「ギャングエイジ」とは?
始まる時期や男女の違い、親の接し方

反抗期とは異なる「ギャングエイジ」という言葉、ご存知ですか?小学校3~4年生になると、低学年の頃とは少し違った態度を取るようになり、親や先生に反抗する「ギャングエイジ」と呼ばれる時期に突入する子どもが増えると言われています。そこで「ギャングエイジ」の特徴やこの時期の親の接し方・対処法を、子育て・教育の専門家である鈴木邦明さんに伺いました。

<教えてくれた人>
鈴木邦明さん

帝京平成大学人文社会学部児童学科准教授の鈴木邦明さん

帝京平成大学人文社会学部児童学科准教授。神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演など幅広く活躍中。


ギャングエイジの特徴や原因、
男の子と女の子の違いとは?

ギャングエイジの特徴、男女の違い

「ギャングエイジ」とは、思春期に見られる反抗期とは違い、小学校3~4年生の頃、これまでとは少し違った態度を取り、親や先生などに反抗したり、そばにいる仲間からの影響を強く受けながら行動する時期のことです。

大人よりも仲間の考えを重視し、女の子同士、男の子同士で集団をつくって行動するようになるのが特徴です。女の子は比較的同じメンバーで行動する傾向があるのに対し、男の子は、休み時間や放課後に遊ぶ友だち、近所の友だち、習い事の友だちなど関係性が多様なケースが多いため、色々な集団に属している場合が多いと言えるでしょう。

ちなみに、文部科学省のホームページ「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」にも、「9歳以降の小学校高学年の時期には(中略)、集団の規則を理解して、集団活動に主体的に関与したり、遊びなどでは自分たちで決まりを作り、ルールを守るようになる一方、ギャングエイジとも言われるこの時期は、閉鎖的な子どもの仲間集団が発生し、付和雷同的な行動が見られる」と記されています。
※参考:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/shiryo/attach/1282789.htm

思春期に見られる親や先生などに対する反抗は、子ども自身のストレスやモヤモヤした気持ちが要因になることが多いものですが、ギャングエイジはそれとは異なり、友だちとのつながりを大事にするが故に、大人に反抗的な態度をとったり、トラブルを起こしてしまうケースが多いと言えます。
ただ、思春期の反抗もギャングエイジも「子どもが自立に向かってもがいている姿」という点では同じだと言えるでしょう。

反抗期のない子どもがいるように、すべての子どもがギャングエイジを経験するわけではありません。ギャングエイジは、友だち関係の中で生じるので、比較的、学校のクラスが落ち着いていると、ギャングエイジ特有の行動は出にくい場合があります。ギャングエイジに限らず、いじめなども、クラスが落ち着いていると起こりにくいと言えるでしょう。

いつも1人でゲームをしているような子どもは、友だちとの関わりが少ないため、ギャングエイジに見られる反抗的な態度やトラブルは起こりにくいかもしれません。でも、ギャングエイジは、友だちとたくさん関わるからこそ生じる行動でもあるため、その中で学んでいくことも、子どもにとっては大切だと思います。


ギャングエイジに起こりやすいトラブルとは?

ギャングエイジに起こりやすいトラブル

ギャングエイジは数人の仲間で行動を取るという特徴があります。そのため、クラスでいじめを主導したり、集団で学校でのルールを守らないなどの行動を繰り返し、その結果、学級崩壊のような状況になってしまうこともあるでしょう。

学校外では、火遊びや壁にいたずら書きをしたり、コンビニなどで万引きをして警察沙汰になるなど、大きなトラブルに発展してしまうこともあります。とくに男の子は、様々なことに興味を持ちやすく、仲間同士で「ちょっとやってみよう」という冒険心が行き過ぎてしまい、トラブルを起こしてしまうケースが多いと言えるでしょう。

女の子の場合は、先にも述べたように同じメンバーで行動することが多いため、グループでのトラブルが多いと言えます。一度友だちとこじれてしまうと居場所がなくなってしまったり、他のグループの友だちと仲良くしていると「裏切った」と言われ、仲間外れやいじめに発展するケースもあります。男の子は、属するグループがいくつもあることが多いので、1つのグループで揉めても、ほとぼりが冷めるまで別のグループで遊んでいればいいのですが、女の子はいつも固定化されたメンバーでいることが多いので、女の子のほうが関係が悪化した時に、問題が大きくなりやすいと言えるでしょう。

家庭の中では、それまでは親の言うことを素直に聞いていた子どもが少しずつ反発するようになったり、行動が粗暴になることもあります。


ギャングエイジにトラブルが起きたときの子どもへの接し方

ギャングエイジの親の子どもへの接し方

トラブルが起きてしまったら、そのままにせず、子どもにその状況を聞いたうえで、親ができることを、親の立場でやっていくことが大切です。例えば、学級崩壊に近いような状態になってしまったら、担任や学年主任、管理職などと相談する場を作り、全体で前向きな話し合いをしていくと良いでしょう。

また、親御さんが謝る姿を見せるのもいいのではないでしょうか。例えば、子どもが調子にのって窓ガラスを割ってしまうなど、謝らなければいけないようなことをした時に、子どもだけでなく、親御さんも一緒に頭を下げる姿を見せると、子どもにとってよい影響になると思います。子どもは、一般的に謝るのが上手くないですし、謝る機会も多くはないものです。また、本当は「ごめんなさい」と言うべき場面でも、嘘をついたり、ごまかそうとします。私自身、小学校のクラスの担任の立場だった時、私が悪いと思うようなことが少しでもあったら、子どもたちに謝るように心掛けていました。親御さんが謝る姿を見せることで、子どもは自分がやってしまったことを反省し、謝ることの大切さも知るのではないでしょうか。

それまで仲良く関わっていたわが子が、反発したり、乱暴な態度をとるようになると、親御さんはイライラしてしまうこともあるでしょう。親子関係のほうが子どもと近いだけに、そうしたことが多いと思います。でも、ここで、厳しい対応をとっても、親御さんの想いはお子さんに伝わらないことが多いものです。家庭の中でトラブルが起こった時に何よりも大事なのは、親御さんが感情的にならないことです。最低限必要なことだけを伝え、その後はトラブルについて触れずに、切り替えていくような対応をとるといいでしょう。

ギャングエイジに起こりうるトラブルを知ると、事前に防ぐ方法が知りたいと思う親御さんもいるかもしれません。確かに、トラブルを起こさないことは大切です。でも、子どもは色々な経験をする中で育っていき、親御さん自身も成長していくように感じています。この時期は、親御さんにとっては苛立ったり、不安を覚えることが多いかもしれません。でも、思い通りにならないわが子との関わり方を、親御さんは試されていると思うのです。ギャングエイジは、子どもたち成長していくきっかけになる時期でもあります。この時期をそんなふうに捉え、ムキにならずに距離を置いて対応すれば親御さんの成長につながり、後に嵐のような反抗期がやってきた際も、上手く乗り切ることができると思います。


いかがでしたか?前編では、ギャングエイジの特徴や親の接し方をお届けしました。後編では、ギャングエイジと同じ時期に見られる「10歳の壁」「小4の壁」についてご紹介します。

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