走る練習よりも大切なこととは?
子どもがかけっこで速く走れるようになる秘訣

かけっこする子どもたち

親が運動が苦手だから、子どもの足が遅いのは仕方がない…と諦めていませんか?でも、子どもは、かけっこで少しでも速く走れると嬉しいものです。元陸上競技100mハードル日本代表の木村文子さんに、子どもが速く走れるようになるためには、どんなことが大切かを伺いました。幼児~小学校低学年のお子さんや親御さんに向けてのヒントが満載です!

<教えてくれた人>
木村文子さん
元陸上競技女子100mハードル日本代表
エディオン女子陸上競技部一般種目ブロックアドバイザー

元陸上競技女子100mハードル日本代表 木村文子さん

子どもが速く走るためのコツ①
「幼少期はたくさん体を動かそう」

子どもが速く走れるようになる秘訣

子どもの足が遅いと「遺伝かも…」と思ってしまう親御さんもいるのではないでしょうか?
日本のトップ選手ともなれば、筋肉の質など遺伝が関係してくる場合もあります。でも、子どもの足の速さは、遺伝だけではなく、幼少期にどれだけ体を動かしているかが影響してくるともいわれています。
ですので、走る練習をするよりも、体を動かす環境を増やしてあげることが大事です。小学生の間は運動量を増やすことで、子どもが持っている運動能力が開花することもあります。体を動かすことで体力がつき、走る時も自然なフォームが身についていくこともあるでしょう。

私自身、小学生の頃に陸上を始めたものの、走り方を習ったことはなく、学校のグラウンドにある遊具を1周する、ジャングルジムをできるだけ速く登って降りる、タイヤを連続で跳ぶといったことをゲーム感覚で楽しみながら行っていました。当時、よくやっていたのがボールを2個使うサッカーです。ずっと走っている状態なので、走る力にもつながったんだと思います。

上記のような遊びや、おにごっこ、かくれんぼ、缶蹴りなど走ることを取り入れた遊びを日頃から行うことで、運動能力の向上につながっていきます。ボールを使える環境であれば、ボールを蹴りながら走って、そのボールをバトンにして競うといった遊びもおすすめです。
子どもは、お母さんやお父さんと一緒に体を動かすことが大好きですし、親と競えば勝ちたいという気持ちが沸いて、体を動かすことがより楽しくなるものです。子どもが速く走れるようになるためにも、子どもと一緒に体を動かす機会を増やすといいでしょう。


子どもが速く走るためのコツ②
「背中の柔軟性を高めよう」

最近は、姿勢が悪い、背中が硬いお子さんが増えているように感じています。スマホやゲーム端末を利用していると、背中が丸まった姿勢になりやすく、硬くなってしまうことがあるからです。また、外遊びが減っていることもあり、しゃがんだ状態から何かをくぐって立つといったような「背中を丸める・反らす」動きをする機会が少なくなっているのも要因といえるでしょう。

短距離走・長距離走を問わず、正しい姿勢は速く走るための基本です。いい姿勢でいるためには、日頃から、背中の柔軟性を高めるような動きを取り入れることも大事だと思います。例えば、遊具ならジャングルジムでの動きが背中の柔軟性を養いますし、おにごっこの一つ「こおりおに」をする時に、凍った人がタッチしてもらったら再び動けるようになるというルールを、凍った人の股の下をくぐると復活できるというルールに変えるのもおすすめです。
小学生くらいになったら、親子で下記のような背中のストレッチをするのもいいでしょう。
身長差がある場合は、親が膝をつくなど調整して行ってください。

