サッカーや野球、水泳、体操など、スポーツの習い事をしているお子さんも多いのではないでしょうか。成長期になると、スポーツに打ち込んでいる子はケガだけでなく、成長痛などのスポーツ障害になりやすいと言われています。ここでは、スポーツ医科学修士の阿久津洋介さん(株式会社ライフパフォーマンスに所属)にお聞きした、子どものケガやスポーツ障害を防ぐ方法をご紹介します。
「スポーツ障害」とは?
身長がぐんぐん伸びている成長期において、スポーツに打ち込んでいる子どもたちに増えているのが「スポーツ障害」です。幼い頃から特定のスポーツだけを行う子どもが増え、限定した身体の部位だけを頻繁に使うことの積み重ねが関係していると言われています。
■代表的なスポーツ障害の種類
スポーツ障害の中でも代表的なのが「オスグッド病」「シーバー病」「腰椎分離症」です。
「オスグッド病」は、膝の痛みのことで、成長痛とも呼ばれます。成長期の脛骨(膝と足首の間の太い骨)が、太もも前の筋肉に引っ張られることが続くと剥離し、痛みが生じます。サッカーやバスケットボール、テニス、バレーボールなど、膝に負担がかかるスポーツを行っていると、12歳頃から発症しやすいと言われています。また、スポーツに打ち込んでいなくても、身長が伸びる時期に生じることがあります。
「オスグッド病」になってしまったら、練習を休み、安静期間を設けることが必要だと言われています。
「シーバー病」とは、踵の痛みのことで、10歳~13歳頃に発生します。子どもの骨はまだ成熟していないので、足の裏の筋肉やアキレス腱など踵に関係する筋肉、腱が引っ張られる力で踵に痛みが生じる障害です。子どもは「かかとをつくと痛い」と表現することが多いでしょう。
練習後にのみ痛みが生じる場合は、まだ初期段階だと考えられるので、踵にクッションのあるシューズを履いて練習することです。練習中にも痛みがでる場合は重症になっている可能性があるので、安静期間を設ける必要があると言われています。
「腰椎分離症」は、腰の疲労骨折です。成長期は骨が柔らかいので、身体をひねる動作や背中を反らす動作を繰り返すことで、腰の骨が圧迫されて疲労骨折を起こしてしまいます。14歳頃に発症しやすいと言われ、最初は腰を捻った時に腰痛があり、徐々に痛みが増していきます。
「腰椎分離症」になってしまったら、MRIやCT検査を行い、安静を保つことが大切です。
また、再発のリスクを防ぐために体幹トレーニングも必要でしょう。
■スポーツ障害をチェックするには?
3つの症状の中でもとくに発症しやすいのが「オスグッド病」だと言われています。「オスグッド病」になっているかどうかは、身長がぐっと伸びてきた時にチェックすることができます。
膝の下の少し出っ張っているところを押してみて痛い場合は、「オスグッド病」の可能性があるかもしれません。
「腰椎分離症」になりやすいかどうかのチェックはお子さんの前屈姿勢から確認できます。前屈したときに腰の部分が丸まってなく、真っ直ぐな状態になっていたり、また、立った時に反り腰(腰が反っている状態)になっていたりすると、「腰椎分離症」になりやすいかもしれません。
ランニングが多いスポーツをしている子どもは、すねの内側の太い骨部分を押して痛くないかもチェックするといいでしょう。痛い場合は、スポーツ障害の一種である「シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)」の場合があるでしょう。
スポーツ障害やケガ予防のために身体を柔軟にしておこう
子どもが長く健康的な身体を維持し、好きなスポーツに打ち込めるように、日頃から身体を柔軟にしておくことが大事です。柔軟性のチェック方法や身体を柔軟にするためのストレッチをご紹介します。
■子どもの柔軟性をチェック
子どもは身体が硬いとケガはもちろん、先に述べたスポーツ障害につがなってしまう場合があります。下記の方法で子どもの柔軟性をチェックしてみましょう。
・足関節:立った状態から踵を浮かせずに両腕で膝をかかえてしゃがむ。しゃがめればOK。
・太もも前の筋肉:うつ伏せに寝て左手で左足をつかむ(右手、右足でも可)。踵がお尻につけばOK。
・股関節:仰向けに寝て左手で左足をつかむ(右手、右足でも可)。太ももの半分以上がお腹につけばOK。
・背中の筋肉:仰向けに寝て右膝を立て、左側に倒して床につける(左膝を立て、右側に倒しても可 )。身体を倒した時、 床に膝がつけばOK。
■スポーツ障害を予防するための方法
「シーバー病」は足の裏やふくらはぎの硬さが原因で発症する場合が多いため、足の裏にゴルフボールを置いてごろごろマッサージをしたり、ふくらはぎのストレッチをするといいでしょう。
「オスグット病」は太ももや股関節の前側の硬さが影響します。後述の太もものストレッチを行うようにしましょう。
前述の「腰椎分離症」になりやすいかのチェックで反り腰になっていた場合は、体幹部が安定していないので、体幹トレーニングを行うといいでしょう。
■今日から簡単にできるストレッチ
運動をする習慣がない子どもは、生活の中で同じ動きしか行わないので、身体の動きが小さくなり、どうしても筋肉が硬くなりがちです。さらに、運動をして体温が上がる機会が少ないので、血液循環が悪くなり筋肉が緊張しやすくなるため、身体が硬くなりやすいといえます。
スポーツ障害やケガを防ぐために、下記に紹介する簡単なストレッチなどを取り入れて、日頃から子どもの身体を柔軟にするように心がけましょう。
・腸腰筋(股関節の前側)のストレッチ
1片膝をついて、頭まで一直線になるような姿勢をとる。
2膝をついている側のお腹とお尻に力を入れ、両手で前の膝を軽く押し、深呼吸を2回する。
・大腿四頭筋(太ももの前側)のストレッチ
1横向きに寝て、下側の足を曲げる。
2上側の足を片手で持ち、膝を後ろに引き、深呼吸を3回する。
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取材・文:サカママ編集部 取材協力:阿久津洋介(スポーツ医科学修士。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、全米スポーツ医学協会パフォーマンスエンハンスメントスペシャリストなど多数の資格を有する)