佐藤ママに聞く、子育てがラクになる“声かけ”の方法
Vol.4 こんなときはどう声をかける?〜よくある日常シーン〜

セクションタイトル

<教えてくれた人>
佐藤亮子さん

佐藤ママ

津田塾大学卒業後、地元大分県内の私立高校で英語教師として勤務し、結婚。その後、奈良県に移り、長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校、長女は洛南中学・高等学校を経て、東京大学理科3類に進学。現在は4人とも医学の道に進む。その育児法や教育法が注目を集め、全国で講演活動を行うほか、『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)ほか著書多数。


一筋縄では解決しないことも起こる子どもとの毎日。声かけに関しても、“注意する”“褒める”という2択だけではありません。そこで、「こんなときは何と声をかけたらいいの?」と悩む読者から寄せられた4つのシーンをピックアップ。佐藤さんの「親子の信頼関係を築き、子どもの自己肯定感を高めるための声かけ」という考え方を軸に、皆さんのご家庭の場合を想像しながら読んでみてください。


<声かけのお悩み1>
朝が苦手な子どもに
最適な声のかけ方は……?

毎朝、小3の息子を起こすのに一苦労しています。「○○、起きなさい! いつまで寝てるの!」と何度も大声をかけ、やっと起きてきます。その上、「おはよう」も言わず、不機嫌な様子で朝食をとり、登校していきます。1日のスタートの朝からイライラして、家の中も険悪な雰囲気になりがちです。

<佐藤ママの声かけ>
「○○ちゃん、起きなさい~」と穏やかに声をかけ、
「眠いけど、今日も頑張ろうね」と笑顔で送りだす。

子育て 日常シーンでの声かけ 朝の挨拶

■ポイント1
どならず、にこやかに

「朝を気持ちのいいスタートにできると、子どもはやる気に満ちた明るい1日を送ることができる上、親もストレスを抱えずに済みます。どなったり大声を出すのではなく、いつも穏やかに接することを心がけましょう。そしてVol.3でもご紹介しましたが、親の態度はその場の状況に左右されることなく、常に一定が基本。名前で呼ぶときにも、普段通りにし、叱るときだけ呼び捨てにするようなことは避けましょう。 朝、ニコニコしながら明るく送りだすのは、親の大切な役目です。また、挨拶をしないということですが、そんなときこそ親がきちんと明るく挨拶をしたらいいと思います。子どもが眠いのであれば、時には挨拶がないことも見逃してあげましょう。子どもの態度にイライラしないことも子育ての基本です。まずは親が見本となる態度を示してあげられるといいですね」

■ポイント2
声かけだけで起こそうとしない

「成長期の子どもが眠いのは当たり前。子どもが1人で起きることは期待しない方が無難です。でも、登園や登校のためには決まった時間に起きる必要がありますから、無理なことを子どもに期待するのではなく、少しでも機嫌よく起きられるように親が工夫しませんか?私は声をかけても子どもが起きてこないときは、布団を半分めくったり、足を温めるために靴下を履かせたりしていましたよ。そうすると子どもは自然に目を覚まします。目覚めたらまず一番に、お茶を飲ませるのもおすすめです」

■ポイント3
起きられない要因を考える

「そもそも朝起きられないのは、夜寝るのが遅く、睡眠が足りていないからかもしれません。宿題などが終わらないためになかなか寝ようとしなくても、就寝時間はしっかり守ることが大事です。宿題が終わるまでダラダラと起きているのを許すより、決めた時間になったら親が強制的に電気を消すなどするといいでしょう。もし、前の晩にやり残したことがあったら、次の日の朝は気になるので、きっと自分で早く起きるはずです。就寝時間を守らないといけないと思うと、子どもはその時間までに急いで宿題を済ませるようになると思いますよ」


<声かけのお悩み2>
子どもに集中力がなく
勉強が長続きしません……

小1の息子は宿題をしていても、いつの間にか絵を描き始めたり、集中して取り組めません。いつも意識が散漫で途中で飽きてしまい、「集中してやりなさい」と言っても効果がありません。

