成長期の子どもにとって欠かせないカルシウム。毎日の食事でしっかり摂れていますか? 一日の必要摂取量や効率的な摂り方、さらに間食の重要性について解説していきます。
子どもにとって必要な一日のエネルギー量とは?
子どものすこやかな成長のために食事が大事なことはまちがいありません。栄養バランスを考えることはもちろんですが、まずは子どもの身体を理解することが大事です。「大人はあまり運動をしていないときは食事を減らしたりするものですが、子どもは動いていないときでも、しっかり食べてエネルギーを補うことが大切です」と指摘するのは日本スポーツ協会・日本栄養士会公認スポーツ栄養士で、管理栄養士でもある河村美樹さん。では、子どもはどのくらいのエネルギー量が必要なのでしょうか。
▼推定エネルギー必要量(kcal/日)
※この値は平均的な身長・体重を基にしたものであり、体格によって必要量は異なります
※身体活動レベル1/Ⅰ(低い):生活の大部分が座位で静的な活動が中心の場合、Ⅱ(ふつう):座位中心の仕事だが職場内での移動や立位での作業接客等、あるいは通勤、買い物、家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合、Ⅲ(高い):移動や立位の多い仕事への従事者、あるいはスポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている場合(*1)
上の表を参考に河村さんは言います。
「例えば男性を見てみると、幼児期は大人の半分程度、小学生になると徐々に増え、中学年では大人の女性と同じくらい、高学年になると大人の男性と変わらないほどのカロリーが必要になってきます。子どもの食事は大人が食べている量を少なくすればいいと思っていると、エネルギーが足りていない場合も。子どもの健やかな成長のために、まずは必要なエネルギーをしっかり摂るように心がけましょう」
子どもが一日に必要なカルシウム量とは?
子どもが一日にどれくらいのエネルギー量が必要なのかがわかりました。その際、成長する過程で意識して摂取したい、とある栄養素があるそうです。
「丈夫な身体を作る食事の基本は、バランス良く食べること。とりわけ、身長が伸びるピークを迎える年代(男子は14歳前後、女子は11歳前後)までに意識してほしいのは“カルシウム”です。カルシウムの働きは、骨や歯を作るだけでなく、筋肉の収縮や細胞分裂など多岐にわたります。そのため、背が伸びたり、身体が大きくなる成長期には不可欠なのです。
ここで勘違いしてはいけないのが、“カルシウムをたくさん摂ることで背が伸びる”というわけではないということ。この時期に不足してしまうと、発育・発達に影響が出てしまう可能性があると捉えておきましょう」
では、子どもは一日にどれくらいのカルシウムを摂ればいいのでしょうか?
(*1)
「上記のカルシウム摂取推奨量を見ると、一番多いのが12~14歳で男性は一日に1000mg、女性は800mgと、大人よりも多く摂る必要があることがわかります。女子の場合は男子に比べて成長が早いので、8~9歳でも大人の女性以上のカルシウム摂取が推奨されています。
カルシウムは日本人全体で見ても不足しがちな栄養素なので、積極的に摂るように心がけましょう」
カルシウムを効率良く摂取できる食材
カルシウムといえば、牛乳をイメージする方もいるのではないでしょうか。
※数値は小数点以下切り上げ(*2)
上記は、カルシウムが多い食品をまとめたものです。
表からもわかるように、カルシウムは乳製品に多く含まれています。カルシウムを効率良く摂取するために意識できることについて、河村さんは次のように解説します。
「カルシウムは身体に吸収しづらい栄養素といわれているものの、乳製品に含まれるカルシウムは、他の食品に比べて吸収率が高いのが特長です。特に牛乳には、1杯(210g)で231mgものカルシウムが含まれ、乳糖などカルシウムの吸収を助ける栄養素も入っています。カルシウムはミネラルの一つであるリンと2対1の割合で摂ると吸収がいいとされ、牛乳にはカルシウムとリンがその割合で入っているのです。
一方、“牛乳は脂肪を摂りすぎてしまうのでは?”と思う方もいるかもしれません。たしかに牛乳には脂肪が多く含まれているものもあるので、気になるようであれば低脂肪乳を選ぶといいでしょう。カルシウムの量は牛乳と低脂肪乳で差はありません。
野菜では、ほうれん草や小松菜、ブロッコリー、春菊など色の濃い緑色の野菜にカルシウムが多く含まれています。なかでもおすすすめは、小松菜です。比較的安価で、通年手に入りやすく、炒めたり和えたりスムージーにしたりと、さまざまな料理に使えるからです。牛乳が体質的に合わない場合は、小松菜などの野菜類や大豆製品、魚類を積極的に摂るといいでしょう」
骨を強くするために必要な他の栄養素は?
