朝は毎日時間との戦い!という方も多いのではないでしょうか。そんな中、子どもが朝ごはんを食べなかったり、ダラダラ食べていると焦ってしまいますよね。子どもが朝ごはんを食べない理由や対処法について、サッカーキッズとママを「食」でサポートしている永田綾子さんにお話を伺いました。
<教えてくれた人>
永田綾子さん
SOLEIL support club代表。サッカーチームやスクールでの栄養指導や遺伝子検査で、多くのサッカー選手や家族を食でサポートしている。
朝ごはんの役割は?
朝、携帯電話の充電がわずかしか残っていない状態で出かけてしまい、昼までに充電が切れてしまった…という経験はありませんか?
朝ごはんを食べないのは、それと同じこと。昼までエネルギーがもたないのです。
朝ごはんの一番の役割は、エネルギー源です。朝ごはんを食べてエネルギーを補給しておかないとエネルギー不足になり、集中力が途切れてしまいます。そのため、午前中の授業が上の空になったり、体育の授業でもケガをしやすくなるのです。
さらに、朝ごはんを食べずに学校に行くと、空腹の状態で給食を食べることになりますよね。そうすると、血糖値が急に上がってしまいます。血糖値の急激な変動は眠りを誘うので、午後の授業中に眠たくなってしまうでしょう。
スポーツを頑張っている子どもたちは、とりわけ朝ごはんが不可欠です。朝ごはんを食べないと空腹時間が長くなり、身体の中では筋肉を分解してエネルギーを生みだそうとします。そのため、せっかくトレーニングを頑張って身体を鍛えていても、筋肉になりづらいのです。
なお、お子さんが朝ごはんを食べない時は、上記の携帯電話の話を用いて説明してあげるとわかりやすいかもしれません。
朝ごはんは脳や腸内環境に影響
朝ごはんは脳の働きに関係していると言われています。脳は、寝ている間もエネルギーを消費しているので、朝ごはんを食べることで脳のエネルギー源になるのです。とくに糖質源を摂ることで脳の回転や働きがよくなり、糖質を摂らないと、どんどん低下してしまうとも言われています。
また、朝ごはんは腸内環境にも影響します。朝ごはんを食べれば腸の運動が活発になり、スムーズな排便につながります。学校では排便ができない子もいるので、朝、排便をしておかないと我慢することになり、腸内環境の悪化につながってしまうのです。
また、朝ごはんを食べないと、1日に必要な栄養素の量そのものが減ってしまい、腸内環境に関係する食物繊維の量も不足してしまうので、便秘につながりやすいといえるでしょう。
子どもが朝ごはんを食べない理由、知っていますか?
子どもが朝ごはんを食べなかったり、ダラダラ食べていると、朝からイライラしてしまいますよね。じつは、子どもが朝ごはんを食べない理由は、寝る時間が大いに関係しています。
近頃は、共働きの家庭も多く、親御さんの帰宅が遅くなりがちです。また、子どもも習いごとなどで夜遅く帰ることもあるかもしれません。そうすると、夕飯の時間がずれこみ、どうしても寝る時間が遅くなってしまいます。
その結果、子どもは朝なかなか起きられず、起きてすぐに朝ごはんを出されても、胃腸も頭もぼんやりしているため、食べられないということが起こります。また、夕飯を遅く食べると、朝までに消化できていないこともあるので、お腹が空いていないのも要因です。
子どもは朝ごはんを「食べたくない」というよりは、「食べられない」と理解するといいでしょう。
メニューの工夫は必要なし!子どもが朝ごはんを食べる秘策
子どもが朝ごはんを食べてくれないと「朝ごはんをもっと工夫しなければ」など、メニューに関心が向きがちです。でも、上記でお伝えしたように、子どもが朝ごはんを食べないのは、寝る時間も大いに関係しているため、まずは生活習慣を少し変えてみることから始めてみてください。今より30分早く夕飯を食べる、寝る時間を早くすることを心がけてみましょう。
とはいえ、忙しい毎日の中で夕飯や寝る時間を30分早くすることは、なかなかむずかしいですよね。子どもを早く寝かせるための簡単な方法の一つは、夕飯が終わったら部屋の明かりを半分消すことです。部屋が煌々としていると、脳が夜になったことを認識しないので、例えば、ダイニングとリビングがつながっていれば、夕飯が済んだらダイニングの明かりを消すなど、部屋の光を落としていくといいでしょう。
