<教えてくれた人>
佐藤亮子さん

佐藤ママ

津田塾大学卒業後、地元大分県内の私立高校で英語教師として勤務し、結婚。その後、奈良県に移り、長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校、長女は洛南中学・高等学校を経て、東京大学理科3類に進学。現在は4人とも医学の道に進む。その育児法や教育法が注目を集め、全国で講演活動を行うほか、『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)ほか著書多数。


一筋縄では解決しないことも起こる子どもとの毎日。声かけに関しても、“注意する”“褒める”という2択だけではありません。そこで、「こんなときは何と声をかけたらいいの?」と悩む読者から寄せられた4つのシーンをピックアップ。佐藤さんの「親子の信頼関係を築き、子どもの自己肯定感を高めるための声かけ」という考え方を軸に、皆さんのご家庭の場合を想像しながら読んでみてください。


<声かけのお悩み1>
朝が苦手な子どもに
最適な声のかけ方は……?

毎朝、小3の息子を起こすのに一苦労しています。「○○、起きなさい! いつまで寝てるの!」と何度も大声をかけ、やっと起きてきます。その上、「おはよう」も言わず、不機嫌な様子で朝食をとり、登校していきます。1日のスタートの朝からイライラして、家の中も険悪な雰囲気になりがちです。

<佐藤ママの声かけ>
「○○ちゃん、起きなさい~」と穏やかに声をかけ、
「眠いけど、今日も頑張ろうね」と笑顔で送りだす。

■ポイント1
どならず、にこやかに

「朝を気持ちのいいスタートにできると、子どもはやる気に満ちた明るい1日を送ることができる上、親もストレスを抱えずに済みます。どなったり大声を出すのではなく、いつも穏やかに接することを心がけましょう。そしてVol.3でもご紹介しましたが、親の態度はその場の状況に左右されることなく、常に一定が基本。名前で呼ぶときにも、普段通りにし、叱るときだけ呼び捨てにするようなことは避けましょう。 朝、ニコニコしながら明るく送りだすのは、親の大切な役目です。また、挨拶をしないということですが、そんなときこそ親がきちんと明るく挨拶をしたらいいと思います。子どもが眠いのであれば、時には挨拶がないことも見逃してあげましょう。子どもの態度にイライラしないことも子育ての基本です。まずは親が見本となる態度を示してあげられるといいですね」

■ポイント2
声かけだけで起こそうとしない

「成長期の子どもが眠いのは当たり前。子どもが1人で起きることは期待しない方が無難です。でも、登園や登校のためには決まった時間に起きる必要がありますから、無理なことを子どもに期待するのではなく、少しでも機嫌よく起きられるように親が工夫しませんか?私は声をかけても子どもが起きてこないときは、布団を半分めくったり、足を温めるために靴下を履かせたりしていましたよ。そうすると子どもは自然に目を覚まします。目覚めたらまず一番に、お茶を飲ませるのもおすすめです」

■ポイント3
起きられない要因を考える

「そもそも朝起きられないのは、夜寝るのが遅く、睡眠が足りていないからかもしれません。宿題などが終わらないためになかなか寝ようとしなくても、就寝時間はしっかり守ることが大事です。宿題が終わるまでダラダラと起きているのを許すより、決めた時間になったら親が強制的に電気を消すなどするといいでしょう。もし、前の晩にやり残したことがあったら、次の日の朝は気になるので、きっと自分で早く起きるはずです。就寝時間を守らないといけないと思うと、子どもはその時間までに急いで宿題を済ませるようになると思いますよ」


<声かけのお悩み2>
子どもに集中力がなく
勉強が長続きしません……

小1の息子は宿題をしていても、いつの間にか絵を描き始めたり、集中して取り組めません。いつも意識が散漫で途中で飽きてしまい、「集中してやりなさい」と言っても効果がありません。