子どもの成長のために、カルシウムだけを意識していればいいわけではありません。特に、スポーツを頑張っている子どもは、どんな栄養素を摂るべきなのでしょうか。
「スポーツに打ち込んでいる子どもは、運動をしていない子どもよりも骨折などのケガが起こる機会が多いといえます。カルシウム不足や栄養が偏っていると、骨折などのケガをした際の治りが遅くなる可能性があるので、日頃からバランスの良い食事に加え、カルシウムを不足しないように摂ることが大切です。
また、骨を強くするためには、カルシウムだけでなく、ビタミンCやビタミンDも重要です。ビタミンCは骨の成分コラーゲンを生成するのに必要で、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあるからです。
ビタミンCは加熱に弱いので、グレープフルーツやキウイ、イチゴなどのフルーツから摂るといいでしょう。ビタミンDは、鮭やぶり、しらす、さんま、カレイ、しいたけなどに多く含まれています。手軽な鮭フレークや小魚を活用するのもおすすめです」
上記に加え、納豆やブロッコリーに豊富に含まれているビタミンKも骨の形成を助ける働きがあるそうです。
カルシウムの摂取にも最適! 子どもの「間食」の役割
「子どもにとって間食は、“補食”という考え方がメインになる」と語る河村さん。3食で摂りきれない栄養や、スポーツをしている子どもにとっては身体の回復にも効果があるのだと言います。
3食でまかなえない栄養を間食で補う
「子どもは消化機能が十分に発達していないので、一度にたくさん食べることができません。そのため、3食でまかなえない栄養を間食で補うことが大切です。保育園でおやつの時間があるのもそのためです。子どもの間食には、砂糖や油がたっぷり含まれている菓子類よりも、ヨーグルトや果物、芋類など、ビタミンやミネラル、カルシウムが含まれるものがいいでしょう。
お菓子は食べてはいけないわけではなく、食べる分量を決めることが重要です。例えば、スナック菓子なら両手に載るぶんだけ、個包装なら1袋など、決めて摂ること。お菓子を食べることで、その後の食事が食べられないことのないよう気をつけましょう」と、間食をする際のポイントも教えてくれました。
スポーツをしている子どもは特に重要!
さらに間食には、スポーツをしている子どもにとっては栄養を補うだけでなく、運動後に摂ることで体の回復にも効果があるのだそう。特に間食におすすめな食材についても解説してくれました。
「おにぎりやパン、果物など、エネルギー補給ができるものを中心に摂るといいでしょう。おすすめは、熟しているバナナ。熟しているほうがより消化が早く、すぐにエネルギー源になるからです。疲れているときは、クエン酸が豊富に含まれている柑橘系の果物や梅干しをプラスするといいでしょう。コンビニの梅干し入りおにぎりでもかまいません。運動後は消化機能が落ちていたり、食欲がない場合もあるので、オレンジジュースやゼリー飲料などで糖質を補給してから、消化の良いものを摂ることが重要です。
また、練習が夜遅くまである場合は、練習前にも間食を摂るといいでしょう。空腹の状態でトレーニングをしてしまうと、エネルギー不足になり筋肉がつきづらくなったり、集中力が低下してしまうこともあるからです。スポーツに打ち込んでいる子は3食にこだわらず、間食をうまく使って一日分の栄養を摂るように心がけましょう。
気をつけてほしいのは、運動するまで1時間ほどしかないのに、唐揚げなど油っこい物を食べてしまうと、お腹に溜まり、腹痛を起こしてしまうことも。運動するまでに時間がないときは、おにぎりやシンプルなパン、うどんなど消化の良いものを選びましょう」
運動前後はもちろん、一日を通して間食は何を食べてもいいというわけではありません。さらに食べるものだけでなく、その量にも意識を配るべきだと河村さんは続けます。
