噛んで食べない、好き嫌い・・・
「子どもの食事の悩み」解決法

噛んで食べない、好き嫌い・・・ 「子どもの食事の悩み」解決法

「噛んで食べてくれない」「好き嫌いが多くて困っている」など、子どもの食事についての悩みは尽きないものです。また、大事な日の前日や風邪の時の食事についても知っておきたいところ。そこで、日本スポーツ協会・日本栄養士会公認スポーツ栄養士で、管理栄養士でもある河村美樹さんに「子どもの食事の悩み」に関する解決策を教えていただきました。

<教えてくれた人>
河村美樹さん
管理栄養士 河村美樹さん

日本スポーツ協会・日本栄養士会公認スポーツ栄養士、管理栄養士。2012年から2019年まで名古屋グランパス管理栄養士として、選手への個人アドバイス、献立調整などを行った。愛知医科大学の非常勤講師も務める。現在はHPCJCスポーツ栄養士として自転車競技の日本代表選手の強化に携わっている。


子どもがよく噛んで食べるようになる秘策

子どもの食事 噛んで食べる秘訣

「よく噛んで食べて!」食事中、子どもにそんな声をかけることはないでしょうか。噛んで食べることが大事な理由は、いくつかあります。よく噛むことで、食べ物が飲みこみやすくなるのはもちろん、唾液の分泌がよくなります。唾液には消化酵素が含まれているので消化吸収がよくなり、虫歯予防や口の中の衛生状態をよくすることにも有効です。また、よく噛むことで「脳が活性化される」「顎の発達が促される」「味覚が発達する」などたくさんの利点があります。噛むことは結果的にゆっくり食べることにつながるので、食べ過ぎを防ぐことにもつながるのです。

あまり噛んで食べない子は、食べ物が消化しきれないまま胃腸に入ってしまうので腹痛を起こしやすかったり、食べ過ぎている場合もあるかもしれません。

しっかり噛んで食べさせる習慣をつけるには、メニューの中に、よく噛まなければいけない料理を1品入れておくのがおすすめです。ごぼうやれんこんを使ったサラダやきんぴら、根菜たっぷりのけんちん汁、きのこのバターソテーなど、簡単にできるものをプラスするといいでしょう。


好き嫌いの理由と対処法

子どもの食事の悩みで多いのが「好き嫌い」ではないでしょうか。味には「甘み」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」があり、子どもはそもそも「苦味」「酸味」が苦手です。「甘み」は主に糖質源なのでエネルギー補給になり、「塩味」はミネラル、「うま味」は身体をつくる材料になるアミノ酸がメインになります。一方、「酸味」「苦味」は毒を持っているものもあるため、子どもは本能的に食べては駄目だと思ってしまうのです。「酸味」「苦味」は、経験することで食べられるようになっていきます。ですので、苦手だからといって食事から完全に削除するのではなく、少しずつ食べられるように加えていくことが大事です。

ピーマンやゴーヤが苦手な子どもは多いですよね。上記でも説明したように子どもにとって苦手なのは当たり前、最初から「苦味」「酸味」があるものを食べてくれたら、とてもラッキーだと思いましょう。子どもが苦手なものは、マヨネーズ味やカレー味、照り焼きなど好きな味つけにしたり、刻む、すりおろす、揚げるなど調理法を変えることがポイントです。

また、子どもは、一緒に食べている人がおいしそうに食べているなど、食事の環境で好き嫌いを克服できる場合があるので、家族みんなで楽しい食卓を囲むように心がけましょう。自分が育てた野菜や調理過程を知ることで、食べられるようになることもあります。幼い子どもの場合は、使う食器や座る場所などにより食べないこともあるので、気分よく食べられるお気に入りをみつけておくといいでしょう。


気になる少食や食べムラ。子どもの成長に影響する?

子どもの食事の悩み 小食 食べムラ

好きなメニューの時にはよく食べるのに、嫌いなおかずの時はごはんしか食べないなど、食事量のムラを気にしている方もいるようです。でも、食べムラが毎日続くわけではなく、一時的であったり、体重の増減や体調の変化がないのであれば気にする必要はないと言えるでしょう。

食べムラの理由が、好き嫌いが原因だとわかっているのであれば、好きな物に嫌いな物を組み合わせるなど、食事メニューを調整してはいかがでしょうか。好きな料理の日と嫌いな料理の日を分けず、例えば好きなカレーライスに苦手なピーマンを刻んで入れる、好きなハンバーグに苦手な椎茸を入れて照り焼き味にする、好きなものと嫌いなものを三色丼のようにするのもよいかもしれません。1日1日で考えるのではなく、1週間で見て平均的な量を食べているようであれば大丈夫です。

身長が低い、肥満ぎみ…食事で改善できる?