<佐藤ママの声かけ>
「問題が難しいから、集中できないの?」と声をかけ、
一緒にやる。

子育て 声かけ 子どもの勉強の様子を見る母親

■ポイント1
しばらく様子を見た後にリセット

「小1は、まだまだ何かに集中することは難しい年頃です。途中で別なことに集中し始めたら、しばらくそばで様子を見ておきましょう。10~20分ほど違うことをしているのを見守り、『それ、面白そうだね。でもちょっと1回ストップして、宿題の続きをしようか』と声をかけ、再び宿題に取り組むように促すのがいいでしょう」

■ポイント2
一緒に集中できない理由を探る

「そもそもなぜ集中できないのかを考えてみると、子どもが問題を解けないからという理由がほとんどです。わかるならどんどんやろうとするでしょ? 問題がわからないから集中できず、注意力散漫になっているわけですから、集中だけしたからといって、わからない問題が解けるようにはなるとは限りません。要するに、その問題に関しての実力不足が原因なので、『どこが難しいのかな?』と親が一緒に考えてあげましょう。理解の足りないところはヒントを与えながら、宿題を手伝ってあげて、少しずつ集中する時間を増やすことがいいと思います。そうすれば、取りかかったら中断しないで終わらせることができるようになると思います」

■ポイント3
何かをやり続ける経験を

「この悩みと同様の相談をよくいただきますが、これには根本的な問題があると思っています。子どもは小さなときは遊びが面白く、話しかけても気がつかないほどに没頭して遊んでいることがあります。そのようなときに、そばを通りながら『それが済んだら片づけなさいよ』と声をかけた経験はありませんか?せっかく遊びに集中しているのにそのような言葉をかけられると、子どもは夢から覚めてしまいます。要するに、親が子どもの集中力を断ち切っていることになるわけです。このようなことを続けていると、子どもは何かをやり続ける経験ができなくなります。親が集中してほしいもの(つまり勉強)だけに子どもを集中させることは、親の勝手ですね。遊びに集中できる子は、勉強にも集中できるのです。小さな頃から、子どもが集中しているときに、親の都合で決して邪魔をしないこと。気持ちよく集中できることが、のちの勉強への集中につながります。危険なことや正しくないことでなければ子どもがしていることを中断させずに、『へぇー、すごいね!』と親が面白がる態度を見せることが大事です」


<声かけのお悩み3>
やりたいと始めた習い事なのに
行きたくないと言いだして困っています……

娘は年長になり、友達がスイミングスクールに通い始めたのを見て、自分もやりたいと言いだしました。私も小学校に入ったら水泳の授業があるので、賛成して通わせ始めました。ですが、本人が希望したにもかかわらず、3ヵ月で「行きたくない」と言いだし、毎回「行きなさい!」と無理やり行かせている状況です。

<佐藤ママの声かけ>
命令口調ではなく、「練習後に寄り道しよう」など
楽しい提案とセットで声かけをする。

子育て 声かけ 習い事

■ポイント1
子どもの言葉にこだわりすぎず、親もフォローする

「4人の子どもを育てた私の経験から言うと、個人差がありますが、9歳以下の子どもは考え方や言動が幼児に近く、幼い部分がまだたくさんあります。しかも、このお子さんの場合はまだ年長児で、親は子どもの発言を重要視しすぎる必要はないと思います。子どもは、なんとなくいいなと思って『行きたい』と言っただけですから、幼い子どもには責任はありません。親御さんも小学校で役に立ちそうなので賛成したわけです。水泳の授業には役に立つことははっきりしていますので、ここは親が覚悟してフォローすることも私は必要だと思います」

■ポイント2
最低半年は続けることを目指す

「習い事は実際に通わせてみると『好きじゃない』『合わない』こともよくあります。でも次第に楽しくなることもあるので、短い期間で判断せず、できたら最低半年は続けた方がいいでしょう。そして続けてみて、子どもがどうしても楽しそうでないなら辞めさせてもいいかなと思います。親は『やっておくと得だよ』『頑張らなきゃダメでしょ』と声をかけがちですが、その声かけがプレッシャーになって、子どもが親に素直に気持ちを言えないような環境を作ってしまうこともあるので気をつけたいですね」