間食の適量は一日の栄養量の10%〜20%
「スポーツをしている子やしていない子ども、さらに年齢や体格などによっても間食の適切な量は異なります。そこで目安として覚えておきたいのが、一日に必要な栄養量の10%~20%を間食にあてるということです。
食事量も子どもによって異なりますが、2歳までは150kcal、3歳以降では200kcalを目安に摂ることを心がけてみましょう」
間食の時間は親子のコミュニケーションを楽しむ
栄養補給や回復に役立つ間食ですが、心の面でのリフレッシュという意味でも重要な役割を果たします。動き回って疲れた身体を休めるだけでなく、親子で顔を合わせるコミュニケーションの場としておやつの時間を有効活用するといいでしょう。(*3)
間食にも! カルシウムが摂れるレシピ例
最後に、河村さんが手軽にカルシウムを摂取できる小松菜を使ったレシピを教えてくれました。
小松菜とツナのグラタン
<材料(1人前)>
・小松菜…80g
・しめじ…1/5袋(20g)
・水煮ツナ…1/2缶
・クリームソース
ホワイトソース…120g
牛乳…100ml
コンソメ顆粒…小さじ1
・塩、こしょう…適量
・バター…10g
・ピザ用チーズ…お好みの量
<作り方>
①小松菜は根元を切り落とし、3cm幅に切る。しめじは石づきを除き、手でばらばらにしておく。ツナは水気を切っておく。
②中火に熱したフライパンにバターを入れ、①のしめじと小松菜の茎を入れてしんなりするまで炒めたら、小松菜の葉とツナを加えてさらに炒める。
③クリームソースの材料を入れたら手早く混ぜ、ひと煮立ちしたら弱火にし、とろみが出るまで煮込む。
④火を止めて耐熱皿に盛りつけ、ピザ用チーズを散らし、トースターまたはオーブンでチーズが溶けて焼き色がつくまで5分ほど焼く。
小松菜入りスムージー
<材料(コップ2杯分)>
・小松菜の葉…1束分
・グリーンキウイ…1/3個
・バナナ…小1本
・ヨーグルトドリンク(低糖)…200ml
・氷…お好みで
<作り方>
ミキサーにキウイとバナナをつぶしながら入れ、小松菜の葉をちぎって入れる。ヨーグルトドリンク、お好みで氷を入れてミキサーのスイッチを入れる。
間食の注意点
前述のとおり、子どもにとって間食とは、“補食”の役割があります。大人が間食のタイミングで食べるものは、お菓子のような“おやつ”、つまり嗜好品というイメージがあると思いますが、子どもにとってはその“おやつ”でさえ栄養素を補うために大切な要素となるのです。(*4)
時間・量を決める
間食を単なる“おやつ”で済ませないために意識すべきこととして、“時間や食べる量を決める”ことが挙げられます。何も考えずにだらだら食べ過ぎてしまう…そのようなことがないように、時間や量を決めて適切な栄養補給を心がけましょう。(*4)
いかがでしたか? 今回は、子どもの成長に欠かせないカルシウムの必要摂取量や効率的な摂り方、さらに間食についてお届けしました。ご紹介したレシピなどを参考にして、日々の生活の中でできることから取り入れてみてください。日本人に不足しがちなカルシウムだけでなく、3食では摂りきれない栄養素を補うために間食を活用して、子どもの成長をサポートしていきましょう!
参考記事・書籍
(*1)厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書(2024年11月25日閲覧)
(*2)文部科学省:日本食品標準成分表(八訂)(2024年11月25日閲覧)
(*3)日本安全食料料理協会:幼児期のおやつの目的や与えるポイント(2024年11月25日閲覧)
(*4)マニュライフ・ファイナンシャル・アドバイザーズ株式会社:【おやつ=お菓子じゃない!?】子どものおやつの役割とあげる時の注意点とは?(2024年12月10日閲覧)