子どもの近視が増加!
原因やスマホを使う時に気をつけることは?

子どもの視力改善

ゲームやスマホ、タブレットなどのデジタルデバイスは、切っても切り離せない今の時代。とはいえ、子どもの視力低下は心配になりますよね。子どもの目の健康のためには、どういったことに気をつければいいのかを眼科医・医学博士の平松 類先生にお聞きしました。

<教えてくれた人>
平松 類 先生

平松 類 先生
眼科医・医学博士。二本松眼科病院副院長。多くのメディアでも活躍し、YouTube「眼科医平松類チャンネル」では情報を発信。著書は『見るだけで視力がよくなる 子どもガボール』(主婦の友社)など多数。

遺伝だけではない!子どもの近視が増えている原因は?

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ここ数年、子どもの近視が増加しているのを知っていますか?
小学生の3人に1人が近視(裸眼視力が1.0未満)、あるいは要注意ゾーンにいることが、文部科学省による学校保健統計調査でもわかっています。
※参考:令和4年度学校保健統計調査『「裸眼視力1.0 未満の者」の割合』より

子どもの近視が増えている原因は、遺伝がベースにはあるものの、外遊びが減ったためです。外で遊ぶことで遠くのものや近くのものを見たり、太陽の光を浴びることも近視を抑制する要因になっていると言われています。近視を進行させないためには、日々、2時間程度、外で遊んだほうがいいと言えるでしょう。

また、手元を見る機会が多くなったことも、子どもの近視が増えている要因です。とくに、30㎝以下の距離で物を見ることが多いと、近視が進行すると言われています。スマホやタブレットなどのデジタルデバイスに限らず、本を読んだり、勉強することも手元を見る作業になり、この時間が長ければ長いほど、近視の進行には影響を及ぼしてしまいます。

ただし、読書とスマホなどのデジタルデバイスを同じ時間で比べた場合は、デジタルデバイスのほうが近視が進行しやすいと言えるでしょう。なぜなら、本は手元から30㎝の距離でも見れますが、デジタルデバイスは、どうしても20㎝の距離で見てしまうからです。たった10㎝と思いがちですが、1.5倍も手元までの距離が縮まっているのです。

ちなみに、日本に先立ってタブレット学習を取り入れたシンガポールや台湾では、子どもの近視が増加したことがわかっています。ただ、遠くを見るなど生活改善に取り組んだことで、近視の進行が抑制されたことも判明しています。

12歳頃までは3Dゲームを避けたほうがいい理由

そもそも、子どもの視力がどのように成長するのかを知っていますか?
生まれたての頃はほとんど見えず、視力は0.01程度です。でも、その発達はめざましく、1歳になる頃には0.1~0.2程になり、3歳~5歳で片目1.0程の視力が出てきます。そして、6歳~12歳にかけて、立体的に見る機能が備わってきます。「3Dゲームは、12歳頃まではしないほうがいい」と言われるのは、そのためでもあるのです。

視力の発達には目の大きさも関係しています。生まれたての赤ちゃんの眼球の直径は16.5㎜程度ですが、3歳頃になると21㎜ぐらい、8~10歳頃に大人とほぼ同じ24㎜程になります。眼球の直径がこれよりも大きくなってしまうと、近くが見えて、遠くが見えにくい「近視」になってしまいます。

近視を予防する方法①
スマホやタブレットを使う時に気をつけること

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子どもはゲームやスマホに熱中してしまうと、止まらないケースも多いのではないでしょうか。子どもの目の健康を保つために、ゲームやスマホ、タブレットなどを使う時に注意してほしいのが、距離と時間です。
海外では「20-20-20」の法則が大事だと言われ、これは、20分間デジタル画面を見たら、20フィート(約6m)を離れたところを20秒間見るということです。
日常生活ではここまではできなくても、目と画面の距離は30㎝以上離し、30分に1回は休みを入れ、2m以上遠くを10~20秒見るようにすることが大事です。

