絵本は、子どもたちの感性を育むだけでなく、読み聞かせを通して親子が自然に言葉を交わし、気持ちを分かち合える大切な時間をつくってくれます。ページをめくりながら「どんなふうに見える?」「楽しいね!」と話すことは、家族の絆を深めてくれるひとときに。今回は絵本作家であり静岡で絵本専門店を営む、えがしらみちこさんに、親子のコミュニケーションを育む、「家族の絆が深まる絵本」をご紹介いただきました。
<教えてくれた人>
えがしらみちこさん
熊本大学教育学部を卒業後、絵本作家・イラストレーターに。水彩を中心としたやわらかなタッチと、詩のような言葉づかいで、幅広い世代から支持を集めている。主な代表作に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』(ともに講談社)などがある。静岡県三島市にて絵本専門店「えほんやさん」の代表も務めながら、絵本の制作やワークショップなども精力的に行っている。
https://tenkiame.com
ちびゴリラの成長を通して、家族の絆を体感
『ちびゴリラのちびちび』
「ジャングルに暮らす、小さくてかわいいゴリラのちびちび。ちびちびは家族やジャングルの動物たち、みんなから愛されています。やわらかなタッチとカラフルな色使いでちびちびが生き生きと描かれ、ページをめくるたびに自然と笑顔に。読み進めるうちに、まるで自分もジャングルの仲間の一員になったような、やさしい気持ちに包まれます。子どもたちはもちろん、大人も無条件の愛に触れ、温かな気持ちになれるはずです」
『ちびゴリラのちびちび』
作:ルース・ボーンスタイン 訳:岩田みみ (ほるぷ出版)
思わず親子でスキンシップがしたくなる!
『くっついた』
「きんぎょさん、あひるさん、ぞうさん、おさるさん…動物たちが次々に登場し、それぞれのクチバシ、鼻や手を『くっついた』とぴったんこ。リズミカルに展開するスキンシップの連鎖に、自然と笑顔がこぼれます。読み終えたあとは、絵本の真似をして、私たちも親子でスキンシップがしたくなってきます。“くっつくことって楽しい!そして、なんて温かくて幸せなんだろう”と素直な喜びを教えてくれる愛おしい一冊です」
『くっついた』
作:三浦 太郎 (こぐま社)
冒険を通して知る、家族の存在とおうちの温かみ
『どろんこハリー』
「黒いぶちのある白い犬ハリーは、お風呂に入ることだけが大っ嫌い。ある日、“お風呂に入れられる!”と察したハリーは、ブラシをくわえて外へ逃げ出します。ブラシを埋めて隠したら、外で泥だらけになるまで好き放題遊ぶのです(お風呂嫌いな子どもたちは共感の嵐なはず!)。ハリーが逃げる疾走感と、どろんこを綺麗にしてもらえる爽快感、最後は家族のなかで眠る安心感、いろんな気持ちがギュギュギュッと詰まっています」
『どろんこハリー』
文:ジーン・ジオン 絵:マーガレット・ブロイ・グレアム 訳:わたなべ しげお (福音館書店)
息を吹きかけるたびに、親子の心が近づく
『ふーってして』
「絵本の中で何度もくり返される『ねえ ふーって して』という語りかけのやさしさに包まれます。思わず絵本にふーってしてみると、色水がニョキニョキ伸びてって、太陽や草、ハリネズミの針に変身します。ぽとりと落ちた色水が、こんなにもカラフルで生き生きとした世界に変化するなんて……!創造するって楽しいと感じさせてくれる絵本です。絵本に向かってふーって息を吹きかけても楽しめるし、読んだ後で実際に工作してみるのもおすすめです」
『ふーってして』
作:松田 奈那子(KADOKAWA)
なんだろう?と一緒に考える時間が楽しい!
『やさいの おなか』
「野菜の“おなか”というのは、野菜を切った時に見える断面図のこと。この絵本では、野菜の断面図がまずモノクロで描かれています。普段見慣れているはずのものでも、“色がないとこんなに違って見えるんだ!”と、大人にも新鮮で刺激的な絵本です。モノクロでみると、まるで美しい家紋を眺めているよう。絵本を読んだあとは、ごはんの支度のときに野菜の断面を切って見せてあげると、さらに楽しいです。身近な野菜に親しみや好奇心が深まりますよ」
『やさいの おなか』
作・絵:きうち かつ (福音館書店)