子どもの服についた泥汚れや食べこぼしのシミ。洗濯をしても落ちていないことってありますよね。でも、洗濯前に少し工夫すれば、汚れ落ちが変わるそう。洗濯王子の愛称でも知られる洗濯家・中村祐一さんに、気になる汚れをスッキリ落とす裏ワザを伺いました。
<教えてくれた人>
中村祐一さん
洗濯家。長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年から「洗濯アドバイス」という分野を切り開いてきたパイオニア。「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など各種メディアにも多数出演。https://www.sentaku-yuichi.com/
なかなか落ちない泥汚れは
洗濯機やブラシを活用しよう
お子さんを持つご家庭において、洗濯の悩みの一つがガンコな泥汚れではないでしょうか。泥汚れは不溶性の汚れなので、洗剤で溶けたり、漂白剤で色素が壊れたりせず、細かいつぶの汚れが残ってしまうのです。そのため、洗濯機に入れる前の前処理も大切。まずは、乾いている状態で落とせる泥は手やブラシで払ってあらかじめ落としておきましょう。
洗濯機に入れる際は、「衣類」「水」「洗剤」の量を調整することが大切(前編参照)。そうすれば、たたく、揉むなどの作用がしっかり働くので、洗濯機でも落ちやすくなるはずです。泥汚れがひどい場合は、洗濯機に泥汚れの衣類のみを入れて洗い、洗濯機の「機械力」をしっかり与えると、より洗浄効果が高まります。
また、細かい部分の泥が落ちない場合は、洗面器などに水と洗剤を入れて洗剤液を作り、その中でブラシでこすり洗いをしましょう。
泥汚れは、物理的な作用(洗濯機やブラシなど)が特に重要になる汚れです。
食べ物のシミは、洗濯時の水温と漂白がポイント
食べ物のシミは、色々な要素を含んでいますが、中でも落ちにくいのが油分と色素です。水で洗濯をすると油が溶けにくく、汚れが残ってしまうことがあります。
油分を落とすコツは、洗濯機の中に、40℃程度の規定量のお湯と洗剤液を先に入れ、洗剤液を作ってから洗うことです。難しい場合は、洗面器などにお湯で洗剤液を作って、部分的に洗ってから、洗濯機に入れましょう。
また、洗剤で落ちなかった色素には漂白が必要です。綿やポリエステルなど普段着の漂白には色柄にも使いやすく、漂白力のバランスがよい、酸素系粉末タイプの漂白剤(過炭酸ナトリウム)がおすすめです。40℃のお湯1Lに小さじ1程度の割合で溶かし、30分〜2時間程度つけ置きしてみましょう。
ペンやクレヨンのシミには消毒用のアルコール
ペンやクレヨン、絵の具のシミは、油や樹脂と色素が一緒についた状態です。消毒用のアルコールや、オレンジオイルなどをなじませると、油や樹脂がゆるんで落ちやすくなります。
墨は、墨がついた部分をつまみ、洗剤をつけて揉み洗いし、水で流すことをひたすら繰り返して落とします。ただし、墨は一番落ちにくい汚れのひとつです。不溶性の細かい粒子の汚れなので、繊維の奥に入ってしまい、完全には落とせないことも多いでしょう。
汚れやシミがついた際、もちろん早く落としたほうがいいのですが、落ちる汚れは時間が経っても落ちるので、あせる必要はありません。また、大切な服に汚れがついてしまった場合、その場で汚れを拭いてしまうと、汚れが奥に入ったり広がったり、繊維が毛羽立って痛んでしまうこともあるので、落ち着いてその場では何もせず、後日クリーニング屋さんに相談しましょう。
タオルをふんわり洗いあげるには?
日常生活の中で欠かせないタオル。普通に干すと乾きが遅かったり、硬く仕上がってしまうことがあますよね。タオルは、表面のループが起き上がるとふんわり、柔らかく仕上がります。ループを起き上がらせてふんわり仕上げるには、乾燥機で乾かすのが一番です。
乾燥機に入れることで温風の中で叩かれ、パイルが立ち上がりやすくなるのです。
乾燥機がなければ、20回程度タオルを振ってから干すことでパイルが立ち上がり、柔らかく仕上がります。
なお、柔軟剤を使うと、水分を吸いにくくなってしまうので、タオルや肌着など、水分を吸わせたいものには不向きといえるでしょう。
残り湯やネットの使い方
洗濯に、残り湯を使う方も多いのではないでしょうか。
入浴直後のお湯であれば40℃程度あるので、皮脂汚れは落ちやすくなるでしょう。
ただし、お湯そのものに、皮脂汚れやたんぱく質汚れがある状態なので、洗剤を1.1~1.2倍と、ほんの少しだけ増やすことをおすすめします。また、すすぎはきれいな水で、出来れば3回行うといいでしょう。
冷めていたり、汚れている残り湯は、水温による洗浄力アップの効果が期待できないどころか、臭いの原因にもなるので使用するのは避けましょう。
「ネットには何を入れたらいいの?」という声もよく聞きます。
ネットは衣類を守るためのものです。ですので、形を崩したくないもの、レースなど薄いもの、飾りやホックがついているものなどを入れるのに適しています。また、ネットに入れることで摩擦が抑えられるので、色合いを守りたい衣類にも有効です。
ただし、ネットに入れることで洗浄力は落ちてしまうので、必要なものだけに使うようにしましょう。
「衣類・水・洗剤の3つの量を調整して洗い、すすぎをしっかりする」
まずはこの「洗濯の基本」だけしっかりおさえたら、今お持ちの洗濯機や洗剤でも汚れや臭いは確実に落ちやすくなるはずです。それ以上のことは余裕のある時にしたり、プロに頼ったりしてもいいのです。必要以上にがんばりすぎないことも、毎日の洗濯にはとても大切なことだと思います。