子どもの頃に誰もが思い描いた将来の理想の自分。今あなたはその理想を実現できていますか。結婚、妊娠、出産、育児、介護と変化するライフステージの中でも、自分らしく理想の働き方をすることを私たちは諦めたくはありません。でも実際は、多くのママたちが現実と対峙し、思い悩んでいます。そこで、スリール株式会社の堀江敦子さんに、著書『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』のワークシートを用いながら、子育て中のママに向けて「なりたい自分を描く」特別セミナーを開催していただきました。第1話は、今の自分の状況や気持ちを把握するためのモヤモヤを吐き出すワークです。
アドバイスをくれた方
スリール株式会社代表取締役社長
堀江敦子さん
大手IT企業勤務を経て、2010年に25歳で起業。200人以上の子どものベビーシッターや20代での父親の看護と仕事の両立の経験を生かし、「子育てしながらキャリアアップする人材・組織を育成する」をテーマに、企業の研修やコンサルティング、大学・行政向けにライフキャリア教育を実施する。内閣府男女共同参画会議専門委員、厚生労働省イクメンプロジェクト委員、東京都文京区ぶんきょうハッピーベイビー応援団委員、千葉大学教育学部非常勤講師も務める。https://sourire-heart.com
働き方・育て方に悩みをもつママ
生山アキさん
6歳・3歳の兄弟のママ。ヘアサロンのレセプションとして働いていたが、専業主婦になり現在に至る。美容系読者モデルを20年ほど続けている。フードコーディネーターや食育インストラクターなどの資格をもち、食関係の仕事に興味がある。子どもの時間を大切にしたいので自営業が理想だが、具体的には動けていない。
稲井美里さん
6歳・2歳の兄弟のママ。TV制作会社やレコード会社勤務を経て、現在は制作会社や自営で映像編集の仕事を手がけつつ、コーヒー好きが奏してカフェでバリスタとして働くなど、3つの仕事を掛けもちする。好きな仕事をしながら愛情いっぱいに子育てもして、「今が人生で一番幸せ」と思える日々を過ごすのが目標。
大貫まりこさん
9歳、7歳、2歳の姉弟のママ。美容師やアパレルの仕事に就いていたが、現在は専業主婦。子育ても3人目で落ち着いてきたので、これまでのスキルや興味を生かし、友人とアパレルブランドの立ち上げを目指して準備を始めたところ。家庭に入ってからマイナス思考になりがちで、明るく前向きに生活できたらと感じている。
参考にした書籍
『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』
200名以上のベビーシッターを経験し、1000以上の共働き家庭と出会い、1万人以上の仕事と子育てに悩む人へ研修や講座を提供する堀江敦子さんによる新世代のワーママに向けたバイブル。少しのマインドセットとアクションで自分らしい働き方や子育ての仕方、そして生き方が見つかると話題。ワーママだけでなく、これから子育てをしながら働きたいというワーママ予備軍やその家族、さらに同僚・上司も必読。1500円(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)
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使用するワークシート:モヤモヤ吐き出しシート
「今の生活の満足度」とその理由、「仕事」「プライベート」「将来のこと」のそれぞれについて、抱えているモヤモヤ(迷っていること、悩んでいること、引っかかっていること)を自由に書き出すシート。文字に見える化することで、その文字を客観的に見つめ直すことができ、自分自身を俯瞰するデトックス効果が期待できる。
どんなライフステージでも
自分らしく働いてキャリアアップできる社会を
堀江さん:今日は「子どもも自分もハッピーになるライフキャリアセミナー」の特別版ということで、3年後に自分がどうなっていたらハッピーかということを楽しく考えていきましょう。ママたちの主な悩みというと、「仕事を頑張りたい気持ちはあるけれど、子育てとどうバランスを取ったらいいか分からない」「仕事をしたら子どもに寂しい思いをさせてしまうんじゃないか」「子育ての予測がつかず、考えるとモヤモヤする」といったことが挙げられます。参考に弊社が調べたデータをご紹介すると、出産前の働く女性の92.7%が仕事と子育ての両立に不安を抱えている*という結果があるんです。
