<教えてくれた人>
フリージャーナリスト 中野円佳さん
中野円佳さん
東京大学教育学部卒、日本経済新聞社入社。2014年、立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年4月よりフリージャーナリスト、 東京大学大学院教育学研究科博士課程修了 。厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』等。キッズラインを巡る報道でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞。現在シンガポール在住、2児の母。


いまだに日本の社会は
「パパが養い、ママは専業主婦」が大前提

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女性活躍推進法の制定や働き方改革政策など、この10年の間に女性が社会で働くことを後押しする動きが徐々に広がりつつある日本。一方、出産前に仕事をもっていた女性のうち2010〜2014年に第1子を産んだ人の46.9%が出産後に専業主婦をしているという調査結果※1も出ています。

中野さん曰く、「共働きの世帯数が専業主婦世帯数を追い抜いてから20年以上経っているにもかかわらず、まだワンオペ育児という言葉が流行っていたり、諸外国と比べても日本は家事・育児の負担がまだまだ女性に偏っています。家事・育児のために女性が働くことを中断せざるを得なかったり、働き続けていても時間が短くなったり、再就職となるとパートタイムなどで子どものスケジュールに合うものを探さざるを得ない状況です」。

確かに、6歳未満の子どもをもつ専業主婦の夫の家事・育児時間が15分未満という割合が約70〜90%という調査結果※2もあり、夫は家事・育児にかかわらないことが当たり前という現実が見て取れます。

さらに、「夫が家族を養う分として『家族手当』が支払われる高度成長期から続く給与制度や、『扶養控除』『配偶者控除』といった税制制度が残っているなど、日本社会ではいまだに『妻は家庭で専業主婦として家事・育児に専念し、外で働かない』という考えが大前提になっています」と続けます。こうした社会構造が、ママの再就職を叶えるのに大きな壁になっていると考えられます。

※1国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」2015年より
※2総務省「平成28年 社会生活基本調査」より


家事レベルの高度化も
再就職を難しくしている一因!?

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さらに、ママの再就職を困難にしている要因は意外なところにもあるようです。

「ママ友の家がホテルのようにピカピカで、本当に子どものいる家庭かと驚いたケースは一度や二度ではありません。また、どんなに忙しくても一汁三菜のおふくろの味にこだわったり、手の込んだキャラ弁を作ったり、インスタ映えする丁寧な盛り付けにするなど、女性自身が家事をどんどん高度な次元にしてしまっている状況と言えるでしょう。雑誌やSNSを見て、みんながやってるから私もやらなきゃではなく、うちはうち、外は外と割り切り、特定の縛られた考えから客観的に距離を保つことも不可欠です」と中野さん。

再就職のために家事・育児の負担を減らしたいと思いつつ、どこか本末転倒なこの現状に思い当たる人も多いのでは? 自分自身はもちろん、パパにも理解や協力を頼みながら家事のハードルを下げていき、負担をできるだけ減らす意識を夫婦や家族で共有する必要がありそうです。


再就職が生みだす
夫婦の平等なパートナーシップ

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では、ママが再就職をすることで、パパにはどのようなメリットがあると考えられるのでしょうか。

「妻が専業主婦だと必ず夫や家庭は幸せかというと、そんなことは決してありません。近年は男性でも非正規雇用が増え、企業の倒産や給与が上がらないことも稀ではなく、不安定な状況にあると言えます。でも、もし夫婦2人で働くことになれば、世帯収入が上がり、家計も楽になるのです。さらに、夫は自分だけが家族を養わなければいけないというプレッシャーから解放され、本来やりたいと思っていた仕事に思い切って転職やチャレンジができたり、子どもと一緒に過ごす貴重な時間を確保できたりするなど、いくつものメリットが考えられるでしょう。妻にしても、専業主婦の中には子育てを終えた後に一過性の抑うつ症状『空の巣症候群』になる人もいるようですが、再就職することで社会とのつながりが生まれ、家族やSNSとは異なる承認欲求を得ることができ、自分の生き方に自信がもてるようになります。何より金銭的に夫に養われているという引け目を感じることがなくなり、夫に対して意見を言えるようになるなど、平等なパートナーシップを築けるようになるでしょう」。

確かに、お互いを理解し尊重し合う平等なパートナーであることは、夫婦の理想の形の一つと言えます。その良好な関係をつくるのに、ママの再就職が一役買うという訳です。


夫へアピールしながら
まずはゆるゆると始めてみよう!

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まだまだ女性の再就職に課題の多い社会ではありつつも、自分やパパの家事・育児への捉え方を変えることや、夫婦のあり方についてパパと共に前向きに取り組むことで、再就職は決して難しいことではなく、より意味のあることになるでしょう。

そこでまずはパパに、再就職が家族のメリットにもなるということをしっかりアピールすることからスタートしましょう。

「専業主婦の期間が長ければ長いほど、不安要素ばかりが頭にあって再就職に向けて動けないことも多いと思うので、たとえばボランティアの延長で近所のイベントで売り子の手伝いをしてみたり、インターネットで業務委託(クラウドソーシング)の仕事に挑戦してみたり。いきなり0から100に飛ぶのではなく、リハビリの感覚でゆるゆると始めてみるといいでしょう」。

こうした再就職へのハードルを下げる一つひとつがやがて実を結び、自分の理想とする働き方や暮らしを実現してくれるでしょう。


前編では、女性の再就職における日本の現状と課題、再就職がもたらすメリットについて中野さんに教えていただきました。後編では、実際に再就職への第一歩を踏みだすとき、家庭でどんな準備をしたらいいか、パパへの相談プロセスなどについて具体的にアドバイスいただきます。(後編の公開は11月上旬を予定)