子どもの姿勢が気になる!
正しい姿勢を保つポイントや矯正方法を解説

気になる子どもの姿勢。正しい姿勢を保つためにできることと、悪い姿勢を矯正する方法とは?

正しい姿勢を手に入れるためには、姿勢を良くしようと意識することはもちろん、普段から体を柔軟にしておくことも大事です。後編では、姿勢や骨盤の歪みのチェック方法や正しい姿勢を保つための簡単な柔軟体操など、自宅で今すぐに取り組めることをご紹介します。

正しい姿勢、悪い姿勢のチェックポイント

子どもの姿勢 正しい姿勢
よい姿勢とは、どのような状態かご存じですか?

よい姿勢とは、横から見たときに耳、肩、骨盤、くるぶしが一直線になっている姿勢です。子どもの姿勢をチェックする際は、壁の前に立った状態を横から見るといいでしょう。

子どもの姿勢 悪い姿勢

上記のように
・ 肩が壁につかず、前に出ている
・ 背中が丸くなる
・ あごが前に出る
・ 頭が下がる
といった状態になっていたら、悪い姿勢の中で最も多い「猫背」です。

猫背になると
・階段を上り下りするだけの運動でも息が切れる
・肩や腰の筋肉がこり固まって痛む
・布団に入っても、体に痛いところがあり、なかなか眠れない
・通学途中や授業中など、よくお腹が痛くなる
といった影響も出てきます。このようなことがよく起こる子どもは、猫背が原因かもしれません。

この他にも、壁の前に立ったときに腰と壁の隙間が広く、お腹が突き出ている「ワニ型」や、背中全体が壁につき、下腹がぽっこりしている「ペンギン型」の場合も、悪い姿勢といえるでしょう。

悪い姿勢が続くとどうなる?

猫背など姿勢が悪い状態が続くと、背骨や背中の筋肉に過剰な負担がかかり、骨格をはじめ体全体に歪みが生じるなど悪影響が見られます。

骨格が歪む

背骨や背骨とつながっている骨盤は、周りにある筋肉によって支えられています。しかし姿勢が悪い状態が続き、体を支える筋力が低下してしまうと、筋肉が守っていた背骨や骨盤、そこから連なって体全体の骨格にまで影響を及ぼします。正常な姿勢や運動習慣を意識して筋力や体のバランスを保つことで、骨格への過剰な負担を減らすことができます。(*1)

怪我のリスクが増す

成長期の子どもは、骨の成長に筋肉の成長が追いつかず、体が硬くなりやすいという特徴があります。この年代の子どもがスマートフォンやゲーム、勉強などで猫背のような姿勢が崩れた状態が続くと、運動をした際に肩などに負担が集中して痛みが出る可能性があります。このように悪い姿勢や体が固まった状態で負担の大きい動作を続けてしまうと、膝や腰、背中などにケガを引き起こしてしまうことにもつながります。(*2)

全身に影響が出る

姿勢の悪化や体の歪みは、肩こりや腰痛、冷えなど将来的に全身のさまざまな症状の引き金となります。

背骨の骨格が歪んでしまうと、背中や腰の筋肉に負担がかかり肩こりや腰痛の原因に。骨盤が傾くことによって骨盤の内側を通る欠陥が圧迫されると、血液循環が悪化して下半身に冷えの症状が見られることもあります。子どもだからと油断せず、将来お子さんがこういった症状に苦しまないように、今のうちから正しい姿勢を意識的に保てるようにしましょう。(*1)

姿勢を左右する骨盤。歪みをチェックする方法は?

子どもの体の問題を研究し続けている日本体育大学・野井真吾先生によると、正しい姿勢を保つには骨盤が重要で、骨盤が歪んでいると姿勢の悪化に直結してしまうそうです。

「肩と骨盤が平行になり、骨盤が立っている状態であれば、背骨も正しい位置になります。一方、骨盤が後ろに倒れてしまう(歪んでいる)と、背骨が曲がってしまうのです。

その場足踏み

骨盤の歪みは『その場足踏み』でチェックすることができます。

立って目をつぶり、その場で1分間足踏みをします。足踏みを終えた後、始めたときと同じ位置にいれば骨盤は正常な位置。元の位置から左右どちらかにずれていたら、骨盤が歪んでいる可能性があるでしょう。

骨格は姿勢を記憶するものです。背中に棒のような1本の軸があるイメージで日常生活を送れば、自然と姿勢が良くなるはずです。また、座るときは背もたれを使わず、両足を床にしっかりつけ、お尻をぐいっと引き締めると、骨盤の向きが正しい位置になります」

運動不足は「土踏まず」をチェック

"子ども<br
また、野井先生は姿勢と「土踏まず」、さらに「体幹」の関係も教えてくれました。

「『土踏まず』がないと、姿勢のバランスが保てなくなるのはもちろん、足の指の働きが悪くなり、歩く、走る、飛ぶときに地面をしっかりと蹴れなくなってしまいます。土踏まずがない場合は、外遊びやウォーキングなどで足をしっかりと使うことが大事です。そうすれば、自然と土踏まずはできていくでしょう。

