熱中症が起こりやすい時期、熱中症のサインとは?
夏が来る前に知っておこう

汗をかいている子ども

陽ざしが強くなってくると、心配になるのが熱中症です。子どもを熱中症から守るために、知っておきたい熱中症の基礎知識について、東京工科大学 医療保健学部看護学科教授の白石裕子先生にお聞きしました。

<教えてくれた人>
白石裕子先生

東京工科大学 医療保健学部看護学科教授 白石裕子先生

東京工科大学 医療保健学部看護学科教授


子どもは熱中症にかかりやすい!時期やサインを知っておこう

大人よりも、子どもは熱中症にかかりやすいというのを知っていますか?
子どもは、大人に比べて体重あたりの体表面積が大きいため、外気温の影響を受けやすく、暑い環境では大人以上に体温が上がりやすいのです。
また、大人よりも身長が低いため地面が近く、地面からの照り返しの影響も強く受けてしまいます。

子どもは汗をかく機能が未発達なのも、熱中症になりやすい要因です。身体は、体温が上がると汗によって熱を放散するのですが、子どもは体温調節が上手くできず熱がこもりやすいのです。
一方、代謝は活発なので、汗やおしっことして出る水分は多く、脱水にはなりやすいと言えるでしょう。

他に、子どもは不調を上手く伝えることができなかったり、遊びに夢中になり喉の渇きを忘れて水分を取らないことなども要因です。
とくに赤ちゃんは、より体表面積が大きく、汗をかく機能が未熟なので、熱中症のリスクが高いと言えるでしょう。


熱中症が多い時期・タイミング

子どもの熱中症

人間の身体は、筋肉などで熱を作り出し、体温が上がると汗によって熱を放散し、一定の体温を保つ仕組みになっています。暑さによって汗がどんどん出ていくと、体内の水分が失われ、体温調節が上手く働かなくなり、身体に熱が溜まって体温が上昇してしまいます。このような状態が、熱中症です。

熱中症は、夏に起こりやすいと思いがちですが、春先、急に暑くなる日は、身体が暑さになれていないため注意が必要です。また、梅雨時、急に暑くなった日や、梅雨明けの暑い日は、湿気も高いので、汗が発散しづらく熱中症のリスクが高まりやすいと言えるでしょう。近年は、以前よりも早くから気温が高くなる傾向にあるので、ゴールデンウィークあたりからは、熱中症を予防するように心がけることです。

熱中症が発生しやすいかどうかは、暑さ指数も目安にもなります。
暑さ指数は、気温・温度・湿度・ふく射熱を取り入れた熱中症の危険度を判断する数値です。

熱中症予防指針

日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)より作成
https://seikishou.jp/cms/wp-content/uploads/20220523-v4.pdf

暑さ指数が28を超えると、熱中症リスクが高まります。全国各地の暑さ指数は、環境省の熱中症予防情報サイトで、4月以降発表される予定ですので、気になる日は確認してみるといいでしょう。暑さ指数が33以上と予測されると、熱中症の危険性がより高くなるため、都道府県ごとに「熱中症警戒アラート」も発表されます。また、2024年4月24日からは、暑さ指数が33以上と予測されると、前日に「熱中症特別警戒アラート」も発表されます。

ただし、地域の中でも気温差があるため、数値だけにとらわれすぎず、自分の感覚も大事にするといいでしょう。


子どもの熱中症予防のためにできること

食事をする子ども

子どもの熱中症を防ぐためには、まずは体調管理が基本です。日頃から、生活リズムを崩さないように、早寝・早起きをし、バランスのいい食事をとるようにしましょう。

熱中症になってしまったら、すぐに水分を補給することが大事になります。飲み物に好き嫌いがあると、その場にあるドリンクを飲むことができず、水分補給ができなくなってしまう場合も。日頃から、決まったものではなく、いろいろな味に慣れさせておくようにしましょう。

