ライフオーガナイザー中村佳子さんに教わる
片づけは何歳から?
子どもの年齢別“片づけ力”を伸ばす秘策
セクションタイトル
<教えてくれた人>
ライフオーガナイザー 中村佳子さん
家族が快適に過ごせる住まいをお手伝いする「Drawer Style」運営。一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会認定講師。2児(14歳長男、10歳次男)の母。片づけのプロとして、さまざまな個人宅や企業へのアドバイザー、セミナー講師として活躍している。アメブロ公式トップブロガー。著書に『男の子がひとりでできる「片づけ」』(KADOKAWA)。https://drawer-style.com
子どもの片づけは何歳から教える?
「片づけを教えるのは、おもちゃを持って移動できるようになる、2歳頃から。ただ最初は、『絵本は棚に並べる』『ぬいぐるみは箱に入れる』といったワンアクション(連載第2回参照)で済む片づけがベストです。ぬいぐるみを箱に片づけられたら、『戻してくれてありがとう』などと、ぬいぐるみを擬人化して声かけすると、子どものやる気もアップします」
【3〜6歳(未就学児)】
「幼稚園に入園すると、子どもはぐんと成長します。幼稚園で身につけた片づけ習慣は、家でも有効です。楽しく片づけできるしくみを作りましょう」
1.“片づけBGM”を流してよーいドン!
「幼稚園の習慣を家でも取り入れてみましょう。“片づけの歌”を流し(歌い)、“よーいドン!”でスタート。楽しみながら、みるみるうちに片づけていきます!」
2.子どもの好きな遊びで収納
「片づけに遊びの要素を取り入れると、子どもはもっと積極的になります! たとえば、磁石のしくみに気づき、くっつけたり外したりして遊び始めたら、マグネットバーにおもちゃをくっつける収納がおすすめです。わが家は、ゴム遊びが好きな頃に、ベッド下に平ゴムを取りつけ、おもちゃの剣を片づけていました(トップ画像)。いまもそのまま保存しています」
【7〜9歳(小学校低学年)】
「小学生になると、学習机やランドセルの置き場所が必要になります。子どもの動線を考えて配置することが、自分で片づけられる一番の近道です」
1.ランドセルスペースを確保する
「スペースがあれば子ども部屋に、リビング学習派ならリビング近くに、ランドセル置き場を確保します。同じスペースに、教科書や筆記具、ハンカチなど、学校で使うものをひとまとめにしておくと、自分で用意しやすく、片づけもスムーズに!」
2.「片づけないなら捨てます!」はアリ
「子どもがどうしても片づけないときの、最終兵器がコレ。実際に、片づけないそのモノを捨てます。そのモノがないことに気づいた子どもが『ママ知らない?』と聞いてきたら、女優スイッチON。『え? ゴミかと思って間違えて捨てちゃったかも? ごめーん』とひと芝居うちます。子どもは『マズイ、片づけないと捨てられる』と思うはず。“大事なモノは自分できちんと管理する”ことを伝えたいがためのママ劇場(笑)、ぜひお試しください」
【10〜12歳(小学校高学年)】
「学校の準備に関してはベテラン組。日々の片づけに関しては、いちいちママに言われたくない、言われるとやりたくなくなるのが高学年の特徴。この時期は子どもの力を信じて、本人に任せてみるのもひとつの手です」
1.コミュニケーションの取り方がカギ
「この時期の子どもには、たとえば、『寝るまでに○○を片づけてね』というように、ある程度お任せするスタイルが有効です。また、お手伝いを頼む場合は、『リビングの片づけか、お風呂洗い、どっちがいい?』の2択作戦。これなら押しつけ感がなく、思わず選んでお手伝いしてしまいます」
2.思い出ボックスの管理は任せる
「高学年になると、自分にとって大切なモノの価値観がはっきりしてきます。大切なモノを選ぶ力を育てるのが、自分専用の“思い出ボックス”。一箱を自分で管理するのが仕事です。限られたスペースに収まるよう、モノを選び、片づけるしくみを自分で試行錯誤することが大切です」
小さい子どもは視野も身長も手先も発達途中ですが、少しずつできることが増えるので、のびしろに期待! 子どもの年齢や成長に合わせた“片づけ力”を伸ばす秘策を、ぜひ実践してみてください。ママも子どももストレスなく、片づけに取り組めるはずです。次回はいよいよ最終回! 「時間と情報」の片づけ方を紹介します。大人になっても役立つしくみづくりのヒントが満載です。
ライフオーガナイザー中村佳子さんに教わる
「子どもが片づけない」を解決する5つの工夫
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家族が快適に過ごせる住まいをお手伝いする「Drawer Style」運営。一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会認定講師。2児(14歳長男、10歳次男)の母。片づけのプロとして、さまざまな個人宅や企業へのアドバイザー、セミナー講師として活躍している。アメブロ公式トップブロガー。著書に『男の子がひとりでできる「片づけ」』(KADOKAWA)。https://drawer-style.com/
「子どもが片づけない」は、親の工夫で解決できる!
