子どもが花粉症になってしまうと「また、この季節がやってきた…」と思う方もいますよね。そこで、知っておきたい鼻水や目のかゆみ、皮膚トラブルの対処法と、今、主流になりつつある花粉症治療「舌下免疫療法」について、ハピコワクリニック五反田院長の岸本久美子先生に伺いました。
<教えてくれた人>
岸本久美子先生
医療法人社団ハピコワ会 理事長、ハピコワクリニック五反田 院長、田町三田駅前内科・呼吸器内科・アレルギー科 統括院長
花粉が飛散し始める2月上旬頃から対策を
「毎年、子どもが花粉症でつらそう…」という親御さんもいるのではないでしょうか。
スギやヒノキの花粉症の場合は、花粉が飛散し始める2月上旬頃から薬を飲んでおくと、トータルで薬は少なく済み、子ども自身もラクに過ごせるものです。また、風が強く、花粉が多く飛散している時に外出する際は、遊ぶ時以外、マスクやゴーグルを着けるなど、粘膜に花粉がつかないよう心がけることが大事です。アレルギーが強い家系の場合は、花粉が多い予報の日は、室内で遊ぶなどの工夫もできます。
乳幼児の場合、花粉症か風邪なのか、とりわけわかりづらいものです。花粉の飛散時期、熱が出ていないのに鼻水がずっと出ているという症状が続くようであれば、一度、小児科かアレルギー科を受診することをおすすめします。風邪の薬でよくなったのか、またはアレルギーの薬でよくなったかで、花粉症かどうかがわかるでしょう。
なお、花粉症を発症しているかどうかが採血ではっきりわかるのは2歳以降になります。子どもは頻繁に採血することができず、アレルギー採血は費用も高額なため、医師と相談して、適切な時期に行うといいでしょう。アレルギー採血の他に、プリックテストと呼ばれる皮膚のテストもあります。
花粉症の症状と対策①鼻水
鼻水には、電動鼻吸い器を活用しよう
花粉症の症状の一つ、鼻水。子どもは、上手く鼻水をかめないことが多いものです。ですので、未就学の子どもには、電動鼻吸い器を活用するのがおすすめです。鼻吸い器に慣れると子ども自身も「鼻吸い器で吸ってもらったらラクになる」というのを覚えるので、早めに購入しておくと便利でしょう。
子どもは、どうしても両方の鼻でかもうとしてしまうので、片方の鼻を指で押さえて、片方ずつかむ練習をしておくといいでしょう。鼻をかむという感覚がわからない子どもには「鼻水が出ていない時に、鼻の前にティッシュを垂らして鼻息で動かす」というのをゲーム感覚で練習させておくと、鼻水が出た時に、上手くかめるようになることも。
子どもは遊ぶのに夢中で、鼻をかむことが面倒くさくなってしまうこともあるので、ティッシュをつねに持たせて、「鼻が出たらかむように」と教えておくことも大事です。
花粉症の症状と対策②目のかゆみ
目薬が点眼できない時は塗り薬を
子どもの花粉症の症状で多いのが、目のかゆみです。目のかゆみがあると、医療機関では、目薬を処方されることもありますよね。でも、子どもは目薬を怖がって、上手く点眼できないこともあるのではないでしょうか。
その場合は、目のまわりに塗る塗り薬があるので、医師に相談するといいでしょう。塗り薬を嫌がってしまう場合は、無理に塗ろうとすると暴れしてしまので、寝ている間に塗ってあげるといいでしょう。
また、目と鼻は、鼻涙管(びるいかん)でつながっているため、鼻の状態が悪いと、目の状態が悪化してしまうことがあります。目薬を受け付けない子どもには、点鼻薬をしてあげると、目のかゆみなどが緩和することもあるでしょう。
言葉が通じる年齢であれば、「なぜ、目薬が必要なのか」を説明してあげることも大事です。これは、薬を飲ませる時なども同様です。
花粉症の症状と対策③皮膚トラブル
市販のワセリンは、定期的に買い替えること
子どもは大人よりも皮膚が薄いため、花粉症になってしまうと、皮膚がかゆくなったり、赤みがでるなど、皮膚トラブルを発症してしまうことがあります。
皮膚に症状が出ると、医療機関ではワセリンを処方されることもあるでしょう。ワセリンは、不純物が少なく、皮膚トラブルが出にくいだけでなく、皮膚からの水分蒸発を防いで、ラップのような役割も持っているからです。
