最近、便秘の子どもが増えているようです。というのも、子どもは毎日便が出ている場合でも便秘になっていることも。そこで、腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんに、子どもの便秘の原因や便秘解消法についてお聞きしました。
鈴木啓太さん
サッカー元日本代表、AuB(オーブ)株式会社代表取締役社長。自社での腸内細菌の研究を土台に、「すべての人を、ベストコンディションに。」をミッションに、フードテック事業を展開し、現在は健康食品の販売を行っている。
子どもの便秘を見逃しているかも! 便秘の原因、症状とは?
小学生の6人に1人が便秘状態・便秘予備群!!
お子さんと、便について会話をしていますか?
「毎日話している!」という方は、少ないかもしれないですよね。便について周囲の人と比べたり、話をすることはほとんどないので、実は便秘だと自覚していない人がたくさんいるのです。
便秘の定義は「3日以上排便がない状態。または毎日排便があっても残便感がある状態」(日本内科学会)とされていることから、毎日便が出ていても、すっきりしなければ便秘ということになります。また、下記の条件のうち2つ以上合致する人は便秘の可能性も!
・排便頻度が3日に1回以下
・便を我慢することがある
・便が硬い
・トイレが詰まるくらい大きな便が出る
・排便時に痛みがある
・便失禁がある
※参考:国際的な便秘の定義 ROMEⅢ
さらに、とある調査によると…
・小学生の6人に1人(16.6%)が便秘状態。
・さらに3人に1人(37.3%)は便秘状態・便秘予備軍!
・便秘状態の小学生の47.2%は誰にも相談したことがなく、保護者の26.6%は子どもが便秘状態にあると認識せず。
※参考:NPO 法人 日本トイレ研究所「小学生の排便と生活習慣に関する調査」
という結果もあることから、ママが子どもの便秘を見逃している可能性も!
子どもの便秘は、我慢することがきっかけ
そもそも、子どもの便秘は、排便を我慢することがきっかけで起こるケースが多いものです。実際に、先にあげた調査によると「小学生の2人に1人(51.3%)が学校でうんちをしないと回答」「56.4%の子どもが学校でうんちをしたくなった時に我慢している」という結果が出ています。
参考:子どもの便秘の正しい治療
上記の図は、子どもの便秘の悪循環が起こる理由を表しています。
排便を我慢してしまうと、便が腸の中にとどまる時間が長くなるので、腸の水分が吸収されてしまい、便が固くなってしまいます。そうすると、より一層、便が出にくくなり、とくに子どもは押し出す力が弱いので、出すことができなくなるのです。また、便が固くなると、排便時に痛みを伴う場合もあるので、さらに便を出すのが嫌になり……と、一度便が溜まると悪循環が起きやすく、慢性的な便秘になりやすいのです。
便秘と感じたら、ビフィズス菌や酪酸菌を積極的に摂ること
腸内環境でいうと、便秘は、本来出さなければいけないものがずっと腸に溜まっている状態なので、腸内環境が乱れ、悪玉菌を増やすことにつながってしまいます。悪玉菌が作り出す有害物質が増えると、便秘だけでなく、身体の様々な不調の原因になる可能性もあるのです。
便秘を解消して悪玉菌の増殖を抑制するには、短鎖脂肪酸の多い腸内環境にすることです。短鎖脂肪酸は、腸内環境を整え、ぜん動運動を促すなど便秘の解消を助ける働きもあるからです。短鎖脂肪酸とは乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸などのことで、腸内では腸内細菌が食物繊維などを発酵することによって作り出しています。
短鎖脂肪酸を生成する代表的な腸内細菌は乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌です。そのため、これらの菌が増えるような食事を積極的に摂ると、便秘の改善にもつながりやすいと言えるでしょう。
おならの臭いは便秘の目安にも!
なお、子どもの便秘に気付く目安として、おならの臭いがあります。 おならは、腸内細菌が発酵してガスとして出るのですが、腸内環境のバランスがいいと、おならの臭いはさほどしないと言われています。一方、便秘などで腸内環境のバランスが悪くなると、うまく発酵されず、臭いがきつくなるとも。 お子さんのおならの臭いがすごく気になる場合は、便秘の可能性があるかもしれませんよ!