・ストレッチ①

親子で向かいあって両腕を伸ばして相手の肩に両手を添える。上半身が地面と水平になるように背中を伸ばす。20〜30秒

速く走れるようになるストレッチ 背中の柔軟1

・ストレッチ②

横並びになり、内側の足を合わせ、互いの手を取る。外側に一歩分足を開き、外側に引っ張り合う。20〜30秒

速く走れるようになるストレッチ 背中の柔軟2

股関節の動きを自分でコントロールできるようになれば、足の速さにも生かされることがあります。でも、近頃のお子さんを見ていると、足が長い子が増えているものの、股関節周りが硬いように感じます。股関節の可動域を出すためには、先に述べたようなジャングルジムでの動きや、しゃがんだ状態からジャンプする動きを取り入れるといいでしょう。例えば「うつ伏せや足をのばして座った状態から、手を使わずに起き上がってダッシュする」を行うと股関節を使って起き上がるので、股関節の可動域を広げるのに役立ちます。


子どもが速く走るためのコツ③
「裸足で生活することもおすすめ」

子どもが速く走れるようになる秘訣 裸足で生活

速く走るには、足の着き方も大事になってきます。踵から着地するのではなく、足裏の真ん中あたりから、または足裏全体で着地するといいでしょう。子どもが靴を履いて走った時と裸足で走った時とでは、足の着き方が違うという実験データがあります。靴を履いて走ると踵から足を着いている子が多く、裸足で走ると、足裏の真ん中あたりで着地する子が増えたという結果が出ています。

近頃は、裸足で過ごす機会が少ないものです。家の中で裸足で過ごせば、足裏の筋肉を使うため、速く走ることにつながることもあるでしょう。


子どもが速く走るためのコツ④
「運動会前後で気をつけたいこと」

運動会 かけっこ

運動会前になると、速く走れるようにと思い、子どもの走り方を指摘したことのある親御さんもいるかもしれません。
子どもは指摘されると動きがぎこちなくなってしまう可能性があります。できるだけ自然な動きのままで運動会当日を迎えられるようにしてほしいと思います。ただ、速く走るためには正しい姿勢が大事になるので、緊張して下を向いている子には「前を向いて走ろうね」と伝えてあげるといいでしょう。

運動会の後は、子どもが速く走れなかったとしても、「遅かったね」「〇〇さんのほうが速かったね」など否定的なことは決して言わないことです。負けて悔しい思いを子ども自身で感じるのはいいのですが、親からそのことを指摘されたり、否定的な言葉をかけられると心に残ってしまうからです。どんな結果だったとしても、「楽しかった?」と聞いてあげることが大事。もし落ち込んでいたら一緒に寄り添ってあげてほしいと思います。

100mや200m走、ハードル、走り幅跳びなど選択肢が多いのが陸上競技のよさの一つだと思います。私自身、100mで勝てなかったので、走り幅跳びやハードルに取り組むようになりました。短距離走の魅力は、どれだけ速いスピードで走れるか、勝ち負けがはっきりしているといったシンプルさだと思います。「ある課題に取り組んだ結果、その成果が数字でもはっきりとわかる」、そうしたことにやる気が出るというお子さんは、短距離走に向いているかもしれません。少しでも速く走れるようになるのは、テストでいい点を取るのとはまた違った喜びだと思います。

陸上競技の小学生全国大会に出場している子どもたちのデータを見ると、4、5、6月生まれが多いといわれています。でも、高校生くらいになると生まれた月に偏りはなくなるものです。どうしても小学生の間は、生まれた月や体の大きさが、速く走ることに影響するかもしれません。でも、小学生の時に足が遅くても、いつ花開くかはわからないのです。幼児から小学生の間は、外遊びなどを通して日頃から体をたくさん動かすことが大切です。


いかがでしたか?前編では、子どもが速く走れるようになるために知っておくべきことや運動会の前後の声かけなどをお届けしました。後編では、特に小学生のお子さんに向けて、足の着き方や腕の振り方など、より具体的に速く走るためのポイントをご紹介します。

運動会前に知りたい!走り方と靴選び。子どもが速く走るための方法はこちら

取材・文:サカママ編集部 取材協力:木村文子さん(元陸上競技女子100mハードル日本代表。エディオン女子陸上競技部一般種目ブロックアドバイザー)

この記事のタグ

あわせて読みたい

前へ
次へ

新着記事

前へ
次へ