【絵本の選び方Q&A】絵本作家・えがしらみちこさんに聞く、5つのヒント

【絵本の選び方Q&A】絵本作家・えがしらみちこさんに聞く、5つのヒント

「絵本をどう選んでいいかわからない」「なかなか聞いてくれない」など、絵本の選び方や読み聞かせについて、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。今回は、絵本作家であり、絵本専門店を営むえがしらみちこさんに、絵本の選び方にまつわる5つのお悩みについてお話を伺いました。絵本との出会いが、もっと自由で、楽しくなるヒントがきっと見つかるはずです。

<教えてくれた人>
えがしらみちこさん

熊本大学教育学部を卒業後、絵本作家・イラストレーターに。水彩を中心としたやわらかなタッチと、詩のような言葉づかいで、幅広い世代から支持を集めている。主な代表作に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』(ともに講談社)などがある。静岡県三島市にて絵本専門店「えほんやさん」の代表も務めながら、絵本の制作やワークショップなども精力的に行っている。
https://tenkiame.com

Q1.子どもたちが絵本好きに育つと、どんないい影響があると思いますか?

A.物語や登場人物が、豊かな人生を歩む支えになってくれます。

絵本が子どもに与えるいい影響

「絵本や本に登場する子が、心の中の友だちになって支えてくれると考えています。もしつらいときや大変なとき、『絵本に出てくるあの子だったら、どうするかな?何て言うのかな?』と、物語の登場人物が相談にのってくれるのです。自分自身を、物語の主人公のように捉える感覚って、人生を生きていくうえでとても大切だと思うんですよね。そのためには、たくさんの物語に出会っておくことが必要。いろいろな物語を知っていないと、自分だけのオリジナルの物語を描けないですから。だからこそ、絵本や本を好きになって、たくさん読んでほしいですね」

Q2.どうやって絵本を選んだらいいかわかりません。年齢や成長に合わせた最適な絵本の選び方はありますか?

A.まずお子さんの“興味があること”を意識してみてください。

「『今、何に興味があるのかな?』『どんなことがブームなんだろう?』と、子どもたちをよく観察してみると、普段は見落としてしまいがちなことがポロポロと見えてくるんです。例えば、道ばたに落ちているものをじっと見ているなとか、動物に反応するとか、絆創膏を貼ってもらうことにはまっているなとか。絵本には、そうした繊細な出来事や子どもの気持ちをやさしくすくい上げて、テーマにしているものがたくさんあります。だからこそ、その子の関心に合った絵本は必ず見つかると思います。

大切なことは、『これを読んでほしい』という視点で選ばないことです。ちなみに、絵本に書かれている“対象年齢”は、カレーの『甘口』『中辛』『辛口』のようなもの。あくまで目安なので、年齢にとらわれず、その子の“今”に合った一冊を選ぶことがおすすめです」

Q3. わが子にとって、“特別な一冊”を見つける方法はありますか?

A.その子の好きなものから、自然に生まれてくるものだと思います。

「“好き”という感情は、言葉にしなくても、ついやってしまうことや、やめられないこととして表れると思います。例えば、お絵かきに没頭していたり、広い場所に行くと走り出したり、テレビを見て一緒に踊り出したり…。そんな日常の中に、“らしさ”や興味のヒントが隠れていることがよくあります。どれか一つに決める必要はなくて、いろんな“好き”があっていい。そして、その好きなことにまつわるテーマの絵本と出会えたとき、それはきっと、その子にとって心に残る特別な絵本になるはずです。大きくなると、自分の“好き”に気づきにくくなることもあるので、夢中になっていたことや遊び、集めていたものを、絵本という形で育んであげられたら素敵ですよね」

Q4.本をたくさん読んでほしいなと思うのですが、なかなか絵本を手に取ってくれません。どうしたらいいでしょうか?

A.読んでもらいたい!と考えるのではなくて、“一緒に”楽しみましょう。

「文字が読めるようになったからといって、すぐに一人で本を楽しめるようになるわけではありません。それはお料理の道具や材料を目の前に並べられて、『さあ、料理を楽しんでごらん!』と言われるようなもの。まずは誰かと一緒に作って、作り方を教えてもらったり、見て学んだりしながら、少しずつ自分の力で作れるようになる。読書も同じで、最初は一緒に読む時間がとても大切だと思っています。とはいえ、『いつかたくさん読めるようになってほしいから、無理して一緒に読む』のではなく、絵本の世界そのものを、一緒に『楽しいね』と感じられる時間になったらいいなと思います。

子どもたちは“大好きな人に読んでもらった記憶”とともに、『本って楽しい!』という感覚を自然と育んでいくのだと思います。本をよく読む人というのは、『本を開く行為が楽しい』と知っている人。だからまた、本を手に取るのだと思っています」

Q5.読み聞かせのポイントはありますか?

A.読み聞かせをする人自身が楽しんでいることが大切です!

「読み聞かせでいちばん大切なのは、読む人自身が楽しんでいること。どんなふうに読んだとしても、その人の声で届けられる物語は、世界に一つだけの読み聞かせになります。“大好きな人が楽しそうにしている”、たったそれだけのことが、子どもたちにとっては何よりの喜びであり、特別な時間になるのだと思います」

えがしらみちこさんが考える、絵本の魅力とは?

「絵本は、まだ言葉を知らない赤ちゃんとも、心を通わせることができる、とても素敵な媒体だと思っています。絵本に描かれたやさしい言葉、形や色彩、リズムを通じて、気持ちを伝え合うことができるのです。

実際、私にとって絵本は、いつも子育てに寄り添ってくれた心強い相棒でした。なかなか眠れない夜や、直接言葉で伝えるのがむずかしいとき、絵本がそっと助けてくれた場面は、何度もあります。

そして何より、絵本を開けば、どんな世界にも出かけていける。森の中、深い海の底、宇宙のはるか彼方。読む人の声と一緒に旅をするような、そんな豊かな体験ができるのが、絵本の一番の魅力だと思っています。そして、その声は子どもたちにとって、ものすごく大きな安心感があると思うんです」

イラスト:えがしらみちこ  取材・文:阿部里歩

あわせて読みたい

前へ
次へ

新着記事

前へ
次へ