後編で語っていただくのは、前編よりもさらに先輩のスポーツキッズをもつママ。中学生や高校生になってもスポーツを続ける秘訣や、子どもが挫折し、「辞めたい」と言われた際の対処法、スポーツを通して成長したと感じることについてもお聞きしました。
参加していただいたスポーツキッズをもつ先輩ママ
(左から)
中川ゆう子さん
中学3年生の次男がサッカーのクラブチームに所属。小学1年の時からサッカーを始めている。
森口誠子さん
高校2年生の長男が高校の野球部に所属。小学4年生で野球を始める。
山本真由美さん
大学3年生の長女は陸上、大学2年生の長男はラグビーと野球、大学1年生の次男はラグビーを経験。高校2年生の三男はラグビーと野球を経験し、現在、高校のラグビー部に所属。
陸上経験が、今のスポーツにとってプラスに!
――お子さんたちは、小学生の時からずっとスポーツを続けられていると思うのですが、今のスポーツとは別のスポーツ経験もあるのでしょうか?
森口さん 幼稚園の頃から4年間、サッカーをしていました。小学2年の時に、運動会の徒競走で1位になれなくて、息子本人が陸上を習いたいと言ってきたんです。野球は小学4年から始めたので、小学生の間は、野球と陸上を両立していましたね。
陸上は短距離で、フォームの練習も多かったようですが、野球のベースランニングにつながっていたり、本人も中学生になった頃、自分の走るフォームを見て、陸上をやっていたことの良さを実感できたみたいです。
中川さん 息子はクラブチームでサッカーをしているのですが、学校の部活との両方はメンバー登録ができないんですね。それで、中学の部活では陸上部に所属しています。きれいなフォームで走れると無駄な体力を使わないので、サッカーに通じるみたいです。
山本さん ラグビーをやっていれば、どんなやんちゃになっても大丈夫かなと思って、下3人の男の子を順番にスクールに通わせたんです(笑)。金銭的な負担も少なかったですしね。
次男はラグビー一筋でしたけど、長男は中学から、三男は小学4年の時にそれぞれ野球に変更し、高校で再びラグビーに戻りました。長男と次男は、小学生の頃、足が速くなりたいということで、陸上のクラブチームにも入っていました。
挫折して辞めたくなっても、努力を続ければ必ずスランプから抜けられる
――お子さんたちはスポーツを続けていく中で、辞めたくなったり、挫折した経験はあるのでしょうか?
山本さん 長男は中学から野球を始め、高校でも野球部に入りました。監督はすごく期待してくれていたんですけど、それが重たかったみたいで…。朝練もあるし、練習時間も長く、さらに1年生なので先輩よりも早く行かないといけない。そんな環境の中で、食事もできなくなってしまい、ある時、食べることができなかったおにぎりが、タンスの中から見つかったこともありました。反抗期だったこともあり、なかなか話し合いができなかったり、相談もしてもらえなかったですね。
結局、高校1年の夏で野球部を辞めることにしたんです。そうしたら、すごくスッキリしたみたいで、その後、勉強とバイトを頑張って、留学もしました。今でもあの時の選択がよかったのかはわからないですけど、あの経験があったから、いい子に育っていると思いたいですね。
森口さん 野球を辞めたいと言ったことは1度もないのですが、スランプは数えきれないほどあります。息子がスランプの時は、家族全員心が重たくて、心配で、どうしてあげることもできないんですよね。
でも、スランプを何度も経験してわかったのは「絶対に焦らずに、前を向いて努力し続けると、ある日突然、ふっと抜ける時がある」ということです。今は、それがわかっているので、息子がスランプになっても、かまえていられるようになりました。息子も葛藤しながら戦っていると思うので、余計なことを言わずに、本人が頑張れる環境をつくって陰ながらサポートし、家族全員で見守っています。
中川さん クラブチームに入った中学1年の時、次男がサッカーを辞めたいと言ったことがありました。そのチームは、小学生の頃からいるメンバーが中心で、小学生時代には全国の代表にもなっているんです。
次男は中学から入ったので、自分がいたら足を引っ張ってしまうから辞めると言い出して…。その時に「お前がいないと俺らのチームじゃなくなる。新しいチームで全国を目指そうと言ったのに、今、抜けるのか」とチームメイトから説得されたことで、思い留まることができました。
私は、見守ることに徹していましたし、次男の意思を尊重したかったので「辞めてもいいよ」と口にはしていたんですけど、続けると決断してくれた時は嬉しかったですね。
スポーツを通しての成長は、家庭だけではできないこと
――スポーツを通して、お子さんが成長したと感じることはありますか?
