食事の話をすることが、
野菜嫌いの克服につながることも
「食育」というと、難しく考えてしまいがちですが、日常の食生活そのものが家庭での食育だと考えればいいでしょう。もちろん、何を食べるのかも大切ですが、それ以上に気にかけてほしいのは、食事中の会話です。テーブルに並んでいる食事の話をするだけでも、子どもにとって食育になるのです。
例えば、子どもが間違えやすいレタスとキャベツの違い。
レタスを使ったサラダを出した際に、「このサラダに入っているのはレタスだよ」と、いつも話していれば、子どもは知らず知らずのうちに、レタスの見た目や味を認識するようになるはずです。同様に「今日はサバの味噌煮だよ」「ポークカレーだよ」などと、料理名を伝えていれば自然と覚えていくようになるでしょう。子どもにとっては食材や料理名を知ることも、食育の一つなのです。
食材や料理名だけでなく、味覚の話をすることも大切。子どもの味覚は発達段階なので、いろいろな食材を使い、どんな味だと感じているのかを聞いてみるといいでしょう。また、作ったおかずの味を聞いて「しょっぱい」などと言えば、次に作る際に味を調整することもできるようになります。
日々の生活の中で、野菜に触れる、臭いを嗅ぐことも食育につながります。子どもと一緒に料理ができればベストですが、なかなか時間がとれない場合は、野菜を洗ってもらうなど、触れさせるだけでも十分です。スーパーに子どもと一緒に行って、食材を見ながら説明するのもおすすめです。
食事のマナーを身につけさせることも大切
食事のマナーを身につけさせることも食育の一つです。
食事のマナーは学校では習わないからこそ、家庭で教えることが重要です。子どもが「ひじをついて食べていないか」「お箸が正しく使えているか」「お茶碗を持って食べているか」などを気にかけてみてあげましょう。また、子どもは大人の真似をするので、親も意識して正しい食事マナーで食べるようにしましょう。
とはいえ、子どもに食事のマナーを注意しても、なかなか言うことを聞かないこともありますよね。そんな時は、ゲーム形式にするのがおすすめです。例えば、毎回ひじをついて食べているのであれば「何秒、ひじをつかないで食べられるか競争しよう」と持ちかければ、子どもは楽しみながらやろうとするかもしれません。毎回は難しいと思うので、余裕がある時にぜひやってみましょう。
また、食事中に遊んでしまったり、だらだら食いになってしまう子どもも多いものです。
そんな時は「これだけは食べよう」「お母さんが食べちゃうよ」などと声をかけると、食べ始める場合もあります。いつもと違った食器を使ったり、子ども自身にスプーンや食器を選ばせると、すすんで食べることもあるでしょう。
子どもの「調理力」を育もう
子どもにとって、将来、自立する上でも大事になってくるのが「調理をする力=調理力」。
調理力は、子どもの頃から調理を経験していたかどうかで差がでてくるといえるでしょう。たとえ包丁を使わなかったとしても、小学生の頃から調理を経験していれば、高校生になった時にお弁当を作れたりするなど、年齢を重ねた際に、違和感なく調理ができるものです。また、調理を経験することで、この調味料を足せばおいしくなるといった味覚も育まれ、それは嫌いな食べ物を克服することにも役立ちます。
また、野菜を洗ったり、ちぎったりは小さなうちからできるはずです。遊び感覚や簡単なお手伝いとしてできるだけ調理を一緒にするとよいでしょう。
子どもの野菜嫌いを克服する方法
子どもの食に関する悩みで多いのが「野菜嫌い」。
子どもが嫌いな野菜は、細かく刻んで食べさせているという方も多いのではないでしょうか。でも、野菜嫌いを直すには、まずは子どもに、なぜその野菜が嫌いなのかを聞いてみることが大事。味、見た目、食感、香りなど、嫌いな原因によって対処法は違ってくるからです。
野菜嫌いな子どもにおすすめの味付けや調理法とは?