「子どもの身長が低いのが気になる」「身長を伸ばすために何を食べればいいの?」と悩んでいる方もいるかもしれませんが、身長の伸びのピークは、かなり個人差があるので、同学年の子と比べないことが大事。学校の測定で低身長を判定されたのでなければ、気にする必要はないのです。身長は遺伝や睡眠などさまざまことが影響しますが、食事で大事なのは、とにかくバランスよく食べることです。

子ども用のプロテインが気になっている方もいるのではないでしょうか。プロテインとはたんぱく質のことです。たんぱく質は、ごはん、魚や肉、大豆製品などほとんどの食品に含まれるので、食事をバランスよく摂れていれば、たんぱく質が不足することはほぼないと言えるでしょう。また、食事の前にプロテインを飲んだ場合、その後の食事が食べられないことがあります。たんぱく質は胃で消化するためお腹にたまりやすく、特に子どもの場合はすぐお腹がいっぱいになってしまいます。プロテインに頼らず、バランスのよい食事を優先するように心がけましょう。

子どもの肥満についても、学校の測定で「肥満」と判定されなければ神経質にならなくてもいいでしょう。ただ、お菓子を食べ過ぎていないか、出している料理が油っこいものが多くないか、夜遅い食事になっていないかなど、一度食生活を見直す必要があります。
なお、これまで栄養指導をしてきた経験から、中学1年生くらいまで少しぽっちゃりしている子のほうが、その後、身長がぐっと伸びているように感じます。
また、親御さんの中には「食べ過ぎてしまうから」という理由で、主食の量を減らしているケースがあります。けれど、子どもを見ると肥満どころか痩せている場合も。主食はしっかり摂ることが大事です。


大事な試験や試合などの前日・当日の食事ポイント

サッカーの試合

大事な試験や試合、発表会前の食事。子どもに力を発揮してもらいたいという思いから、普段とは違うメニューを出していませんか?

大事なイベント前日の夕食は、日頃から食べ慣れているものが一番です。前日から緊張している子は多く、緊張していると消化不良になりやすいからです。好物だからといって、揚げ物や刺身などの生ものをたくさん摂ってしまうと、お腹を壊してしまうこともあります。また、お肉をたくさん食べると胃に溜まりやすく、眠れなくなってしまう場合も。ですので、大事なイベント前日の食事は普段から食べているメニューの中でも、加熱したできるだけ脂質が少ないもの、かつエネルギー補給ができるごはんなどの主食を多めに用意するのがベターです。おかずにじゃがいもを入れたり、パスタサラダにしたりすれば、さらにエネルギー補給ができます。日々の食事の中で、上記のことを踏まえ「これを食べた時が一番調子がいい!」というメニューをみつけておくといいでしょう。

試験や試合が2日続く場合は、1日目が終わったからといって、焼肉などを食べに行ったり、肉類を摂ったりしないように。できるだけ消化のよい食事を摂ることです。スポーツの大会によっては1日に何試合も行うことがあり、お昼にお弁当を食べる時間がない場合もあります。そうした時は、夕食でごはん、パン、麺などを中心に摂り、エネルギーを補給することが大事です。

当日の朝はエネルギー補給をするためにも、ごはん、パン、麺など主食類を中心に摂ることが大事です。普段、朝食を食べていないのに、大事なイベント前にだけ食べようとしても身体には受け入れ難いので、日頃から朝食を食べる習慣をつけておきましょう。

お腹を壊した時は何を食べればいい?

これから風邪が流行る季節。とくにお腹を壊している時に、何を食べさせたらいいのか迷う方もいるのではないでしょうか。医療機関にかかっている場合は、かかりつけ医にまずは相談しましょう。もしまだかかっていない場合は、以下のことを認識しておくといいかもしれません。たんぱく質は胃で消化されるため、胃の消化不良の場合は、たんぱく質を豊富に含むヨーグルトなどは避けたほうがいいでしょう。おかゆなど糖質源を中心に摂ることです。

腸の調子が悪い時は、おかゆ、ゼリー、缶詰の果物などを摂るといいでしょう。症状にもよりますが、ヨーグルトのような乳酸菌を含み脂質が少ない乳製品を摂ってもかまいません。果物の缶詰は、基本的に皮や砂じょう(みかんなら小袋の部分)が除かれているため、生より食物繊維が少ないものが多いです。特にみかんのような、生だと皮や砂じょうが含まれる果物の場合は、みかん缶の方が消化しやすいと言えるでしょう。また、辛い物や刺激物は避けることです。どちらが原因なのかわからない、両方症状がある場合は、自己判断せずに医療機関へ行き、相談するようにしましょう。

なお、子どもがどうしても薬を飲まないからといって好きな食べ物と一緒に与えてしまうと、薬と食べ合わせが悪い場合があります。食べ物と一緒に摂るのは避け、市販の服薬ゼリーを活用するか、かかりつけ医または薬剤師にどうしたらよいか相談しましょう。


いかがでしたか?今回は、子どもの食事の悩みに関する解決策をお伝えしました。これらの方法を参考に、焦らずに子どもの食事と向き合っていきましょう。

取材・文:サカママ編集部 取材協力:河村美樹(日本スポーツ協会・日本栄養士会公認スポーツ栄養士、管理栄養士)

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