そうすれば、脳が寝る時間が近づいていると感じるので、子どもは眠りにつきやすくなると思います。また、寝る前には絵本を読むなど、入眠儀式のようなものを習慣にして脳に意識づけさせると、子どもの寝付きがよくなることもあります。
朝は、脳や身体のスイッチを切り替えることが大事。陽の光を浴びることで、脳が朝だと認識するため、子どもが目覚めたら陽の光を1~2分程度浴びるように促しましょう。ベランダに出たり、窓際に行くだけでもいいので、習慣にすることが大切です。
朝、陽の光を浴びると、睡眠に影響を与える「セロトニン」の分泌を促すので、質のいい睡眠にもつながります。
また、朝起きたらコップ半分程度の水分を取るようにしましょう。胃腸の働きを促すので、食欲につながります。
生活習慣の他に、夕飯の量やおかずを見直してみるのもいいかもしれません。夕飯で食べたものが消化吸収できていないまま寝てしまうと、寝ている間も胃腸はフル回転し、胃腸が疲れている状態で目が覚めてしまいます。夕飯の量を少し減らしたり、揚げ物など油っこいものを控えれば、子どもは朝起きた時の胃もたれ感が減るので、朝ごはんを食べられるようになるかもしれません。
子どもの「ダラダラ食い」の解決法
朝から、子どもの「ダラダラ食い」にヤキモキしてしまうという方もいるのではないでしょうか。子どもが朝ごはんをダラダラ食べてしまうのは、お腹が空いていないことが原因だと考えられます。
前日の夕食の内容や、夜の過ごし方が影響しているので、今一度見直してみましょう。
朝ごはんのダラダラ食いの対処法は、食事時間を区切ることがイチバンです。
朝ごはんを食べさせなければ・・・という思いから、忙しい中でも、子どもが食べ終わるまで待ってしまいがちですよね。でも、食事時間が30分を超えたら、子どもは満腹になっているはず。「朝ごはんは20分」など、時間を決めるといいでしょう。
また、テーブルにお皿がたくさんあると、子どもはその見た目でお腹がいっぱいになり、食べるのが嫌になってしまうこともあります。食が細い子の場合は、なおさらです。ですので、朝ごはんはワンプレートにのせてあげるといいでしょう。そうすれば、この一皿だけと意識するので、早く食べられるようにもなります。
幼児の場合は、朝ごはんを食べている時に、テーブルの上に絵本や人形など気になるものがあると、手を伸ばしたり、意識がそれらに向いてしまいます。そのため、子どもの視界に入る場所には集中力が途切れる物を置かないことが大事。テレビも消すようにしましょう。
朝ごはんを食べている子どもは学力が高い!?
最近の子どもたちの朝ごはん事情も気になるところです。
令和4年5月に農林水産省が公表した「令和3年度 食育白書」によると、「毎日朝食を食べていない」「ときどき朝食を食べない」と回答した小学生の割合は5.1%、中学生では7.1%でした。ここ10年の調査結果を見ると大きな変動はないことから、子どもたちのほぼ9割近くは朝ごはんを食べていると言えるでしょう。とはいえ、中学生になると朝ごはんを食べない子どもの割合は増えているので、幼い頃から朝ごはんを食べる習慣をしっかりつけておくことが大切です。
また、同調査の結果を見ると、毎日朝ごはんを食べる子どものほうが、学力調査の平均正答率が高い傾向が示されています。中でも国語の平均正答率は、毎日朝ごはんを食べている子どものほうが、20.3%も上回っているのです。
さらに、スポーツ庁による「令和元年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を見ると、毎日朝ごはんを食べる子どものほうが、食べていない子に比べて、体力テストの合計点が高い結果も出ています。
朝ごはんを食べることは、子どもの学力や運動能力にもよい影響をもたらすと言えそうですね。
いかがでしたか?前編では、朝ごはんの役割、子どもが朝ごはんを食べない理由や、朝ごはんを食べるようになる秘策をお届けしました。後編では、朝ごはんで手軽に栄養がとれる方法や便利なレシピをご紹介します。
後編「手軽に栄養が摂れる!朝ごはん作りがラクになるコツとメニュー」はこちら