子どもの免疫力を高める方法。食べ物や生活の注意点とは

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<教えてくれた人>
枝 伸彦さん

獨協医科大学 基本医学 基盤教育部門(健康スポーツ科学)講師

子どもの免疫力を高める食べ物・飲み物
腸内環境がポイント

幼い子どもは大人に比べて免疫力が低いと言われています。でも、日々の生活の中で、ちょっとした工夫を心がければ、子どもの免疫力を高めることにつながります。

まず、意識してほしいのは、腸内環境を整えることです。腸内には、善玉菌や悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌など多数の腸内細菌が存在し、とりわけ善玉菌は免疫細胞の働きを活性化させると言われています。善玉菌の中でも代表的なのが乳酸菌です。乳酸菌は、納豆や味噌、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品に豊富に含まれているので、日頃から積極的にとるようにしましょう。

私自身、2人の娘がいることもあり、日々の生活の中で腸内環境を整えることを意識しています。毎日習慣にしているのは、乳酸菌飲料を飲むこと。今、巷には色々な種類の乳酸菌飲料が売られていますので手軽にとり入れやすいですし、子どもも飲みやすいと思います。娘たちにも毎日飲ませていますし、私自身、乳酸菌をとるようになってから、風邪をひきにくくなったと実感しています。

日焼けをしすぎると免疫力の低下に?

子どもの免疫 日焼け 免疫低下

免疫力を上げるには、適度な運動も大切です。ランニングやウォーキングなどの有酸素運動を行うことで免疫力が高まるという研究結果があります。また、前編でも述べましたが「ややきつい」くらいの運動を週2~3回行うと免疫力が高くなると言われています。
ですので、子どもの場合は、外遊びをして身体を動かせば、免疫力の向上につながると言えるでしょう。また、外で紫外線を浴びると、体内でビタミンDが生成されるのですが、ビタミンDは免疫機能のバランスを整える働きがあるため、免疫力アップに効果的です。ただし、紫外線を浴び過ぎてしまうと、逆に免疫機能が低下してしまうことがあります。そのため、夏場、長時間外で遊んだりスポーツなどして過度に日焼けをしそうな時は、お子さんにも日焼け止めを塗ってあげるといいでしょう。
とくに、サッカーや野球などをやっているお子さんは、夏の炎天下での練習や試合で、どうしても日焼けをしてしまいがちですが、免疫のことを考えると、日焼け対策を行ったほうがいいと思います。

免疫力向上には不規則な生活や疲労が大敵

1日の生活が不規則になってしまうと、免疫力は低下してしまいます。ですので、毎日、同じ時間に就寝、起床をして睡眠をしっかりとるように心がけましょう。また、できるだけ食事も毎日決まった時間に、栄養バランスの良い食事をとることが大事です。野菜やフルーツなどに含まれるビタミンCは免疫力をアップする働きがあり、たんぱく質は免疫細胞の活性化につながると言われているので、栄養素をまんべんなくとるようにしましょう。

免疫細胞は、体温とも関係しています。身体を温めると、免疫細胞が活性化するため、とくに寒い季節は、毎日湯船に浸かって身体を温めたり、温かい飲み物を積極的にとるなど、身体の中と外から温めるように心がけましょう。

疲労が蓄積すると、免疫力は低下してしまいます。スポーツを頑張っているお子さんは、日々のトレーニングや試合などで疲労が溜まってしまうこともあるのではないでしょうか。免疫力を下げないためには、休養をとることが大事です。疲労がたまって免疫力が低下しても、しっかり休養をとれば免疫力が回復することが研究結果からもわかっています。また、マッサージや鍼の刺激などは免疫力の低下を抑制するのに効果的だと言われているので、練習や試合の後に、マッサージをしてあげるのもいいのではないでしょうか。

免疫力アップには適度な運動やストレス軽減も効果的!