また、姿勢にとって、体(胴体)の中心にある筋肉『体幹』も重要です。体幹がしっかりしていると、体重を支えることができ、自然と背筋が伸びて、正しい姿勢を保つことができるのです。さらに、骨の歪みが整ったり、体のバランス力が高まることにもつながります」

正しい姿勢を子どもに伝える4つのポイント

ここからは、実際に子どもに「姿勢の良い・悪い」を意識させ、正しい姿勢を伝えるためのポイントをご紹介します。

姿勢の悪さを自覚させる

まずは、子ども自身に「今、自分は姿勢が悪いんだ」ということを自覚させましょう。家で勉強やゲームをしているとき、食事中など、姿勢が悪くなりがちな場面を観察して「今、背中が丸まっているよ」と声を掛けてみたり、実際に写真を撮ってみたりして、子ども自身に姿勢が悪いという自覚を持たせてあげることから始めましょう。(*3)

正しい姿勢を保つメリットを伝える

子ども自身が姿勢を良くすることのメリットを把握していないと、キープすることは難しいでしょう。例えば、筋力を落とさないことで運動能力が向上したり、将来的な体の不調を未然に防ぐことができたりなど「姿勢を良くすればこんなにいいことがあるんだ」と子ども自身が気付くことが重要なのです。(*3)

大人が手本を見せるなどして、正しい姿勢を具体的に伝える

自分の姿勢の悪さを自覚し、良くすることのメリットを理解できたと感じたら、いよいよ「正しい姿勢とはどんなものなのか」具体的に伝えてみましょう。子どもは身近にいる大人の真似をして成長するものです。まずは身近にいるお母さんやお父さんが正しい姿勢のお手本を見せていくと、少しずつ真似をして子どもは正しい姿勢を習得していくはずです。(*3)

正しい姿勢で過ごす環境を作る

正しい姿勢を保つために「体幹」が重要だとお伝えしましたが、実は、子どもの体幹は、筋トレをしなくても「鬼ごっこ」や「けんけんぱ」、「だるまさんがころんだ」など、何気なく行っている遊びのなかで鍛えられています。ジャングルジムやブランコ、すべり台など、同じ動きを繰り返す遊具でも体幹はアップします。正しい姿勢を手に入れるためにも、日ごろからこうした遊びを思い切り楽しむと良いでしょう。

自宅でできる! 悪い姿勢を矯正する方法とは?

悪い姿勢 矯正する方法
姿勢は、骨の形状ではなく、骨を覆っている筋肉の影響が大きいとされています。姿勢が悪くなってしまうのは、一部の筋肉が固くなり、体のバランスが崩れてしまうことが原因の一つです。そのため、正しい姿勢を手に入れるためには、全身の筋肉をやわらかくすることも大切です。

野井先生に教えていただいた、正しい姿勢に導く簡単な柔軟体操がこちら!

<柔軟体操の方法>
※各2回ずつ繰り返しましょう。【上半身】
首を伸ばす
①頭に手をかけて、左に首を傾け、15秒間キープ。右も同様に行う。
②頭の後ろに両手をかけて、前に首を倒し、15秒間キープ。背中とお腹を伸ばす。
①膝を伸ばしたまま立ち、上半身を前に倒し、15秒間キープ。
② 腰に手をあてて立ち、上半身を後ろに倒し、15秒間キープ。体の側面を伸ばす。
①右腕を横から上へ振り上げ、体を左へ曲げ、15秒間キープ。
②左腕を横から上へ振り上げ、体を右へ曲げ、15秒間キープ。

【下半身】
太ももの裏を伸ばす
①片方の足のかかとをイスにのせて、ひざを伸ばす。
②息を吐きながら、上半身を前に倒し、15秒間キープ。反対の足も行う。腰をひねる。
①仰向けになり、息を吸いながら片方の膝を上げる。
②上げた膝を横に倒す。顔は倒した足と逆側に向け、15秒間キープ。反対の足も行う。
内ももをのばす
①床に座り、両足の裏を合わせて体に引き寄せ、股関節を開く。背中はまっすぐに。
②上半身をゆっくり前に倒し、15秒間キープ。


ここまで正しい姿勢を身につけるための意識づけや、ストレッチなどの具体的な方法をお伝えしましたが、日ごろから正しい姿勢を意識していないと、また元通りになってしまうかもしれません。

自分の姿勢やどんな場面で姿勢が悪くなってしまうのかを常に意識し、スマートフォンやエスカレーターなど便利な暮らしに頼り過ぎないよう生活習慣やリズムを整え、習い事などを活用して運動する習慣をつけさせるなど、お子さんの体や将来のためにできることから始めましょう。


参考記事・書籍
(*1)大正製薬:体のゆがみ(参照2024-8-13)
(*2)来住野 麻美:子どもの健康・体力づくり 子どもの姿勢とけが(参照2024-8-13)
(*3)norokka: 正しい姿勢になる方法 正しい姿勢を子どもに伝える、5つのステップ(参照2024-8-13)

取材・文:サカママ編集部 イラスト:此林ミサ 取材協力:野井真吾(日本体育大学 体育学部 健康学科教授。子どものからだと心・連絡会議議長) 参考文献:野井真吾著『大人になってこまらない マンガで身につく正しい姿勢で元気な体』(金の星社)、『子どもの“からだと心”クライシス』(かもがわ出版)

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