発し、身体は脱水を起こしているので、しっかり水分補給をすることも大切。内側から十分な水分を補うことで、肌を潤し、回復を促すことにもつながります。
炎症が落ち着いたら、ローションなどを塗ってしっかり保湿を行いましょう。ヒリヒリ感がある時は、肌表面に目に見えない小さな傷がついている状態です。日焼け止めと同様に保湿剤も刺激が少ないものを選ぶことが大事。夏向けの保湿剤にはアルコールや香料が入っているものも多く、痛みが生じてしまう場合もあるので、使用は避けたほうがいいでしょう。
発熱や倦怠感がある場合は、全身に症状が出ている状態です。患部だけでなく、太い血管のある首、脇、そけい部を中心に冷やしましょう。保冷剤よりも、ビニール袋に氷と水を入れたもののほうが、局所にあたってしっかり冷やせます。
日焼けをした後、強い痛みを感じたり、身体の広範囲に水ぶくれができている場合は、体内に細菌が入っている可能性もあるので医療機関で診てもらいましょう。発熱や倦怠感などが続くなど少しでも不安な症状があれば、長引かないうちに一度受診を。
日焼けをした後、注意することは?
日焼けをした後は、肌が敏感になっています。お風呂に入る際、熱すぎる湯やシャワーは、刺激になってしまうので避けるようにしましょう。シャワーを身体にかけて、痛いと感じたら温度を少し下げて調整を。くれぐれも身体をゴシゴシと洗わないように気をつけて。
また、身体を冷やすために、市販の冷感スプレーや冷却シートを使うのはやめましょう。
これらにはアルコールが含まれているものが多いので、日焼け後に使うと肌に刺激を与えてしまうことに。
子どもは水ぶくれができると、気になってしまい、こすったり、破いてしまいがちです。水ぶくれがつぶれると、雑菌が入って二次感染する可能性もあります。子どもが水ぶくれをつぶさないように注意しましょう。
身体の内側からのケアも大事
日焼けをして肌が炎症を起こしている時、身体は酸化している状態なので、抗酸化作用のある食材を摂るといいでしょう。抗酸化作用の高いトマトやニンジン、ブロッコリーなどの野菜を食べれば、肌の回復につながるのはもちろん、栄養面でもプラスに。子どもが日焼けをしたら、身体の外側と内側からケアしてあげることが大切です。