*スリール(株)発行「両立不安白書」より
稲井さん:私は子どもを保育園に預けながら、仕事を組み合わせてフルタイムで働いています。保育園に預ける資格を得ることがまず大変だし、さらに仕事と子育ての両立は難しいなと日々実感しています。
堀江さん:そうですよね。実は私が起業したのも、ベビーシッターや介護施設などでボランティアをしていた時に、「日本はなんて生きづらい社会なんだ」と思ったことがきっかけなんです。多くの人が経験する育児や介護といった当たり前のライフステージの状況でも、自分らしく働いてキャリアアップできるような社会であるべきですよね。
大貫さん:私は出産して家庭に入ってから、自分のやりたいことが後回しになっているなとずっと感じてきました。本当はもっとオシャレもしたいし、積極的に過ごしたい。けれど、ついマイナス思考になってしまいがちです。
生山さん:私は子どもに自分が働く背中を見せたいなと思っています。でも子育てとの両立を考えると、どんな働き方ができるのか分からずに迷ってばかりです。
堀江さん:皆さん、いろいろな思いを抱いていらっしゃいますね。では、さっそく今の自分の生活満足度を考えながら、仕事、プライベート、将来のことなどについて項目別にモヤモヤ吐き出しシートに記入していきましょう。
まずはモヤモヤを吐き出して
理想の自分を描いてみる
稲井さん:私は今の生活の満足度は70点です。モヤモヤに感じていることは、やはり仕事と子育ての両立です。家にもっと早く帰りたいけれど保育園に預けるためにはフルタイムでたくさん働かなければいけないし、来年長男が小学校に上がるので小一の壁についても気になります。あとは「良きママってなんだろう?」といつも考えてしまって……。
大貫さん:上の子どもたちが大きくなってきて、3人目で生活リズムが落ち着いてきたので、私も満足度は70点です。現在は仕事をしていないので、働いていたら、子どもたちや自分に使うお金の余裕が出ていいだろうなと思いますね。子育てをしながらずっと何年も、アパレルや美容関係のスキルを生かした仕事に就きたいなとモヤモヤと考え続けています。
生山さん:私は出産前にやりたいことはやり尽くしたので、今は専業主婦の子育て中心の生活で95点の満足度です。でも子どもが小学生になったら仕事をできたらいいなと漠然と考えていたり、興味のある食の世界だと子育てとの両立が難しいのかなと思ったり。モヤモヤしながら、別の資格を取った方がいいのかなとも思っているところです。
堀江さん:モヤモヤしている部分はありながらも、皆さんだいぶ先を見据えていらっしゃいますね。「仕事を頑張りたい」「でも子どもがどうなるか分からない」「周りに迷惑もかけられない」という3つを同時に考えてしまうのが女性特有の脳内構造といわれているんですが、悩みが複雑になってしまうので、それらを整理して、周りに交渉できるようになるといいですね。
稲井さん:私も家のことを抱え込んでしまって、その結果、処理しきれずに落ち込むことがよくあります。
堀江さん:一言で仕事と子育てといっても、それぞれ多様な状況です。まず大切なのは、「自分がどういうキャリアを築きたいのか」「どういう風にプライベートを両立させたら幸せなのか」を描くことです。なりたい自分が明確でなかったり、自分の理想像が偶像だったりすると、人は前向きには進めないんです。今のアクションがなりたい自分につながっているか、アクションの一歩が大きすぎたりハードルが高すぎたりしないかなど、一つ一つ明確にしていきましょう。
――いかがでしたか。自分の心の中にある思いを文字や言葉にすることで、その思いがよりクリアになったのではないでしょうか。次回第2話では、3年後になりたい自分に近づくために様々なビジョンを立てるワークに取り組みます。
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撮影/川原崎宣喜 取材・文/鈴木志野