<教えてくれた人>
宮田雄吾先生

精神科医。4児の父親。長崎大学医学部卒業後、2003年、園長として児童心理治療施設「大村椿の森学園」を開設。現在、同学園主任医師と医療法人カメリア大村共立病院院長を兼務。著書に「ストレスに強い人になれる本」(日本評論社)、「子育てがつらくなったら読む本」(情報センター出版局)など。


子どもにとってストレスは悪いもの?

そもそも、ストレスというと駄目なものだと思いがちではないでしょうか。
けれど、適度なストレスは、子どもの成長に不可欠です。
例えば、子どもはたし算いう課題(ストレス)を与えられて克服できると、ひき算、かけ算と、より難しく困難な課題(ストレス)に向き合えるようになっていきますよね。
クラス替えで仲のよかった友だちと別々になることは、ストレスになるかもしれません。でも、そのストレスを経験し、新しく出会ういろいろなタイプの友だちと付き合うことで子どもは成長していくのです。

また、適度なストレスは、子どもの生活を活性化させます。
例えば、遊園地でジェットコースターに乗った時、ハラハラ・ドキドキ・ワクワクします。こうした気持ちは、ジェットコースターのスリルというストレスが加わるからこそ、味わうことができるのです。

子どもにとって、適度なストレスは悪いものではありません。子ども自身がストレスを乗り越えた経験は、子どものストレス耐性を高め、成長のためにも大切だと捉えておきましょう。


子どものストレス要因とは?

適度なストレスは成長に不可欠ではあるものの、あまりに大きなストレスだと身体や心に不調をきたしてしまいます。子どもは、どんなことでストレスを抱えてしまうのでしょうか。

子どもは、大人より身体や心が未成熟で、ストレスに影響されやすい自律神経もまだ整っていません。大人と比べて知らないこともたくさんあり、過去にストレスの多い状況を乗り越えたという経験が乏しいことなどもストレスの影響を受けやすくなる要因になるでしょう。
また、子どもは自分で決定する場面が少なく、両親や教師など大人の承認が必要とされることや、考え方のバリエーションが少ないために柔軟に考えることが難しいのもストレスにつながる要因と言えるでしょう。

子どもは自分の能力と与えられた内容があまりに合わないと、ストレスをうまく処理できなくなってしまいます。例えば、同じクラスでも子どもの学力はさまざまなので、学力の低い子は同じことを教えられてもストレスを強く感じてしまいます。勉強だけでなく、対人交流のスキルなども同じことが言えるでしょう。

また、集団でいる中でストレスを抱えてしまうこともあります。子どもは未熟であるがゆえ、人との距離のとり方がわかっていないことも多く、平気で失礼なことを言いあってしまうことがあります。大人であればパワーハラスメントになりそうなことも子どもたちの間では起こりがちです。幼い子ほどそうした場面が多いと言えるでしょう。

なお、未成年の自殺の状況(※)を見ると、自殺の原因・動機で最も多いのが健康問題、次いで学校問題が占めています。実は、学校問題の中でも、いじめ以上に学業不振が原因になりやすいことがわかっています。

※参考「令和3年中における自殺の状況」(厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課)

周りの大人の対応が子どものストレスにつながることも!

大人の対応の中でも、子どものストレスにつながりやすいのは「説明不足」です。説明のないまま怒られてしまったら、ストレスになるのは当然です。子どもは大人より、そうした機会が多いのではないでしょうか。

また、親が楽しいこと、やりたいことを我慢させたり、子どもができたことに対しては喜ばず、できないことばかりを指摘することも、子どものストレスの大きな要因になってしまいます。こうした対応を続けていると、子どものストレスを乗り越える力は育ちません。なぜなら、何か問題に直面した時に、他人に相談することができなくなるからです。1人で解決しようとしても、どうしていいかわからず、その結果ゲームにハマるなど何かに溺れたり、行動が崩れがちになるのです。


子どものストレスサインとは?

ストレスを感じた際に子どもは不安を抱きます。そんな時、子どもには、身体の症状や行動の変化といった「ストレスサイン」が現れます。

身体に出るストレスサイン
・腹痛
・頭痛
・不眠
・食欲不振

行動に出るストレスサイン
・いつもよりよく泣く
・大人にしがみついて離れない
・急に幼い言動を使う、わがままになるなど赤ちゃんがえり
・夜尿、お漏らし
・朝、起きられない
・暴れる
・怒鳴る

幼い子どもほどいろいろなサインが現れますし、小学校低学年くらいでも、赤ちゃんがえりのようになることもあるでしょう。
身体に出るストレスサインはわかりやすい反面、ただの体調不良と捉えてしまいがちなので、日頃から子どもの様子を注意深く見ておくことが大事です。

ストレスサインに気づいたら?

子どものストレスサインに気づいたらどう対応すればいいのでしょうか。
子どもは「〇〇が嫌だ」「〇〇が怖い」など、不安を言葉にできないために身体や行動を通じてSOSを出しています。そこで、「〇〇が怖いんだね」など、子どもが不安に思っているであろうことを言葉に置き換えて話をしてあげるといいでしょう。
また、「不安な気持ちになるよね」など、子どもの不安に共感することも大切です。子どもが話を始めたら、最後まで聞くこと。子どもの不安な気持ちを「そんなことは心配しなくていい」と突き放したり、遮らないことが大切です。

不安な気持を抱えている子どもを何よりも安心させるのは、お父さん、お母さんの口調や表情です。子どもは大人が思っている以上に言葉の理解力が弱いので、言葉ではなく、口調や表情などから醸し出される安心できる雰囲気が大事なのです。

思春期の子はストレスを気づかれたくない!?

思春期に入るくらいの子どもは、苦しみや不安な気持ちを大人には気づかれたくない、自分で乗り越えたいと思っていることが多く、苦しんでいることを言いたくない場合があります。

この時期の子どもはストレスを感じている時、偉そうに甘えてくることがあります。「なんで朝、起こさないんだ!」というように、親に反抗するような態度をとりながらも甘えてくるのです。また、苦しいにもかかわらず、強がってしまうことも多いでしょう。そのため、子どもが何に対してストレスを感じているか分からないことがあるかもしれません。そんな時は、無理に聞きだそうとせず、子どもを包み込むような対応をとれば大丈夫です。例えば、帰宅した子どもの様子がいつもと違うと感じたら、夕飯に大好きな料理を作ってあげる。それで十分です。そうすれば、子どもは何も言ってはくれないかもしれませんが、親の気持ちは伝わるでしょう。


いかがでしたか?前編では、子どもにとってのストレスについて、ストレスの要因やストレスサインをお届けしました。後編では、子どものストレスとの向き合い方やストレスの対処法をご紹介します。

後編「今すぐできる! 子どものストレス対処法」はこちら