「『子どもが片づけない』とお悩みのママ、子どもに片づけの“基本のやり方”を教えていますか? たとえば、自転車の乗り方、料理、勉強もそう。子どもが初めて何かにトライするとき、“基本のやり方”やコツを教えますよね。片づけも同じです。“基本のやり方”を教え、子どもが片づけやすいように工夫することが大切です!」
工夫1.“探しやすさ”より、“戻しやすさ”を重視
「片づけのしくみをつくるときに重視したいのは、“戻しやすさ”です。探すときは、そのモノが必要なので、多少見つけにくくても頑張って探し出します。ところが、使い終わったモノを元の場所に戻すときは、そうはいかない。いま、そのモノは必要ないので、ついついその辺に置きっぱなしにして戻さない……。子どもが戻しやすくするには、簡単にしまえる収納がいちばん!1ボックス1カテゴリーのようなざっくり収納がおすすめです」
工夫2.子どもが自分で片づけられる、収納のしくみづくり
「『なぜ、何のために片づけをするのか?』を理解させることができたら(「片づけの必要性」記事にて紹介 )、早速実践! 親の役割は、子どもが自分でできる片づけのしくみをつくることです。子どもの動きをよく観察し、子どもがモノをしまう収納場所・方法・グッズを選びましょう」
1.モノの住所を決める
「すべてのモノの定位置を決めることは、片づけの基本中の基本です。たとえば、子ども部屋に片づけた映画パンフレット(大)の置き場は、『本棚の下段の右から3番目のボックス』といったように、『◯丁目◯番地の◯』まで住所を決めておきましょう。モノの住所を決めることで、子どもが自分で探して、元に戻せるようになります」
2.ワンアクション収納
「フックにかけるだけ、ボックスに放り込むだけ、棚に置くだけなど、“だけ”で片づけられる収納を意識してみてください。取り出したり片づけたりする動作が少ない、ワンアクションが理想です」
工夫3.脳のクセ“利き脳”で、収納方法を変える
「ライフオーガナイズの片づけでは、“利き脳”という脳のクセをヒントに、その人に合う収納を提案しています。“利き脳”は、小学生になるころまでは特徴が出にくいと言われ、一般的に小さな子どもは右脳が優位であるため、感覚的に判断できる収納が使いやすいと考えられています」
<右脳タイプの収納>
イメージ力や記憶力、想像力、ひらめきを司る右脳が優位の場合、感覚的に判断できる収納が片づけやすい。色違いのお片づけボックスに、文字ではなく、イラストやアイコンを描いたラベルを貼って、パッと見てわかる収納を。
<左脳タイプの収納>
言語や計算力、論理的思考を司る左脳が優位の場合、合理的でシンプルな収納が片づけやすい。同じ白いボックスに、おもちゃ名のみを書いたラベルを貼って、文字情報だけの収納を。
<両タイプ折衷の収納>
家族に右脳タイプと左脳タイプがいる場合の折衷案。正面からの見た目はスッキリさせながら、ボックスの底に色違いのフェルトなどを敷き、視覚的に片づけやすい収納を。これなら、インテリアに調和したボックスでそろえられるという利点も。
「利き脳片づけ術」は、坂野登京都大学名誉教授の「しぐさ利き脳理論」をベースに一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会が片づけに応用しまとめた、行動やくせを知るためのライフオーガナイズの手法の一つです。
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工夫4.“捨てるモノ”ではなく、“大切なモノ”を選ぶ
「子どもの成長とともに増えていくおもちゃ。ある日、おもちゃ箱をひっくり返すと、オモチャの多さにびっくり! さすがに量を減らしたいと考えたとき、子どもに何と声をかけますか?
『A. 捨てるのはどれ?』
『B. 大切なおもちゃだけをおもちゃ箱に入れて』。
正解はBです。Bの言い方だと、子どもは喜んでおもちゃ箱に入る分だけ好きなおもちゃを選び、片づけるようになります」
工夫5.“Youメッセージ”の声かけで、片づけを後押し
「子どもが何か危ないことをしたときに、どんな言葉をかけますか?