■ポイント3
命令ではなく、楽しいこととセットで

「『行きなさい!』と強く命令するように声をかけても、子どもは嫌な気持ちになるだけで、親子の信頼関係も損ねてしまいます。『楽しいご褒美をあげるから、嫌いなスイミングに行こう』と誘うのではなく、初めから『楽しいこと+スイミング』と決めたらいいと思います。そもそも、スイミングの後は疲れておなかが空きますから、わが家もスイミングの後の一番の楽しみは練習後に寄り道するファストフード店でした。今でも、スイミングとハンバーガーはセットでいい思い出になっているようです。『何かをしたらご褒美で』というのは親が押し付けることになり、子どもにはいい影響を与えません。『今度、大きなプールに遊びに行こう』や『夏は海に泳ぎに行こう』でもいいですね。子どもが前向きな気持ちになれるような提案の声かけを考えてみてください」


<声かけのお悩み4>
好き嫌いの多い子どもたち。
何と声をかけたら食べてもらえますか……?

年長と小2の子どもたちに食べ物の好き嫌いが多く困っています。調理を工夫しているつもりですが、残されたり食事途中に遊びだしてなかなか進まなかったりすると、「せっかく作ったのに」とイライラして、つい叱ってしまいます。「好き嫌いすると大きくなれないよ!」と声かけしても効果はありません。

<佐藤ママの声かけ>
どんなときでも食事は楽しくを忘れずに、
「食べたいものだけ食べてね。感想を聞かせて」と声をかける。

子育て 日常生活での声かけ 朝ごはん

■ポイント1
「せっかく作ったのに」は言わない

「気をつけたいのは『せっかく〜したのに』という言葉は使わないことです。親が子どものために食事を作ったり、世話をするのは当然のこと。『せっかく』と言い続けると、ママの顔色ばかりを伺う子どもにになってしまうかもしれません。また、食べた感想を尋ねることも多いかと思いますが、『これ、おいしい?』と聞くと、子どもは「おいしい」としか言えませんね。子どもが自分の意見を率直に言いやすいように、『今日の料理はどう?』というオープンクエスチョンをおすすめします 」

■ポイント2
食事の適量や好みは子どもによって異なる

「私の経験からですが、食べる量や好き嫌いは子どもによってかなり異なると思います。きっとそれぞれもって生まれた遺伝子レベルの話ではないかと思うほど、同じように育てたのに違うのです(笑)。私は好き嫌いもその子どもの個性だと思い、大事にすることにしていました。肉が嫌なら魚に、野菜も別の野菜に置き換えればいいんです」

■ポイント3
残したり遊びだすのはお腹がいっぱいの証

「子どもが残したり途中で遊び始めるのは、もうお腹がいっぱいになったサインだと私は思っていましたので、『食べたいだけ食べたら残していいよ』と声をかけていました。食事時間が楽しくないと、そもそも食べたいという気持ちを損ねますし、消化にもよくありません。無理して食べさせることのないように、いつも大らかな気持ちでいてあげてほしいなと思います」


4話に渡ってご紹介してきた子育てがラクになる子どもへの“声かけ”の方法、いかがでしたか? 佐藤さんは、「親子がいつも仲良く、家の中は子どもがリラックスして過ごせる場であることが子育てには何よりも大事」と言います。そして、声かけはそのためのきっかけの1つになるそうです。ぜひ佐藤さんからいただいたアドバイスを生かして、今日からあなたもご自身の理想の子育てに向けて、適切な声かけを実践してみてください。

Vol.1 声かけが子育ての最強の武器になるのはなぜ?はこちら
Vol.2 こんなときはどう声をかける?〜子どもを注意するとき〜はこちら
Vol.3 こんなときはどう声をかける?〜子どもを褒めるとき〜はこちら

