元プロ野球選手に聞く!人気の習い事「野球」で身につく力・メリットとは?

元プロ野球選手に聞く! 人気の習い事「野球」で身につく力・メリットとは?01

子どもの習い事の中でも根強いスポーツである野球。野球の特徴や魅力、子どもの頃に野球を経験することで身につく力について、元プロ野球選手として活躍した、札幌国際大学教授の阿井英二郎さんにお聞きしました。

<教えてくれた人>
阿井英二郎さん
阿井英二郎さん
札幌国際大学スポーツ人間学部教授。人材育成アドバイザー。元プロ野球選手。現役時代は投手として東京ヤクルトスワローズなどで活躍。引退後は、つくば秀英高校、川越東高校の野球部監督、北海道日本ハムファイターズの一軍ヘッドコーチも務めた。

野球だけの魅力、サッカーや他の球技との違いは?

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野球は「考えるスポーツ」「“間(ま)”のスポーツ」と言われるのをご存知ですか?
他の球技と比べて、試合の中でプレーしている時間=ボールが動いている時間が極端に短いのが野球の特徴です。
たとえばサッカーやバスケットボールの場合、試合が始まると速いテンポで展開しますが、野球は1球ごと、1打席ごと、1イニング(※)ごとにゲームが途切れるため、“間”が生まれます。“間”があるということは、次のプレーに備えて考える時間があるということ。それをいかにうまく活用して作戦を考えるかというのが野球の難しさであり、面白さなのです。

また、攻撃と守備を交代しながら試合が進むので、チームメイトや相手選手の動き、全体の状況や変化を観察できる時間があるというのも、野球ならではです。

※野球は攻撃と守備を1回ずつ交代で行い、1回分をイニングといいます。

野球で身につく力やメリットとは?

野球を習うと身につくことの一つが「考える力」。先に述べたように、野球は「間があるスポーツ」だからこそ、子どもは「どう打てば勝てるか」「どこに投げればいいのか」など自分で考えるようになっていくのです。

野球では守備をしている時、ボールが自分の所に飛んでくる状況は中々ないもの。時には試合中、1度もボールが飛んでこないこともあるでしょう。でも、その間ずっと「ボールが飛んできたら、どう動けばいいか」「どんなふうにカバーすればいいか」などを考えていなければいけません。そのため、自然と考える力が養われ、集中力も身についていくでしょう。
ベンチから選手の動きや試合全体を観察することにより、気づく力や広い視野が養われるのも、野球ならではです。

また、野球は走る、投げる、打つ、捕るなど、多様な動作が求められるので、いろいろな身体の使い方ができるようになり、バランスよく基礎体力が身についていきます。ただし、肘や肩など関節も多く使うため、成長期は過度な練習は控えたほうがいいでしょう。

失敗から育まれる力とは?

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野球はプロの世界でも10回に3回ヒットを打てれば超一流という、うまくいかない場面も多いスポーツ。打席で打ち損じてアウトになったり、守備でエラーをしてしまったりすることは、野球ではよくある光景です。たとえエラーや失点をしても、メンバー全員で声を掛け合い、改善策を一緒に話し合えるのは、チームスポーツの良さでもあります。

また、失敗して悔しい気持ちがあれば、さらに練習し、もっと頑張ろうというエネルギーに変えることができるのです。この時に大事なのは、保護者や指導者が「失敗しても大丈夫なんだよ」というスタンスで見守ること。そうすれば、子どもは野球を嫌いになることはなく、自分で練習の内容を考えたり、自分の弱点を克服する工夫をしたりなど、主体的に取り組むようになるでしょう。
野球をしていれば、失敗から自分に何が足りないかを分析し、それを克服するために必要なことを考えて行動する、そんな主体性も自然と身についていくはずです。