免疫力アップ 適度な運動

過度なストレスや精神的にショックなことがあると免疫力の低下を招いてしまいます。ですので、お子さんがストレスを抱えないように、日常の生活の中でリフレッシュできるような機会を与えてあげるといいでしょう。子どもは外で思い切り遊ぶだけでも、ストレスが解消されると思います。落ち込むようなことがあれば、免疫機能が落ちている可能性もあるので、コミュニケーションを積極的にとって気持ちを切り替えてあげることも大事です。また、育児中の親御さんはどうしても疲労が蓄積して高ストレス状態になりやすいので、免疫力の低下を防ぐためにも、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。
過去の研究では「笑う」ことで自然免疫が高まるということも報告されているので、日々の生活の中で、笑うことが多いと免疫力にアップにつながるのではないでしょうか。

先ほど、適度な運動が免疫力向上につながるとお伝えしましたが、ヨガも免疫力と関係しています。私自身の研究で、ヨガにはリラクセーション効果があり、1回のヨガでもストレスホルモンの低下や副交感神経の活性化がみられ、一時的に免疫力が向上することが明らかになっています。また、週に3回のヨガを行うことで免疫力が向上することや、激しい運動後の免疫低下の抑制効果もみられています。さらに、アロマを嗅ぐことも、ヨガと同様にリラックスするため、免疫機能の向上につながると思います。私の研究では、特にベルガモット精油が効果的であることがわかっています。ですので、生活の中でヨガやアロマを取り入れると、免疫力アップにつながるといえるでしょう。最近は、親子で一緒にできるヨガもあるので、親子でヨガをやってみるのもいいのではないでしょうか。

緑茶を飲んで、のどのバリア機能を高めよう!

緑茶 バリア機能向上

寒くなると、免疫力が下がってしまう・・・と思っている親御さんもいるのではないでしょうか。でも、季節によって免疫力が左右されるというよりは、むしろ寒くなってくると湿度が低下し、空気が乾燥してしまうことから、のどの粘膜や皮膚など外側のバリア機能自体が下がってしまうため、風邪や感染症などにかかりやすくなると考えられます。ですので、秋から冬の乾燥する季節は、病原体を体内に入れないためにも、のどのバリア機能を高めるといいでしょう。のどのバリア機能は、水分をとることでアップするので、日頃から水分を積極的にとることが大切です。中でも、緑茶のカテキンには、抗ウイルス作用も含まれているので、緑茶を飲むようにするといいでしょう。また、部屋の湿度を40~60%程度に保つことも大事です。
先に上げたような免疫力を高める工夫に加え、手洗いやうがいはもちろん、タオルの共用や、回し飲みを避けることなども、風邪やインフルエンザなどを防ぐためには大切です。

免疫力とは?
子どものために知っておきたい種類や機能

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<教えてくれた人>
枝 伸彦さん

獨協医科大学 基本医学 基盤教育部門(健康スポーツ科学)講師

免疫力とは?2種類の免疫

「免疫」や「免疫力」の意味をご存知ですか?
そもそも「免疫」とは、体外から入ってきた細菌やウイルスなどの異物、または体内に発生する老廃物や病的細胞を取り除くための自己防衛システムです。
免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分けられます。自然免疫とは、生まれた時から身体に備わっている免疫のこと。獲得免疫は後天的に得られるもので、身体の中に病原体が侵入すると、それを認識して抗体をつくり出し、次にその病原体が入ってきた時に効率的に攻撃する働きを持っています。ちなみに、ワクチンは獲得免疫の仕組みを利用したものです。1度抗体がつくられると身体の中で一定期間記憶されるので、例えばインフルエンザワクチンを接種しておけば、獲得免疫が反応して抗体をつくり出すため、インフルエンザにかかりにくくなったり、感染しても軽症で済む場合があるということです。


今の子どもたちは免疫力が低下している!?

子どもの免疫と消毒
子どもは、大人に比べて病原体に感染した経験が少ないため、獲得免疫が未熟です。とくに3歳頃までは獲得免疫が低いので、いろいろなウイルスや菌にさらされながら免疫を獲得して適応していくことが必要です。けれど、現代は昔より衛生面がよくなり、清潔な環境での生活になっています。さらに親御さんが過度に衛生面を意識して除菌や殺菌をしているケースも多いのではないでしょうか。科学的に明らかになっているわけではないのですが、今の子どもたちは菌に触れる機会が減っていることから、かつてよりも免疫力が下がっている可能性が危惧されています。

さらに、国内では2020年から感染が拡大したコロナウイルスへの対策も、子どもの免疫力低下に影響しているのではないでしょうか。
というのも、コロナ禍で子どもたちは外出や運動する機会が減りましたよね。また、マスクをしての運動は、呼吸がしづらくなってしまうため負荷がかかり、運動量そのものは減っていたと思います。

実は、免疫力と運動は関係しています。適度な運動は、免疫細胞の生成や機能を活性化させ、免疫力を高めることがわかっています。
コロナ禍で子どもたちは運動不足に加え、マスクでの生活、さらにアルコール消毒をして、今まで以上に衛生面に気を付けるようになり、よりウイルスに触れる機会が減ってしまったために、免疫力の低下が加速したように感じています。

免疫力が低下してしまう原因は?