佐藤ママに聞く、子育てがラクになる“声かけ”の方法
Vol.3 こんなときはどう声をかける?〜子どもを褒めるとき〜

セクションタイトル

<教えてくれた人>
佐藤亮子さん

佐藤ママ

津田塾大学卒業後、地元大分県内の私立高校で英語教師として勤務し、結婚。その後、奈良県に移り、長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校、長女は洛南中学・高等学校を経て、東京大学理科3類に進学。現在は4人とも医学の道に進む。その育児法や教育法が注目を集め、全国で講演活動を行うほか、『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)ほか著書多数。


「褒めて伸ばす」とはよく言いますが、褒めることは簡単なようでいて、じつはとても難しいもの。子どもを褒めるとき、あなたはいつも何と声をかけていますか?「偉いね!」「すごいね!」「がんばったね!」……子どもを褒めてあげたいという想いは同じでも、佐藤さんが勧める「子育てにおいて最強の武器になる適切な声かけ」は、いったいどのようなフレーズなのでしょうか。まずは佐藤さんに、“子どもを褒めるとき”の声かけの基本姿勢について教えていただきます。

―声かけの基本1―
褒める理由を具体的に伝える

「子どもは褒められた理由を分かっていないときがあるので、その理由を具体的に伝えることが大事です。たとえば、『前にできなかった◯◯ができるようになってすごいね!』と褒めてあげると、『じゃあ、今度は別の◯◯もできるようになろう!』という前向きな気持ちや行動につながるでしょう。ただし、この褒め方は普段から子どもが苦手なことを、親がきちんと観察して把握していなければできません。子どもは親がいつも自分を見守っていてくれると感じると、親への信頼感が増します。Vol.1でもご紹介した通り、親子間の信頼関係は子育てを円滑に行うためには不可欠です。ぜひこの褒め方を意識して実践してみてくださいね」

―声かけの基本2―
「偉いね」は使わない

「子どもを褒めるときに『偉かったね』と声をかけがちですが、私は使わないようにしていました。一般的に、会社の社長などを“偉い”と形容することがありますよね。でも、社長だから偉いというのは正しいのでしょうか? そこには社会的ステータスや上下関係が自分よりも上に感じるから偉いんだという意味合いが含まれていて、他人と自分を比較している言葉です。もし何かと比較するなら、自分自身の中でどれだけ成長したかを比較するべきです。私は子どもに人を見かけや肩書きで判断するようにはなってほしくなかったので、褒めるときは『偉いね』ではなく『すごいね』を使うようにしていました」

―声かけの基本3―
失敗したときこそ絶好の褒めチャンス

子どもを褒める時 声かけ 失敗して落ち込んでいる子ども

「どんなにがんばっても、結果が伴わないこともあります。失敗して落ち込んでいる子どもに『できなかったんだ』と追い打ちをかけるのではなく、そういう場合こそ、じつは褒めて伸ばすチャンスです。たとえば、習い事で練習をとてもがんばっていたけれど本番で失敗したとします。そういうときには、『練習よくがんばったね。あと少しだったね』と褒めてあげてください。そして、『あなたなら次はできるよ。またがんばって練習しよう』『次は◯◯を練習してみよう』など、次の行動につながるアドバイスをしましょう。すると子どもは自己肯定感を高め、『またチャレンジしてみよう』という気持ちになります。基本1でも触れましたが、親子間の信頼関係が成り立っていればなおさら、『ママやパパの言うことを信じれば大丈夫。やってみよう』という気持ちになってくれますよ」


次に、読者から寄せられた声かけの悩みに、佐藤さんならどう声をかけるのか、またそのポイントについて聞きました。

<声かけのお悩み>
テストの結果にやる気をなくした娘。
もう一度やる気にさせる褒め方は……?

算数が苦手な小3の娘。テストのために毎日勉強をして100点を目指しました。でも結果は70点。前よりも点数は上がったのですが、娘には納得のいく結果ではなかったようで、それ以降はやる気をなくしてしまいました。「70点も取れたのだからよかったじゃない」と褒めたのですが、この場合はどう褒めるべきだったのでしょうか?