市販のワセリンでも問題はないので、皮膚のかゆみなどがある場合は、ワセリンを塗ってあげるといいでしょう。ただし、1年前のものなどを使い続けていると、ワセリンが酸化し、肌にはよくないため、定期的に買い替えることが大事です。なお、市販のものと処方されるものでは、ワセリンの純度が違います。市販のものであまり改善が期待できでない場合は、医師に相談するようにしましょう。
花粉症の薬を避けたいときの対処法
花粉症の薬は、適切に飲めば少ない薬で症状をコントロールできるので、薬を飲まない場合のデメリットのほうが大きいのではないでしょうか。どうしても子どもに薬を使いたくないというのであれば、一般的には、ヨーグルトを食べると、免疫バランスが整っていき、症状がラクになるとも言われています。ただ、加糖タイプのヨーグルトを食べ過ぎてしまうと、太ってしまうこともあるので、注意が必要でしょう。
また、小学生以上なら、鼻うがいをするのもいいでしょう。
アレルギー反応をおさえる「舌下免疫療法」とは?
花粉症の治療には、アレルギー反応そのものをおさえる「アレルゲン免疫療法」があります。アレルゲン免疫療法は、アレルゲン体内に取り入れて体を慣らしていくことで、アレルギー反応を起こさないようにしていくというもの。中でも今、主流になってきているのが「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」です。舌下免疫療法は、スギ花粉とダニが原因のアレルギーに対応し、5歳になったら行うことが可能です。保険も適応されます。
治療方法は、1日に1回、タブレット状の薬を舌下に入れ、1分間程キープしてから飲み込みます。毎日服用し、1カ月に1度の通院が必要になります。3~5年続けることで、スギ花粉のアレルギーに傾いている免疫のバランスが正常化し、約8割の方に効果が出ると言われています。
近年は、舌下免疫療法を行っている子どもも増えているように感じます。「中学受験シーズン前に終わらせたい」「反抗期になると一緒に通院してくれないかも…」「花粉症で苦しんてきたから、子どもには経験させたくない」などの理由から、小学生のうちにはじめるケースも多いと言えるでしょう。
舌下免疫療法を始めるのは5月末~6月、花粉症の症状が落ち着いてから行うのがいいのではないでしょうか。ゴールデンウイーク頃までは、いろいろな花粉が飛散し、黄砂も飛んでいることがあるからです。
治療を終えた方からは「毎年、苦しまなくてよくなり、本当にやってよかった」という声をよく聞きます。治療期間は長期になりますが、花粉の時期に毎年薬を飲み続けることを考えると、子どもの今後の人生において負担は少ないとも言えるのではないでしょうか。
なお、ダニアレルギーの場合は、舌下免疫療法を行うことで、喘息などアレルギーが原因で起きる病気の予防にもなります。
アレルゲン免疫療法は、舌下免疫療法の他に、皮下免疫療法もあります。皮下免疫療法は、月に1回通院して注射を行い(始めの内は週1~2回)、3~5年続ける必要があります。長期的に行わないといけない点では舌下免疫療法と同様ですが、注射が嫌い・怖い子どもにとってはストレスになってしまう場合もあるでしょう。また、わずかではありますが、強いアレルギーを持っていると副反応が出てしまうこともあります。
子どもが花粉症になっても、ナーバスにならないことが大事
子どもが花粉症になってしまうと「かわいそう」「認めたくない」と思ってしまう親御さんもいるかもしれません。でも、今は、4人に1人はスギ花粉のアレルギーを持っていたり、他のアレルギー疾患持っている子どもも多いものです。ですので「花粉アレルギーを持っている子どもは結構多い!」と捉えて、あまりナーバスにならずに「どうすれば、子どもが元気に過ごせるか」という視点で考えてもらえたらと思います。また、アレルギーは、長く付き合う必要があるので、子ども自身の将来のことはもちろん、親御さんも無理なく続けられる方法を選ぶことが大事です。