<佐藤ママの声かけ>
「問題が難しいから、集中できないの?」と声をかけ、
一緒にやる。

■ポイント1
しばらく様子を見た後にリセット

「小1は、まだまだ何かに集中することは難しい年頃です。途中で別なことに集中し始めたら、しばらくそばで様子を見ておきましょう。10~20分ほど違うことをしているのを見守り、『それ、面白そうだね。でもちょっと1回ストップして、宿題の続きをしようか』と声をかけ、再び宿題に取り組むように促すのがいいでしょう」

■ポイント2
一緒に集中できない理由を探る

「そもそもなぜ集中できないのかを考えてみると、子どもが問題を解けないからという理由がほとんどです。わかるならどんどんやろうとするでしょ? 問題がわからないから集中できず、注意力散漫になっているわけですから、集中だけしたからといって、わからない問題が解けるようにはなるとは限りません。要するに、その問題に関しての実力不足が原因なので、『どこが難しいのかな?』と親が一緒に考えてあげましょう。理解の足りないところはヒントを与えながら、宿題を手伝ってあげて、少しずつ集中する時間を増やすことがいいと思います。そうすれば、取りかかったら中断しないで終わらせることができるようになると思います」

■ポイント3
何かをやり続ける経験を

「この悩みと同様の相談をよくいただきますが、これには根本的な問題があると思っています。子どもは小さなときは遊びが面白く、話しかけても気がつかないほどに没頭して遊んでいることがあります。そのようなときに、そばを通りながら『それが済んだら片づけなさいよ』と声をかけた経験はありませんか?せっかく遊びに集中しているのにそのような言葉をかけられると、子どもは夢から覚めてしまいます。要するに、親が子どもの集中力を断ち切っていることになるわけです。このようなことを続けていると、子どもは何かをやり続ける経験ができなくなります。親が集中してほしいもの(つまり勉強)だけに子どもを集中させることは、親の勝手ですね。遊びに集中できる子は、勉強にも集中できるのです。小さな頃から、子どもが集中しているときに、親の都合で決して邪魔をしないこと。気持ちよく集中できることが、のちの勉強への集中につながります。危険なことや正しくないことでなければ子どもがしていることを中断させずに、『へぇー、すごいね!』と親が面白がる態度を見せることが大事です」


<声かけのお悩み3>
やりたいと始めた習い事なのに
行きたくないと言いだして困っています……

娘は年長になり、友達がスイミングスクールに通い始めたのを見て、自分もやりたいと言いだしました。私も小学校に入ったら水泳の授業があるので、賛成して通わせ始めました。ですが、本人が希望したにもかかわらず、3ヵ月で「行きたくない」と言いだし、毎回「行きなさい!」と無理やり行かせている状況です。

<佐藤ママの声かけ>
命令口調ではなく、「練習後に寄り道しよう」など
楽しい提案とセットで声かけをする。

■ポイント1
子どもの言葉にこだわりすぎず、親もフォローする

「4人の子どもを育てた私の経験から言うと、個人差がありますが、9歳以下の子どもは考え方や言動が幼児に近く、幼い部分がまだたくさんあります。しかも、このお子さんの場合はまだ年長児で、親は子どもの発言を重要視しすぎる必要はないと思います。子どもは、なんとなくいいなと思って『行きたい』と言っただけですから、幼い子どもには責任はありません。親御さんも小学校で役に立ちそうなので賛成したわけです。水泳の授業には役に立つことははっきりしていますので、ここは親が覚悟してフォローすることも私は必要だと思います」

■ポイント2
最低半年は続けることを目指す

「習い事は実際に通わせてみると『好きじゃない』『合わない』こともよくあります。でも次第に楽しくなることもあるので、短い期間で判断せず、できたら最低半年は続けた方がいいでしょう。そして続けてみて、子どもがどうしても楽しそうでないなら辞めさせてもいいかなと思います。親は『やっておくと得だよ』『頑張らなきゃダメでしょ』と声をかけがちですが、その声かけがプレッシャーになって、子どもが親に素直に気持ちを言えないような環境を作ってしまうこともあるので気をつけたいですね」