 

<佐藤ママの声かけ>
「毎日勉強をがんばったから前よりよくなったね」と
笑顔で声をかけ、間違った問題を一緒に見直す。

■ポイント1
点数ではなく、前よりよくなったことにこだわる

「このお悩みの場合、70点という点数にお子さん自身が納得していないようですね。きっと、いつもよりも勉強をがんばったのだからもっと点数が取れたはず、と悔しいのだと思います。ですので、親もその気持ちを察知して、『70点』という点数にこだわらないようにしましょう。大事なのは『前よりよくなった』こと。その部分をポジティブに褒めてあげるといいでしょう」

■ポイント2
毎日勉強したという過程を笑顔で褒める

子どもを褒める時 声かけ 過程を褒める

「結果だけではなく、過程を褒めることも大事です。毎日テスト勉強をがんばっていたということなので、そこを何よりもまず褒めてあげましょう。そして、そのときはぜひ笑顔で声をかけてあげてください。すると落ち込んでいた子どもの心も明るくなり、前向きな気持ちに変わっていくはずです」

■ポイント3
間違った問題を見直しする

「ひとまず子どものがんばりを褒めた後に、『間違えたところを見直そうか』と私なら声をかけます。どこを間違えたのか具体的に精査することが大事です。たとえば、『もう少し丁寧に文字を書いていたら点数になっていたかもね』などと具体的に声をかけます。とくに、『間違えたけれど、惜しい間違いだった』と子ども自身が思えるような気持ちを上げる声かけができると、次に向けてやる気を出せるでしょう。そして、『これなら次はできるね、あなたなら大丈夫』と自信をもたせましょう」

■ポイント4
「一緒にやろう」と声をかける

子どもを褒める時 声かけ 一緒にやろうと声をかける

「このお子さんの場合、算数に苦手意識をもっていて、さらにがんばったのに結果が出ずに自信をなくしている状態ですよね。このような場合は、勉強するときに『一緒にやろう』と声をかけてあげるといいでしょう。Vol.2のポイント2でもご紹介しましたが、子どもが取り組むときには親がそばにいて見てあげると子どもはやる気を出します。とくに苦手としていることに取り組もうとしているときはなおさらです。ぜひ根気強く続けてみてくださいね」

■ポイント5
どんなときも親の態度は一定にする

子育て 声かけ 親の態度

「褒めるときと注意するときの親の態度を同じにしましょう。注意するときは名前を『◯◯!』と呼び捨てしているのに、褒めるときだけ『◯◯ちゃーん』と猫なで声で呼んではいませんか? 子どもは名前の呼ばれ方だけでも親の心を見抜いていて、下心が見え見えです。これが繰り返されると、褒められようと親の顔色ばかりを気にするようになってしまいます。親の気分で声かけを変えるのは、相手が自分の子どもだからいいだろうという甘えがあるからで、子どもに失礼です。『子どもは身体が小さな大人』だと考えて、親子の信頼関係を築くためにも、親の態度はいつも一定にしましょう」


いかがでしたか? “子どもを褒める”ことの根底には、子どもの自己肯定感を高め、何事にも前向きな気持ちで挑戦してほしいという親心があるはずです。そのことを常に冷静に意識していられると、適切な褒め方ができるのかもしれません。次回Vol.4はいよいよ最終回、11月中旬に公開予定です。読者から寄せられた日常で起こったさまざまな声かけの悩みについて、佐藤さんにアドバイスをいただきます。お楽しみに。

Vol.1 声かけが子育ての最強の武器になるのはなぜ?はこちら
Vol.2 こんなときはどう声をかける?〜子どもを注意するとき〜はこちら
Vol.4 こんなときはどう声をかける?〜よくある日常シーン〜はこちら

佐藤ママに聞く、子育てがラクになる“声かけ”の方法
Vol.2 こんなときはどう声をかける?〜子どもを注意するとき〜

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<教えてくれた人>
佐藤亮子さん

佐藤ママ

津田塾大学卒業後、地元大分県内の私立高校で英語教師として勤務し、結婚。その後、奈良県に移り、長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校、長女は洛南中学・高等学校を経て、東京大学理科3類に進学。現在は4人とも医学の道に進む。その育児法や教育法が注目を集め、全国で講演活動を行うほか、『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)ほか著書多数。