デジタルデバイスは、画面から目に直接光が入るため、画面が明るすぎると、目を疲れさせてしまいます。画面の明るさは中~中より少し下ぐらいに調整しましょう。

デジタルデバイスに多く含まれているブルーライトは、子どもの目に悪いと思っている方もいるのではないでしょうか。
ブルーライトとは、エネルギーの強い青色の光のことで、デジタルデバイスだけでなく、太陽光や部屋の照明にも含まれています。
ブルーライトが子どもの目に影響を与えるかどうかは、実は判明されていないのです。
最近の研究では、ブルーライトに近いレッドライトやバイオレットライトは、近視の進行を抑制する働きがあることがわかり、ブルーライトをカットしてしまうと、レッドライトやバイオレットライトもカットされてしまいます。そのため、日本眼科学会などでは、子どもにブルーライトカットメガネは推奨しないという声明を出しています。

なお、赤ちゃんがいる場合、ぐずらないようにとベビーカーにのせたまま、スマホの動画を見せてしまうこともあるかもしれません。この場合、目の近くでスマホを見せることになるだけでなく、揺れている環境では、一生懸命見ようとするとので、瞬きの回数が減り、より目や脳に負担がかかってしまいます。動画を見せるのではなく、YouTubeなどで音楽を聞かせてあげるといいでしょう。

近視を予防する方法②
勉強する時は、姿勢に気をつけて!

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勉強や読書をする時に気をつけてほしいのは、姿勢です。姿勢が悪いと、どうしても手元までの距離が近くなってしまうからです。姿勢を正し、手元までの距離を30㎝以上離すようにしましょう。とはいえ、子どもに「30㎝以上、距離を離して」と言ってもわかりづらいものです。A4サイズの縦の長さは約30㎝なので、A4サイズのノートや本を使って、「これくらい距離を離そうね」と子どもに伝えてあげるといいでしょう。

椅子と机の高さが合っていないと姿勢が悪くなってしまうので、高さが調整できる椅子を使って、子どもが無理なく距離を取れる環境を作ってあげることも大事です。
勉強机に電気スタンドを置いていれば問題ないのですが、近頃は、リビングで学習する子どもも多いですよね。リビングのシーリングライトだけでは、明かるさが足りず、手元までの距離が近くなってしまうので、リビングで学習する際も、電気スタンドを置いてあげるといいでしょう。

また、勉強や読書中も、30分~1時間に1度は、休憩を入れることも大切です。
人間はボーッとしている時には、1分間に20回瞬きをするのですが、読書をしている時は12回、デジタルデバイスを見ている時は、7回の瞬きになると言われています。
瞬きの回数が減ると目が疲れてしまうので、休憩して目を休めることが大事なのです。

子どもの目の健康のために、環境を整えてあげよう

子どもの目の健康のためには、「外で遊ぶ」「手元を見過ぎない」「目を使ったら休む」、この3つが大切です。でも、親御さんが「ゲームばかりしていないで、外で遊びなさい」と、口すっぱく言っても、子どもは聞かないこともありますよね。
ですので、上記のことがやりやすい環境を整えてあげるといいでしょう。
例えば、外で遊びなさいと言うよりは、親御さんが子どもを外に連れ出して一緒に遊んであげる、手元を見過ぎないために、先に挙げたA4サイズのノートや本を活用して、手元までの距離を確認したり、ゲームをする時はテレビ画面と接続してあげれば、適切な距離を保ちながら遊べるものです。

目を使ったら休むために、勉強や読書、ゲームをする時は、音が鳴るタイマーをセットしてあげるといいでしょう。この時、「音が鳴ったら目を休めてね」と子どもに伝えても、どうしていいかわからないので、「この位置から、あれを10秒見るんだよ」と明確に教えてあげることが大事です。タイマーが鳴った時には、トイレに行かせたり、お茶を飲むように促してあげれば、その間、手元を見ないで済むはずです。また、目を休ませるためにはしっかり睡眠をとることも大事です。

子どもは近視になっても、手元は見えるので生活に不便を感じず、見えにくさに気づきにいくいものです。そのため、子どもの自主性に任せていると、近視が進行してしまうことも。そうならないためにも、親御さんが日頃から、先に上げたような環境を少しでも作ってあげるといいでしょう。

いかがでしたか?前編では、子どもの近視が増えている原因、目の健康のためにゲームやスマホ、勉強をする時に気をつけることなどをお届けしました。後編では、子どもの視力低下のサインや視力改善につながる方法についてご紹介します。

取材・文:サカママ編集部 取材協力:平松 類 (眼科医・医学博士。二本松眼科病院副院長) 参考文献:平松 類著『見るだけで視力がよくなる 子どもガボール』(主婦の友社)

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