理想的な便の形や硬さは?
上記の表は便の状態を7段階に分けたものです。理想的な便は、バナナ状で黄土色、長さは30cm以上あることです。また、便の回数は1日1回以上、スッキリしたという感覚も大事です。腸内環境が整っていれば③~⑤のようなよい便が出るでしょう。日頃からお子さんに「どんなうんちだった?」と聞くことを習慣にし、①、②、⑥、⑦のような悪い便が出たと言った際は、昨日、何を食べたかを考えてみることです。そうすれば、どういった食材がお子さんの身体に合っていないかもわかるでしょう。
子どもの便秘改善に効果的な食事は?
便秘を改善するには、ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品から生きた菌を摂ることです。ヨーグルトはメーカー・ブランドによって入っている菌が異なるので、いろいろな種類のヨーグルトを食べるのがポイントです。また、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂ることも大事です。
水分をたくさん摂取する
便の成分は60%以上が水分でできています。水分不足になると便の形成がうまくできないため、便秘になってしまいます。便秘改善のためには、水分をたくさん摂るようにしましょう。ただし、飲み物といっても、ジュースはもちろん、お茶も適していません。お茶に含まれているカフェインには利尿作用があるため、出ていく水分を増加させてしまうからです。便秘解消のためには、水またはカフェインを含まない水分を摂るようにしましょう。
食物繊維豊富な食材で腸を刺激する
子どもの便秘がなかなか治らない時は、積極的に食物繊維が豊富な食材を摂ることです。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があります。水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになり、便を柔らかくする働きがあり、不溶性食物繊維は便の量を増やして、便通をよくします。そのため、2種類の食物繊維をバランスよく摂れば腸が刺激されて、便意にもつながるでしょう。水溶性食物繊維は、熟した果物、海藻類、大麦に、不溶性食物繊維は、野菜、きのこ、穀類などに多く含まれています。
子どもの便秘対策・予防方法とは
子どもの便秘を予防するためには、規則正しい生活で排便リズムを整えることが大切です。毎日、同じ時間に目覚め、朝ごはんを食べて、就寝時間を統一すれば体内時計が整うので、排便も習慣になっていくのです。
規則正しい生活の中でも、とくに影響が大きいのは朝ごはんです。朝ごはんを抜いてしまうと、1日の食物繊維や水分量も減少してしまうので、便の量が増やせなくなり、便秘につながりやすくなってしまいます。腸に刺激を与えるためにも、朝ごはんは必ず食べることが重要です。また、子どもは学校では排便を我慢してしまいがちなので、朝トイレに行く時間を決めて、習慣にするようにしましょう。
排便日誌をつけて便秘期間を把握
お子さんの年齢が上がっていくにつれて、親子の間で便に関する話題が減っていく傾向にあると思います。そのため、お子さんの排便が滞っていることに気がつきにくくなり、結果、便秘であることを把握するのが遅れるといったことがあります。そうならないためにも、排便日誌などをつけて、毎日親子で便についての話題が上がるような仕掛けをしてあげるとよいでしょう。
なお、排便日誌は、日本小児栄養消化器肝臓学会のホームページからダウンロードすることができます。
※日本小児栄養消化器肝臓学会のホームページ
普段から適度な運動をする
運動をすれば、お腹周りが動いて腸が刺激されますし、また、運動によって体内温度が2度上昇することで、腸内細菌が活性化する手助けにもなります。ですので、子どもの便秘を予防するためにも、日頃から適度な運動を心がけましょう。
子どもの便秘に気づくためには?
子どもは便秘になっていても気づいていない場合が多いものです。子どもの便秘にいち早く気づくためにも、幼児の頃から「どんなうんちだった?」と聞くことを習慣にしましょう。また、便秘になった時は、すぐに薬に頼るのではなく、水分をたくさん摂ったり、食物繊維の豊富な食材を摂り入れるなど、まずは腸を刺激することが大事です。何よりも規則正しい生活を送ることが、便秘予防につながります。
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