後編

生徒さん一人ひとりを見つめ、
より深く理解できる先生になりたい

中嶌三奈さん(三重県在住)

高校3年生の長女と中学2年生の長男をもつママ。2019年4月に教室を開設してくもんの先生に。「ごはんは必ず出来立てを食べてもらう!」ことを大切にし、仕事を始めてからも生活スタイルを変えることなく子育てとの両立を楽しむ日々。

後編では、中嶌さんのくもんの先生としての日々にフォーカス。教室を開設した当初のエピソードや子どもたちへの想い、働く上で大切にしていることなど、目標が大きく広がり続けているその要因をお話ししていただきました。

教室を引継ぐ時に改めて思ったのは、
生徒さん一人ひとりをしっかり見ることの大切さ

くもんの先生になると決めてから、教室の引継ぎにかける準備期間を少し長めの2ヶ月にしてもらいました。教室スタッフをしている教室をそのまま引継ぐなら生徒さんのことも分かりますが、別の教室だと、生徒さんはもちろん保護者の方々も初対面なので、皆さんのことをじっくりと知りたかったんです。スタッフと先生では役割も異なり、指導方法も変わるので多少の不安もありましたが、それよりもまずは生徒さんを知ることが一番だと思い、時間をかけさせてもらいました。

指導方法については家で教材の勉強をしたり、他の先生方に相談することで不安も解消していきましたね。中でも引継ぎをさせていただく前任の先生からは、「一人ひとりをしっかり見るように」とアドバイスしてもらい、教室での立ち振る舞いもすごく参考になったんです。その先生は椅子に座ることなく、指導中はずっと見回りながら生徒さんたちを観察していたので、ちょっとした表情の変化もすぐに察知して対応されていました。生徒さんたちをしっかりと見ることの大切さに、私自身も改めて気づくことができたと思います。

引継ぎの準備も終え、心構えも万端の状態でくもんの先生としての初日を迎えたんですが、やっぱり緊張しました。たまたま他の教室の先生も見学に来られていて、生徒さんたちにも私の一挙手一投足を見られているので、とにかくドキドキの状態のまま指導していたのを覚えています。今でこそようやく緊張も和らいできましたが、それでも「これでいいのかな?」と日々模索しながら生徒さんのこと、教室運営のことを考えながら過ごしていますね。

成長の様子をできるだけ細かく伝えることで、
保護者の方々と喜びをより深く共有できる

教室スタッフ時代も含めると9年ほどKUMONに関わってきましたが、子どもたちの成長には本当に驚かされます。先生になると子どもたちをより深く見ていることもあり、成長の喜びはさらに大きいですね。小学1年生の生徒さんがいたんですが、春頃は数の並びをなかなか理解できていなかったのに、夏休みを迎える頃にはたし算を素早くできるようになっていたり。ひらがなが読めなかった生徒さんが、ある日突然スラスラと読めるようになったり。すさまじい成長に驚きつつ、努力すれば必ず伸びることを実感しました。

保護者の方々には、そんな成長の様子をできるだけ細かく伝えるようにしています。「この教材ができました!」だけではなく、問題を解いていた時の表情や解いた時に発した言葉なども伝えることで、喜びをより深く共有できますから。努力して取り組み結果が出せると、また次のステップへの励みにもなります。そうした瞬間に携われることがこの仕事の大きなやりがいだと思います。

くもんの先生としてのやりがいが大きいからこそ、教室での自分の対応に後悔したこともあります。教室開設当初、教室で問題を解ききれなかった生徒さんがいて、家での宿題として持って帰るという本人の意思を尊重して「頑張って解いてきてね!」と背中を押したんです。ところが「できない!」と家で困ってしまっていたようで…。保護者の方から問い合わせが来たこともありました。自分の力で解けるようにもっとサポートするべきでしたし、他の先生に相談すると「その問題はチャレンジ問題だから、さらっと教えて次のステップに進めてあげた方がいい」と言われたんです。教材の内容が当時はまだ十分に把握できていなかったことが原因でした。それ以降は教材についてもさらに勉強し、研修にも参加しながら指導のポイントをより理解するための努力を続けています。

くもんの先生を始めてから、
気づかないうちに自分の内面も変化し、成長していた

開設して3年目を迎え、先生としても教室としても発展途上ですが、以前に主人からこんなことを言われました。「自分に自信をもったように感じる」「自分の意見をしっかり言うようになった」と。昔から前に出て仕切るタイプではないものの、とは言え自分を抑えていたわけでもないんですけどね。くもんの先生として自分が先頭に立って教室運営をしないといけない立場になったことで、無意識のうちに内面も変化していたのかもしれません。私自身はそんなに実感していませんが、これも一つの成長だと捉えてうれしく思っています。そして、主人をはじめ、母などいつも支えてくれる家族には感謝しかありません。

教室運営については、現在は4人のスタッフの方に勤務してもらっています。前任の先生時代から在籍しているスタッフの方もいて、学ばせてもらうこともたくさんありますね。大切にしているのは、何でもすぐに共有すること。生徒さんの様子はもちろん、声かけの内容なども小まめに共有するようにしています。教室を開設した当初は、連絡ノートを作ってそこにいろいろ書き込んで共有していましたが、タイムラグが生まれたりするので現在は口頭に変更。その都度伝え合った方が速いですし、コミュニケーションとしても分かりやすいですからね。スタッフの皆さんが迅速に対応してくれて、助かっています。日々の連絡事項を共有し、作業も分担することが教室運営をスムーズにするポイントかなと思います。

教室は先生によっていろんなカラーやスタイルがありますが、私は温かくて生徒さんが来やすい教室にしていきたいと考えています。体調や気分もその日によって一人ひとり異なりますし、自分の想いを口に出せる子がいれば、そうでない子もいます。そんな時、生徒さんのことをちゃんと理解でき、寄り添える先生になっていきたい。日々の指導を通じて成長を支えることはもちろんですが、もっと引いた視点で一人ひとりのことを考えられる先生になることが私の目標です。いつまで先生を続けるという明確な年齢は決めていなくて、続けられるまではずっと先生でいたいのが本音。わが子がさらに大きくなった頃には、もっともっとこの仕事に力を注いでいきたいです!

撮影:栗原 康 イラスト:宮城 奈月  文:前出 明弘

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