味や香りが苦手であれば「照り焼き」「カレー」「マヨネーズ」「チーズ」など、子どもが好きな味付けにするといいでしょう。
例えば、多くの子どもが苦手とするピーマンやゴーヤ。その理由は、見た目よりも苦味が嫌いな場合が多いと言えます。ですので、形は残したままでも、苦味を抑えた味付けにすれば、意外と食べたりするのです。
野菜の見た目や食感が苦手な場合は、「刻む」「すりおろす」「揚げる」など、調理法を変えてみるといいでしょう。
また、憧れのスポーツ選手の名前を出して「○○選手はトマトが好きみたい」と伝えたり、「○○君(ライバルの子)は好き嫌いがないらしいよ」といった声かけが効果的なこともあるでしょう。
焦らず子どもと向き合うことも大切
とはいえ「子どもの野菜嫌いを克服させなければ・・・」と必死になると、心労も溜まってしまうもの。先にも述べたように、子どもの味覚は発達段階で、とくに酸味や苦味は経験することで好きになっていくことも多く、今、嫌いな野菜でも、ゆくゆくは食べられるようになることもあります。ですので、嫌いな野菜を無理して食べさせようとするのではなく、それに似た栄養素を含む野菜で補うというのも一つの方法です。ピーマンが嫌いなら、トマトやにんじん、ほうれん草、かぼちゃなどを食べることで、ピーマンに含まれるビタミンAやビタミンCが補えるのです。「子どもが嫌いな野菜は、食べられるようになってきたら徐々に増やしていく」という考え方でもいいのかもしれません。
管理栄養士おすすめレシピ直伝!
「ピーマン入り時短キーマカレー」
野菜の中でも、子どもの嫌いな野菜ランキングの上位に上がるピーマンは、食べさせるのに悩まれているご家庭も多いのではないでしょうか。そこで、ピーマンを使った、簡単にできるキーマカレーをご紹介します。
市販のレトルトカレーの具と炒め玉ねぎを使うので、みじん切りにするのはピーマンのみ。肉の色が変わればほぼ具が加熱されているので、短時間で作れます。また、味付けはレトルトカレーをベースに、ケチャップとカレー粉で甘さと辛さの調節ができるので、あれこれ迷わずに作れるのもポイントです。
<材料(子ども1人分)>
・ピーマン…緑1/2個(赤があれば赤緑1/4個ずつ)
・塩…少々
・合いびき肉…70~80g
・冷凍ほうれん草…ひとつまみ
・市販炒め玉ねぎ…大さじ1~2
*お好みで市販ゆでビーンズ(ひよこ豆など)、みじん切りにしたエリンギなど
・バター…小さじ1/2
・カレー粉…小さじ1/4~1/2
・子ども用レトルトカレー…1袋(90g)*具が入っているもの
・トマトケチャップ…大さじ2~3
・ごはん…1人分
作り方
1.ピーマンは洗ってへたを切り、種とわたを取り除き、みじん切りにする。耐熱容器に入れて塩もみし、ラップをして電子レンジ(600W)で30秒程度加熱したら、水けをしぼる。
2.フライパンに1、カレー粉をふった合いびき肉、冷凍ほうれん草、炒め玉ねぎ、ビーンズ、エリンギ、バターを入れ、中火にかける。肉の色が変わるまでよく混ぜながら炒める。
3.肉の色が変わったらレトルトカレーとケチャップを入れ、レトルトに入っている具をつぶしながらさらに炒める。味をみて、辛かったらケチャップを、味を濃くしたい場合はカレー粉を増やす。
4.皿にごはんを盛り、3をかければできあがり。
ポイント
①ピーマン嫌いになる多くの理由は苦味。作り方1の方法を覚えておくとピーマンの苦味が減り、食べやすくなるので、他の料理にも使えます。赤ピーマンがあれば、緑のものよりも苦みが少ないので赤ピーマンを使用するとよいでしょう。
②具材は何でもかまわないので、余った野菜を使い切りたい時にも便利です。
調理時間に余裕があれば、みじん切りにしたエリンギや下処理したレバーを加えたり、型抜きしたスライスチーズをトッピングするのもおすすめです(写真はエリンギのみ入っています)。
③大人の味にするには、ケチャップを加えず、味付きトマトソース(トマト煮に使うもの)とカレー粉、またはお好みの粉末カレールウを加えて作ります。さらにクミンを入れるとカレーの風味が増し、カイエンペッパー(チリペッパー)を加えれば辛みがアップ。
いかがでしたか?前編では、食育の基本や野菜嫌いを克服する方法についてお届けしました。後編では、バランスのよい食事を作る秘訣や時短レシピ、朝食の重要性などをご紹介します。