『A. あなたはどうしてそんなことをするの?』
『B. 危ないことをしたら、ママはとっても心配』
正解は、Bです。子育てでは、子どもを責めることなく、気持ちに焦点を合わせることができる“Iメッセージ”が有効と言われています。でも片づけは違います! 子どもを主体にした“Youメッセージ”が効果的です。片づけを一緒にするときは、『あなたはどう思う?』『あなたはどっちのほうが使いやすい?』と声かけしましょう」
片づけないのが当たり前だった子どもが、片づけられるようになるなんて夢のよう! 5つの工夫、ぜひ試してみたいですね。次回は、いよいよ実践編。年齢別の片づけ実例をお届けします。
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「片づけの必要性」。
子どもに身につく5つの“生きる力”
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家族が快適に過ごせる住まいのお手伝い「Drawer Style」運営。一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会認定講師。2児(14歳長男、10歳次男)の母。片づけのプロとして、さまざまな個人宅や企業へのアドバイザー、セミナー講師として活躍している。アメブロ公式トップブロガー。著書に『男の子がひとりでできる「片づけ」』(KADOKAWA)がある。https://drawer-style.com/
子どもにとっての「片づけの必要性」とは?
「片づけとは、自分にとって大事なモノを選ぶこと。大人になってからも続くルーティンなので、子どものころから習慣化できるよう、上手くサポートしてあげましょう」
「片づけなさい!」だけでは、子どもには伝わらない!
「ママの『片づけなさい!』という言葉を聞いた子どもの多くは、『散らかったモノを、その場から移動させ、空間をきれいにする』という行動をとります。何をすることが片づけで、それをしたらどうなるのかが理解できていないのです。まずは、片づけとは何か、なぜ必要なのかを、子どもに伝えたいですね」
「何のために片づけをするの?」には、目的があります。
「片づけをする目的を、子どもにわかりやすく伝える方法があります。次のワークを、親子で一緒にやってみてください。写真ABCの中に、白いボールが同じ数入っています。白いボールが何個入っているのか、一番早くわかるのはどれでしょう?」
おもちゃがごちゃごちゃ。さらに紙くずで白いボールが隠れてしまって見つけづらい。
[B]散らかったおもちゃ
Aよりは見つけやすいけれど、おもちゃがごちゃごちゃしていて探しづらい。
[C]分類されたおもちゃ
おもちゃを種類・色別にグループ分けして並べると、パッと見ただけで白いボールが3つあることがわかる。
正解は「C」。
分類されたおもちゃ
「『ゴミはゴミ箱に捨てる』『収納するときは、グループごとに分類してから定位置を作る』というのは片づけの基本です。こうやって俯瞰して見比べたとき、分類すると断然わかりやすい! という片づけの目的を体感できるはずです」
「片づけ」で身につく
5つの“生きる力“とは?
1.選ぶ力
「片づけは、自分にとって大事なモノを選び続ける作業にほかなりません。繰り返すことで、自分の価値観を知ることができ、日々の暮らしの中で、その価値観にあった選択ができるようになります」
2.判断する力
「「持ち物が変われば、収納方法が変わり、片づけの仕方も変化していきます。自分に合った、使いやすい収納方法・片づけの仕方はどんなカタチなのか、判断する場面にたくさん直面するはずです」
3.続ける力
「片づけは日常の習慣で、一生続くもの。毎日の小さな積み重ねが、“続けられる”という大きな力になります。子どもが将来、何かを成し遂げたいと思ったとき、続ける力が後押しに!」
4.思いやる力
「片づいていると気持ちがいいものです。その状態を保つためにモノを丁寧に扱ったり、次に使う人のことを考えて使いやすいようにしまったり。人やモノに対する優しさや思いやりが育ちます」
5.責任感
「自分のもの、自分が使ったものは、自分で片づける。毎日の繰り返しである片づけをやり遂げる意識が、自ずと責任感を育みます」
「『片づけが子どもの将来を左右する』と言ったら大げさかもしれませんが、片づけを習慣化することで、自分のバックボーンとなる5つの“生きる力”が身につくのは事実です」と中村さん。片づけの必要性が明確になったところで、「子どもが片づけない」にどう対応するべきか……次回は「脳のクセ“利き脳”で収納方法を変える」をお届けします。