主体性を大事にする指導に

少年野球の指導に、どんなイメージを持っていますか?
勝利至上主義の監督が多そう、ミスをすると怒られそう…などと思っている方もいるかもしれません。

野球の指導は、時代とともに変化しています。
たとえば、2023年にWBC(ワールドベースボールクラシック)で侍ジャパンを優勝に導いた栗山英樹監督や、同年夏の甲子園を制した慶應義塾高校の森林貴彦監督は、選手の主体性を重んじる指導方針が共通しています。練習では自ら考えて課題と向き合う自主練習を促し、「指示を待つ」のではなく「自ら行動する」姿勢を求めているとのこと。
こうした考え方はプロや高校野球だけでなく、少年野球の世界でも広がっていると言われています。

また、栗山監督や森林監督は、ミスは当たり前だと言い、それにチャレンジしたことを褒めるそうです。少年野球でも、ミスこそ成長するためのチャンスと捉え、安心してミスできる環境をつくってあげることが、指導者の大事な役目だと考えられるようになってきています。

練習時間が長いのはウソ!?

野球は、バッティングや守備、盗塁、連携プレーなど、さまざまなことが求められるので、これまでは、どうしても練習時間が長くなりがちでした。とくに連携プレーが大事になってくるので、それに時間を費やすケースが多かったのです。

けれど、かねてからアメリカのメジャーリーグでは、連携プレーの練習に時間をかけることはほとんどなく、個人の守備の能力を伸ばして、それをつなげていくのが主流です。

日本でも、今はそうした傾向になっているため、プロ野球や高校野球はもちろん、少年野球も練習時間は昔に比べると短くなり、個人の能力を伸ばすことが重視されてきています。

プレッシャーに強い・弱いは関係ない

野球は、バッティングや守備で個人にスポットが当たる場面も多いので、プレッシャーに強い子のほうが向いていると思われがち。でも、プレッシャーに強い・弱いは関係ないと言っていいのではないでしょうか。
なぜなら、多かれ少なかれ人は誰でも緊張するからです。大事なのは、自分がどういう場面で緊張するのか、その時にテンションが上がるのか・下がるのかを知っておくこと。「今は、こういう状態なんだ」と理解することを習慣にしていけば、脳がそれに反応し身体も動いていくようになるのです。

子どもが野球を習い始めたら、親が心がけること

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野球を習い始めると、時には試合に出られなかったり、負けて落ち込んだりすることもあるでしょう。でも、子どもにとってはそれも貴重な経験だと捉えて、保護者も子どもと一緒に乗り越えていこうという姿勢が大切です。

たとえ試合に出られなくても、出場している選手をベンチから観察して自分にないものを発見し「○○君はここがすごいんだよ」と言えるような子どもは、いざ自分がグラウンドに立った時に力を発揮できるのです。そうした他者を尊重する姿勢は、将来の人間関係や社会生活においても重要なスキルになるでしょう。

野球が上手くなるためには、まずは子どもが自ら好きな練習を見つけてやってみることが大切。自分で工夫して練習するようになったら、保護者がいろいろなやり方を提案したり、子どもが選べる環境を用意したりしてあげるといいでしょう。その時、「どうしてこれを選んだの?」「なぜこの練習が必要なの?」と聞いてあげると、子どもは自分の考えを言葉にする練習になり、保護者も子どもの考えや興味を持っていることをより理解できるはずです。

子どもが野球を辞めたいと言った時は、少しでも時間をかけて話し合いましょう。低学年でも辞めたいかどうかの判断はできるので、「こういう選択肢もあるけど、どうしたい?」などと問いかけ、子どもが本当に野球を辞めたいのかどうかを確かめる時間を作ってあげることが大事です。

習い事を選ぶうえで大切なのは、子どもがどういう人に育ってほしいかを家庭で話し合って、「だったら、これが面白いのでは?」と幅広い選択肢を持つことです。野球を選ぶのであれば、子どもの成長に必要なことを“野球をやったら学べる”と考えるのではなく、“野球から学んでみよう”というニュートラルな感覚で始めるといいのではないでしょうか。

取材・文:サカママ編集部 取材協力:阿井英二郎(札幌国際大学教授、人材育成アドバイザー)

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