中川さん 精神的な面ですね。サッカーはチームプレーなので、相手の気持ちをくんだり、試合中にチームメイトにかける言葉を選んだり。スランプになっても、親に八つ当たりするでもなく、自分の中で消化しようと考えるようになり、メンタルができあがってきているように感じています。
思春期の時期は、チームメイトに面と向かって自分の意見を言ったり、また相手の意見を聞いたりするのも抵抗があると思うんです。でも、サッカーはチームプレーなので、それをしないと勝てないんですよね。そんな姿をみても、サッカーを通して成長しているなと思いますね。
森口さん 子どものスポーツは、家族のサポートなしでは続けることが難しいですよね。それを高校生くらいになると、本人もわかってくるんです。そうすると、感謝の気持ちが生まれて、例えば、お弁当を渡した時や試合会場に車で送迎した時に「ありがとう」と言ってくれて。「ありがとう」の言葉が本当に増えたと思いますし、それを聞くと、私の疲れも一気に吹き飛ぶんですよね(笑)。スポーツを続けている中で、心を込めて「ありがとう」が言えるように成長したんだと思います。
野球は技術も大事ですが、基本は挨拶。野球を通して挨拶が身についてくると相手への敬意の気持ちが加わるようになり、それは礼儀にもつながってくるんですよね。敬意を持って人と接するという、生きていく上で大事なことも身についていると思います。
山本さん 素晴らしい仲間や先輩、そしていい指導者と巡り合うことができ、スポーツを通しての成長は、家庭だけではできないことだと思います。
ラグビーは15人しか試合に出られないんですけど、高校も大学も100人以上メンバーがいるんです。たとえずっとレギュラーになれなかったとしても、そのチームでプレーしていること、サポートすることは勉強になりますし、仲間と一緒に喜び、時に悲しんだりすることが、きっと社会に出ていく中で役に立っていくんだろうと思います。
子どもがスポーツを続けるには、親も無理なく関われる環境が大事
――最後に、スポーツキッズをもつママに向けてアドバイスをお願いします。
中川さん 子どもがスポーツを続けていく中で「好き」という気持ちが一番大切だと思います。お子さんが楽しい、好きだと思えるスポーツを最大限させてあげて、親御さんも一緒に楽しくやっていけば、子も親もきっと成長できると思います。
森口さん 私はアスリートフードマイスターの資格を持っていることもあり、時々SNSに「子どもにどんなスポーツをさせたらいいですか」という質問がくるんです。でも、その質問自体にちょっと違和感があって「子どもにどんなスポーツをさせるか、親が選ぶ」のではなく「子どもがどんなスポーツを選ぶか」が大事だと思うんです。
そのためにも、いろいろなスポーツ体験に連れて行ってあげたり、子どもがこのスポーツをやりたいと選べるような環境をつくってあげることが必要だと思いますね。
山本さん 子どもがスポーツを続けていくには、親も続けられる環境が大事だと思います。私の子どもたちが続けたラグビーは、親も無理なく関われる環境でしたから。
スポーツをやっていると、チームを変えたい、辞めたいということも出てくると思います。その時には、親が上から押さえつけるのではなくて、とにかく話し合って、お互いが納得する道を決めることが大事です。できればスポーツを長く続けてほしいと思いますね。
二度に渡ってお届けした、スポーツキッズをもつ先輩ママによるリアルトーク。子どもがスポーツを続ける中で学べることや、どのように成長するのか、先輩ママたちの声から、伝わったのではないでしょうか。スポーツだからこそ育める力が、子どもはもちろん親にとってもたくさんあるといえそうですね。