■ポイント3
命令ではなく、楽しいこととセットで

「『行きなさい!』と強く命令するように声をかけても、子どもは嫌な気持ちになるだけで、親子の信頼関係も損ねてしまいます。『楽しいご褒美をあげるから、嫌いなスイミングに行こう』と誘うのではなく、初めから『楽しいこと+スイミング』と決めたらいいと思います。そもそも、スイミングの後は疲れておなかが空きますから、わが家もスイミングの後の一番の楽しみは練習後に寄り道するファストフード店でした。今でも、スイミングとハンバーガーはセットでいい思い出になっているようです。『何かをしたらご褒美で』というのは親が押し付けることになり、子どもにはいい影響を与えません。『今度、大きなプールに遊びに行こう』や『夏は海に泳ぎに行こう』でもいいですね。子どもが前向きな気持ちになれるような提案の声かけを考えてみてください」


<声かけのお悩み4>
好き嫌いの多い子どもたち。
何と声をかけたら食べてもらえますか……?

年長と小2の子どもたちに食べ物の好き嫌いが多く困っています。調理を工夫しているつもりですが、残されたり食事途中に遊びだしてなかなか進まなかったりすると、「せっかく作ったのに」とイライラして、つい叱ってしまいます。「好き嫌いすると大きくなれないよ!」と声かけしても効果はありません。

<佐藤ママの声かけ>
どんなときでも食事は楽しくを忘れずに、
「食べたいものだけ食べてね。感想を聞かせて」と声をかける。

■ポイント1
「せっかく作ったのに」は言わない

「気をつけたいのは『せっかく〜したのに』という言葉は使わないことです。親が子どものために食事を作ったり、世話をするのは当然のこと。『せっかく』と言い続けると、ママの顔色ばかりを伺う子どもにになってしまうかもしれません。また、食べた感想を尋ねることも多いかと思いますが、『これ、おいしい?』と聞くと、子どもは「おいしい」としか言えませんね。子どもが自分の意見を率直に言いやすいように、『今日の料理はどう?』というオープンクエスチョンをおすすめします 」

■ポイント2
食事の適量や好みは子どもによって異なる

「私の経験からですが、食べる量や好き嫌いは子どもによってかなり異なると思います。きっとそれぞれもって生まれた遺伝子レベルの話ではないかと思うほど、同じように育てたのに違うのです(笑)。私は好き嫌いもその子どもの個性だと思い、大事にすることにしていました。肉が嫌なら魚に、野菜も別の野菜に置き換えればいいんです」

■ポイント3
残したり遊びだすのはお腹がいっぱいの証

「子どもが残したり途中で遊び始めるのは、もうお腹がいっぱいになったサインだと私は思っていましたので、『食べたいだけ食べたら残していいよ』と声をかけていました。食事時間が楽しくないと、そもそも食べたいという気持ちを損ねますし、消化にもよくありません。無理して食べさせることのないように、いつも大らかな気持ちでいてあげてほしいなと思います」


4話に渡ってご紹介してきた子育てがラクになる子どもへの“声かけ”の方法、いかがでしたか? 佐藤さんは、「親子がいつも仲良く、家の中は子どもがリラックスして過ごせる場であることが子育てには何よりも大事」と言います。そして、声かけはそのためのきっかけの1つになるそうです。ぜひ佐藤さんからいただいたアドバイスを生かして、今日からあなたもご自身の理想の子育てに向けて、適切な声かけを実践してみてください。

Vol.1 声かけが子育ての最強の武器になるのはなぜ?はこちら
Vol.2 こんなときはどう声をかける?〜子どもを注意するとき〜はこちら
Vol.3 こんなときはどう声をかける?〜子どもを褒めるとき〜はこちら