「熱中症予防のために暑さに慣れさせる練習が必要?」と思う方もいるかもしれません。諸説ありますが、人間の身体は、環境や気温に適応できる機能を持っているので、その必要はないでしょう。寒い地方の人が、南の暖かい地方に移住した場合、始めは慣れなくても、次第に気温に順応していくのと同じで、少し時間がかかっても子どもは暑さに慣れていくものです。


子どもの熱中症のサイン

先にも述べたように、子どもは身体の不調を正確に伝えることができなかったり、遊びに夢中になって喉の渇きを我慢してしまうので、子どもの熱中症に気づくのが遅れてしまう場合があります。
子どもの熱中症を見逃さないために、暑い環境にいる時は、顔が真っ赤になっていないか、大量に汗をかいていないか、体温が上がりすぎていないかを、時々、確認するようにしましょう。

また、体内の水分が不足してしまうと汗をかけなくなってしまうため、体温が上がっているのに汗が出ていない場合は、熱中症になっている可能性も。おしっこが出ているかどうかも、重要なポイントです。どのぐらいの量だったか、いつおしっこが出たかを気にかけておくといいでしょう。赤ちゃんの場合は、おむつを替える時に、いつもよりおしっこが少なくないかを確認しておくことが大事です。


熱中症の症状、受診の目安は?

熱中症の初期症状は、大量に汗をかく、めまい、立ちくらみ、足の筋肉がつるなどが起こります。症状が進むと、頭痛、おう吐、吐き気、ぐったりしている状態になります。
子どもの場合、「頭がガンガンする・ズキズキする」と頭痛を訴えたり、「気持ちが悪い」と吐き気を伝えてくることがあるでしょう。また、暑い環境下にいて、普段より元気がない場合、熱中症を起こしているケースもあります。

熱中症は、重症化すると、高体温(身体に触ると熱いという感触がある)、呼びかけや刺激への反応がおかしい、体がガクガクして引つけがある、まっすぐ歩けないなどが起こります。

子どもの状態がいつもと違い、眉間にしわが寄って苦しそうにしていたり、目がなかなか合わない、意識がぼーっとしている、話しかけても反応がない場合は、すぐに病院で受診するようにしましょう。


車内での熱中症に気をつけて!

車内での熱中症対策

熱中症は、重症化すると命に関わる場合もあります。
中でも危険なのが、車の中で起きる熱中症です。車の中はすぐに温度が上昇するので、ほんの少しの時間が命取りになるケースがあるのです。
どんな状況であれ、少しの時間であっても絶対に車内に子どもを残すことはしないように心がけましょう。

また、炎天下でスポーツ活動を続けると、熱中症が重症化してしまうことがあります。
こまめに水分補給や休憩をとり、上記の暑さ指数などを参考にして、活動指針を明確にしておくことも大事です。
下記は、日本スポーツ協会が掲げている「スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条」です。

①暑いとき、無理な運動は、事故のもと

気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなります。また、運動強度が高いほど熱中症の危険性も高くなります。環境条件に応じて運動強度を調節しましょう。

②急な暑さに、要注意

急に暑くなったら、軽い運動にとどめ、暑さに慣れるまでの数日間は軽い短時間の運動から徐々に運動強度や運動量を増やしていくようにしましょう。

③失われる水と塩分を取り戻そう

スポーツドリンクなどを利用して、0.1~0.2%程度の塩分も補給するとよいでしょう。

④薄着スタイルでさわやかに

暑いときには軽装にし、素材も吸湿性や通気性のよいものにし、直射日光がある場合には帽子を着用しましょう。

⑤体調不良は、事故のもと

体調の悪いときには無理に運動をしないことです。

※日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条」より引用

スポーツ中の熱中症を防ぐために、猛暑になる前に確認しておくといいでしょう。


いかがでしたか?前編では、子どもが熱中症にかかりやすい理由や熱中症が起こりやすい時期、熱中症の症状、受診の目安などをお届けしました。後編では、日常生活の中で子どもの熱中症を防ぐ方法や熱中症になった時の対処法ついてご紹介します。

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