親が子どもへの声かけで思い悩む代表的なシーンといえば、“子どもを注意するとき”。感情的になりやすいシチュエーションの場合もあり、思わず発してしまった自分の言葉に後悔した経験をもつ人も多いのではないでしょうか。まずは佐藤さんに、“子どもを注意するとき”の声かけの基本姿勢を教えていただきます。

―声かけの基本1―
高圧的な言い方をしない

「注意するときに、子どもが立ち直れなくなるくらいに『ダメでしょ!』と強い口調で叱ると、子どもが傷つきます。ですので、私はできるだけ明るい口調で注意することにしていました。親から高圧的な態度で否定されると、小さな子どもは特に自分の存在自体を否定されているような気持ちになりますし、家の中の空気も険悪になったりしますよね。Vol.1で紹介したように、家は子どもが安心して過ごせる場所にしてほしいと思います」

―声かけの基本2―
子どもが素直に聞けるような雰囲気をつくる

「子どもが親の忠告を聞かずに勝手なことをして失敗したときであっても、『だから言ったでしょ!』と責めるように怒ることは避けましょう。基本1と同様に、そんな強い声かけではなく、『ママの言ったとおりでしょ』という気持ちで『ほらね〜』と笑いながら言えば、子どもは素直に『そうだ、ママの言うとおりになった。次は気をつけよう』となるんです。大人だって失敗するんですから、人生経験の少ない子どもが失敗するのは当たり前です。子どもは何回も失敗するということを前提に、子どもが素直に聞けるような雰囲気づくりをしましょう。私もよく『ほらね』と言っていたのですが、うちの子たちは『ママの「ほらね」いだだきましたー』と笑っていましたよ」

―声かけの基本3―
どんなときも親は子どもの味方だと伝える

子育て 声かけ 子どもの味方になる親

「注意をするときに、『そんなことをしたらみっともない』『まわりに笑われるよ』などと世間体を理由にすることもおすすめしません。子どもから見たら、親が自分よりも世間や他人を優先しているように捉えてしまい、子どもの心を傷つけることになります。また、子どもは『パパとママには自分の意見がないの?』と不信に思うようにもなるかもしれません。『まわりが何と言ってもパパとママはあなたを信じて守るよ。味方だよ』という姿勢で声かけすることが、信頼関係を築くことになるのです」


次に、読者から寄せられた声かけの悩みに、佐藤さんならどう声をかけるのか、またそのポイントについて聞きました。

<声かけのお悩み>
子どもがなかなか勉強を始めず
怒ってしまいます……

何事にも取りかかるまでに時間がかかり、マイペースすぎる小1の息子。はじめは「終わったらテレビが見られるよ!」など楽しいことに結びつけたりしながら優しく声かけをするのですが、いつまでも取りかからず時間が押してくると、つい怒ってしまいます。本当は言いたくないのに、「ゲームは禁止!お菓子もなし!」と楽しみを取り上げてしまう形の声かけをしてしまい、いつも後悔します。

 

<佐藤ママの声かけ>
「○時までに終わらせよう」と声をかけ、
子どもの隣に座って見守る。

■ポイント1
始める時間や終わりの時間を決めて習慣化する

子どもを注意するとき 声かけ 勉強の習慣化

「親が思いついたときに『やりなさい』と言っても子どもはやりません。たとえば勉強の取りかかりにいつも時間がかかる場合、始める時間を毎日同じ時間に決めましょう。夕食後の7時半スタートと決めたら、その時間は死守。親の用事やその日の気分で『今日は7時35分からでいいか』ということは避けましょう。わずか5分の違いですが、習慣化の妨げになります。終わりの時間を決めてあげるのも、ゴールが見えるので子どもも取りかかろうという気持ちになりやすいでしょう。そのようなことを淡々と毎日繰り返すことで、勉強を始めることが習慣化します。子どもの場合、習慣化するには最低3ヵ月くらいはかかりますね。親も覚悟を決めて声かけを続けましょう」