スポーツの大きな大会や大事なテストの前に、お子さんが風邪を引いてしまったということはないでしょうか?
免疫力が低下する要因の1つには、ストレスがあります。過度なストレス下では、自律神経のバランスが崩れたり、ストレスホルモンの分泌が増加してしまうため、免疫機能が低下してしまうといわれています。ですので、テスト前などに風邪を引いてしまうのは、精神的なストレスに睡眠不足や疲労も加わって、免疫力が低下してしまうためだと言えるでしょう。
実際に、精神的ストレスと免疫の関係について大学生を対象に調べた研究では、勉強によるストレスがかかる試験期間中は、通常よりも免疫物質の分泌量が低下していたと報告されています。慢性的なストレスの方が免疫低下の状態が長く続き、その分、感染症への罹患リスクが増大するため、注意が必要です。ですので、仕事や育児などで慢性的にストレスを抱えている親御さんは、免疫力が低下している可能性があるかもしれません。

なお、ストレスには色々あり、必ずしも子どもにとってストレスは悪いものではないということです。身体の内部環境が乱れるとストレス状態になってしまうのですが、人間の身体はそれを治そうとするため、結果、ストレスが身体にとっていい影響に働く場合もありますし、適度なストレスは成長のためにも必要だと言われています。

過度な運動が免疫力低下につながることも!

子どもの免疫とスポーツ
また、疲労も免疫力に影響を及ぼします。疲れが溜まってくると免疫細胞や免疫物質をつくり出す力も弱くなってしまうのです。
先に、運動は免疫と関係していると述べましたが、適度な運動は免疫力向上のためにも大切です。1回あたり30分~60分程度の「ややきつい」くらいの運動を週2~3回行うことで免疫力は高まると言われています。けれど、それを超える過度な運動やトレーニングは疲労につながってしまうので、実は運動をやりすぎてしまうと免疫力が低下してしまう場合もあるのです。とくに激しい運動を継続して行っていると、免疫機能を低下させてしまうことがあると言われています。アスリートのようなトレーニングだけでなく、子どもでもマラソンや長時間の運動で免疫低下を起こす危険性は考えられます。また、例えばサッカーや野球などスポーツを習っているお子さんで、チームを掛け持ちしているなどで毎日ハードな練習や試合を積み重ねていると、疲労が蓄積してしまい、免疫力が低下してしまうこともあるでしょう。

睡眠も免疫力と関係しています。入眠するとそのまま深い眠りのノンレム睡眠に入り、その後、90分周期で浅い眠りのレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返します。睡眠直後のノンレム睡眠の際に、成長ホルモンが分泌されます。子どもにとって成長ホルモンは、身体の成長や脳の発達にとって大事ですが、さらに成長ホルモンは、細胞の修復や再生、疲労を回復させたり、代謝を調節するなど免疫力と関係していると言われています。睡眠不足になってしまうと、成長ホルモンの分泌が悪くなってしまうため、免疫力に影響を及ぼす場合もあるでしょう。

この他、日々の食事も免疫力に関わってきます。栄養バランスが偏った食事は、免疫機能に影響を及ぼしますし、中でもビタミンAやビタミンC、ビタミンDは免疫細胞の働きに影響するため、これらが不足してしまうと免疫力の低下につながってしまうこともあるでしょう。


薬と免疫の関係

子どもの免疫と薬
子どもが風邪をひいたかなと思った時、すぐに薬を飲ませていませんか?
大人の場合は、薬に頼ってでも頑張らないといけない時があるかもしれません。
でも、子どもの免疫を考えると、薬にすぐに頼るのではなく、自分の免疫でウイルスと戦わせることも大事だと思います。というのも、風邪などで発熱するのは、免疫細胞を活性化させて、体を治癒させようとする必要な反応だからです。
もちろん医師の判断に従うことが大前提で、場合によっては薬を使って治すことも大事です。親御さんとしては心配にはなるとは思うのですが、薬だけに頼らず、しっかり休養をとって子ども自身の免疫で治していくことも大切なのではないでしょうか。


いかがでしたか?前編では、免疫についてや免疫力が低下してしまう要因などをお届けしました。後編では、免疫力を高めるための具体的な方法をご紹介します。