小学校入学は、子どもたちも親もわくわくと同時に、ちょっぴり不安も感じるもの。そんなとき絵本は、気持ちをやわらげたり、新しい環境への期待をふくらませたりする心強い味方になります。今回は絵本作家であり静岡で絵本専門店を営む、えがしらみちこさんに、入学前の子どもたちに寄り添い、前向きな一歩を応援してくれる絵本を選んでいただきました。年長さんや卒園前の時期にぴったりです。ぜひお子さまに読んであげてくださいね。
<教えてくれた人>
えがしらみちこさん

熊本大学教育学部を卒業後、絵本作家・イラストレーターに。水彩を中心としたやわらかなタッチと、詩のような言葉づかいで、幅広い世代から支持を集めている。主な代表作に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』(ともに講談社)などがある。静岡県三島市にて絵本専門店「えほんやさん」の代表も務めながら、絵本の制作やワークショップなども精力的に行っている。
https://tenkiame.com
入学の緊張や不安をやさしく包んでくれる
『がっこうだって どきどきしてる』

「初めての学校、初めてのお友だち、初めての授業…初めてだらけで緊張するのは自分だけではありません。このお話では、なんと学校が主人公。きっと学校も“どんな子が来るんだろう”と、期待と不安が入り混じった気持ちで待っているのです。当たり前に存在しているものにも気持ちがあるって想像すると、世界がやさしくかわいく見えてくる。この絵本を読むと、校舎におはようとか、ありがとうねと思わず挨拶したくなっちゃいます」
『がっこうだって どきどきしてる』
文:アダム・レックス 絵:クリスチャン・ロビンソン 訳:なかがわ ちひろ (WAVE出版)
自分のペースで成長していったらいいんだと、前向きになれる
『マルマくん かえるになる』

「オタマジャクシの尾っぽが消えず、なかなかカエルになれないマルマくん。上手に泳ぐことができなくて泣いていると、先生がそっと手を差しのべてくれます。同じように泣いていたお友だちも一緒に、先生の特別授業を受けることになりました。成長の速さはそれぞれ。『ゆっくりだって いいんだよ』『こまったことは すこしずつ すてきなことに かわっていくよ』と、先生の包み込むような言葉が印象的です。
誰にだって上手くいかなかったり、できるようになるスピードが遅かったり、他と比べて落ち込んでしまうことはあると思います。そんなとき、この絵本を一緒に読んで“応援しているよ”“ゆっくりでも大丈夫だよ”というメッセージが伝わったらいいなと思います」

『マルマくん かえるになる』
文:片山令子 銅版画:広瀬ひかり (ブロンズ新社)
日常の中の平和を親子で考えるきっかけに
『へいわって どんなこと?』

「日本・中国・韓国の三カ国の絵本作家が手を繋ぎ、平和を訴える絵本シリーズの第1作として刊行された作品です。平和は、目に見えないけれど、私たちの暮らしの中の何気ない瞬間にそっと寄り添っています。けれど、それは決して“当たり前ではない”ということ。そんなことを静かに思い出させてくれます。
毎年、日本では8月になると、戦争について学んだり考えたりすることはあっても、平和について考える機会は少ないように感じます。この絵本を読んで、家族や大切な人たちと会話をしながら、平和について考える。そんな、きっかけになったらいいなと思います」

『へいわって どんなこと?』
作:浜田桂子 (童心社)
成長することの豊かさに気づかせてくれる
『おおきくなるっていうことは』

「子どもたちの成長っぷりに、大人たちはみんなびっくりしたように“大きくなったね〜”と言ってしまいます。でも、大きくなるってどういうことだろう…? 絵本の中では、『ようふくが ちいさくなるってこと』、『あたらしい はが はえてくるってこと』など、子どもたちでもわかるような言葉で、成長について説明してくれます。できるようになることが増えて、僕も私も“大きくなったのだなぁ”と、実感や自信がむくむく湧いてきます。そして、自分たちより小さな人たちへの思いやりにまで気が配れるようになっていく。大きくなるって素敵なことだと、卒園前の子どもたちに読んであげたい一冊です」

『おおきくなるっていうことは』
作:中川ひろたか 絵:村上康成 (童心社)
遊びの中で“ゆずり合いの心”を学べる
『ノンタンぶらんこのせて』

「大好きなブランコにずっと乗っていたいノンタン。お友だちが『ぶらんこのせて』とお願いしても、『だめ だめ』と独り占めしてしまいます。すると、みんなは『ずるいよ ずるいよ』と怒り出してしまいました。あわてたノンタンは『10まで かぞえたら、じゅんばん かわるよ』と約束しますが、実は3までしか数えられません。
最後にはみんな笑顔になって、歌まで歌っちゃうほほえましさ満点のお話。なかなか順番をゆずれないノンタンと、早く乗りたくてうずうずしているお友だち。そのどちらの気持ちにも共感できて、“みんなで順番を守って楽しく遊ぼうね”とやさしく伝えてくれるお話です」

『ノンタンぶらんこのせて』
作:キヨノ サチコ (偕成社)
撮影:福冨 ちはる 取材・文:阿部 里歩




