■ポイント2
隣か、もしくは近くで見守る

子どもの勉強を隣で見守る母親

「小さな子どもの場合、ひとりでなかなか取りかからないのは当然です。子どもは、基本的に勉強よりも遊ぶ方が好きですから。やはり、そばではじめから親が見守ってあげることが大事です。ずっと隣や近くにいて見てあげることがいいのですが、時には家事をしながらでも構いません。気にかけている雰囲気と親の気配を感じさせることが大切です。たとえば片づけになかなか取りかからないときにも、まずは親が片づける姿を見せてあげましょう。何度もそうしていると、親の姿からやり方がわかるので、子どもも自らやるようになります」

■ポイント3
終わった後のご褒美などの誘い文句は避ける

「『終わったら〜しようね』と、終わった後のお楽しみの話をされたら、今やることが余計につらく思えるでしょう。そうすると、子どもの気持ちはお楽しみのほうにいってしまい、今やるべきことにかける気持ちが鈍って集中できません。終わった後のことに関しては何も言わず、とにかく淡々と目の前のことに取り組ませましょう」

■ポイント4
強く言い過ぎたらすぐに謝る

子どもを注意するとき 子どもに謝る親

「子どもを注意するとき、親もイライラして理性的に考えられないこともありますよね。でも感情的になって発した言葉は、子どもを一生傷つけることもあるので注意が必要です。とくに第一声で余計なことを言いがちなので、私も気をつけていました。人間は、第二声以降は案外落ち着くのでかける言葉も考える余裕ができるのです。もし言い過ぎてしまったと思ったら、すぐに子どもに謝ること。間違いを謝るのは人間関係の基本で、謝られたほうも許すことを学びます。そして、なぜ言い過ぎてしまったのかよく考えて、謝りつつ子どもに説明できるとよりいいでしょう」

■ポイント5
注意しなくてもいいように環境を整える

「何回も子どもに同じことを注意しているのなら、一度、家庭環境を見直してみましょう。もしかしたらちょっとした工夫で解決することもあるかもしれません。子どもが片づけやすい仕組みを作ったり、壊れにくいものに取り替えたりするといいですね。そうすると、子どもの失敗やできない回数が減りますので、注意することも減ります。それでも何か失敗したら、『今度は◯◯に気をつけよう』と具体的に原因と対策を伝えると、子どもも理解できるのではないでしょうか」


いかがでしたか? 親が子どもを注意する裏には、子どもを想う愛情があってこそ。佐藤さんのアドバイスを参考に、常に信頼関係を築くことの大切さを忘れずに、声かけをしていきたいですね。次回vol.3では“子どもを褒めるとき”の声かけについて考えていきます。Vol.3は10月中旬公開予定!お楽しみに

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Vol.3 こんなときはどう声をかける?〜子どもを褒めるとき〜はこちら
Vol.4 こんなときはどう声をかける?〜よくある日常シーン〜はこちら

佐藤ママに聞く、子育てがラクになる“声かけ”の方法
Vol.1 声かけが子育ての最強の武器になるのはなぜ?

セクションタイトル

<教えてくれた人>
佐藤亮子さん

佐藤亮子さん 佐藤ママ

津田塾大学卒業後、地元大分県内の私立高校で英語教師として勤務し、結婚。その後、奈良県に移り、長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校、長女は洛南中学・高等学校を経て、東京大学理科3類に進学。現在は4人とも医学の道に進む。その育児法や教育法が注目を集め、全国で講演活動を行うほか、『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)ほか著書多数。


適切な“声かけ”が
親子の強い信頼関係を築く

子育て 適切な声かけ 手をつないでいる親子

わが子が幼いゆえに、親の感情の赴くままの態度や言葉で接してしまうことはありませんか? 大人同士と同様に親子間でも信頼関係は不可欠。「信頼関係があれば子育てがラクになる」と佐藤さんは言います。

「親は子どもから信頼されていると思いがちですが、それは適切な声かけを日々していればこそ。親の発する言葉が子どものためを思ってのものか、もしくは親の立場しか考えていないのか、子どもは敏感に感じ取っています。たとえば、『明日はお出かけの予定があるから、今日のうちに余分にプリントをやっておこうか』と、親が子どもに声をかけたとします。子どもが親を信頼しているなら『お母さんが言っているのだから、今日は余分にやったほうがいいな』と思うでしょうし、信頼関係がなければ『うるさいな。しんどいから嫌だ』となるでしょう。親の考えが伝わりやすくなると子育てがラクになることにつながり、そのためには信頼関係を築く日々の適切な声かけがとても大事なんです」


気持ちがラクになる
自分への“声かけ”

佐藤さんは『子育ては声かけが9割』や『子どものやる気がどんどん上がる魔法の声かけ』などの著書の中で日々の声かけの大切さについて書かれていますが、それにはあるきっかけがあったそう。

「私も子育てと家事の『両立』に悩んだ時期がありました。でも子ども4人の面倒を見ながらではどうにもできない。そこで考えたんです。『両立』という言葉が自分を追い詰めているんだから、言葉を『同時並行』に置きかえようと。『両立』はどちらも立派にできていないとダメなイメージですが、『同時並行』ならとりあえずどちらもやれていればいい。そう考えたら一気に気持ちがラクになって、前向きになれたんです。このとき、言葉の力は大きいなと実感しました」

子育て 気持ちがラクになる声かけ

「私の口癖は、『ま、いっか』『ぼちぼちいこう』です。そう自分に声かけをすると、『同時並行』という言葉に置きかえたときと同じように、肩の力が抜けて気持ちがラクになります。子どもたちも私のその言葉を聞くとリラックスできるようで、親子でよく『ぼちぼちいったらよくない?』と言い合っていましたよ。家が子どもにとって安心してのんびりできる場所でないと、子どもは心身ともに健やかに成長しません。特にお母さんは家庭の空気感をつくる中心的存在なので、そういう場をつくるための声かけも意識するといいのではないでしょうか」


実況中継や願望ではなく、
明確なビジョンやゴールを伝える

子育て 声掛け 明確なビジョンやゴールを伝える

では、子どもと信頼関係を結ぶためには、何を意識して“声かけ”をしたらいいのでしょうか。

「親の声かけは目の前の状況を言っているだけの実況中継だったり、『こうしてほしい』という親目線の一方的な願望に過ぎないことがよくあります。それらの声かけはどちらも曖昧で、その先のビジョンが欠けています。もし親が子どもに対して『ゴロゴロ怠けているな』と思っても、『何やってるの、ゴロゴロしてないで勉強しなさい!』と実況中継するのではなく、私だったら『●日後にテストがあるから、今日から1ページずつやったら範囲が終わるよ』と声をかけます。けっして上から目線の命令口調ではなく、今やるべきことや今日のゴールを子どもが具体的にイメージできるように淡々と声かけをすると、子どもは落ち着いて前向きな気持ちで取り組めます」


“声かけ”は成果が出るまで
辛抱強く続ける

子育て 声かけというように、目指すゴールに向けてのアドバイスのおかげで成果が出たことを子どもが実感すれば、そこで信頼関係が生まれます。あとはこのやり方を繰り返していくだけ。また、こういうときにはこういう声かけをしようと、起こりがちな場面を想像し、あらかじめ自分なりに声かけの内容をシミュレーションしておくのもいいでしょう。うまくいかなくても、とにかく続けることを心がけましょう」



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日々、わが子とのコミュニケーションが思うようにいかず、なんと声かけしたらいいのか分からず悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。佐藤さんの言うように、「声かけは信頼関係を築くためのもの」と発想を変えると、適切な声かけができそうな気がしませんか? 次回vol.2では「子どもを注意するとき」にどんな声かけをしたらいいか、佐藤さんにアドバイスをいただきながら考えていきます。

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