失敗しないダンススクールの選び方。 子どもの成長のために見ておきたいポイント
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<教えてくれた人>
久岡和也さん

一般社団法人ダンス教育振興連盟JDAC 代表理事。「ダンスで社会に新しい価値を創る」を理念に掲げ、教育型ダンススクールのフランチャイズ展開や、介護予防×ダンスのプログラムなど、企業・自治体と連携した多様な社会貢献活動を推進中。他に日本盆踊り協会共同代表など、教育・健康・スポーツ・文化をテーマに、様々な活動を行っている。
習い事で人気の水泳や体操とダンスの違いは?
子どもの習い事として、年々人気が高まっているダンス。前編で、ダンスは全身運動だとお伝えしましたが、「全身運動なら『水泳』を習ったほうがいいのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。
確かに水泳は身体をくまなく使うので、ダンスと同様に体力面の向上が期待でき、バランスよく筋肉もついていくでしょう。さらにダンスは、リズム感が育まれるのはもちろん、感情も豊かになっていきます。ダンスでは決まった振り付けを覚える場合もありますが、曲に合わせて自由に踊ったり、自分の気持ちを動きで表現したりすることもあります。子どもは発想が豊かなので、思ったままに踊ったりポーズを決めたりできるもの。3~4歳の頃からダンスを習えば、照れることなく表現できるため、それを積み重ねていくことで情緒が豊かになるのです。
また、ダンスとよく比較されるのが体操。体操もダンスも身体の柔軟性やバランス感覚などを養えるのは同じですが、表現力や心も育めるのはダンスならではと言えるでしょう。
水泳や体操との大きな違いは、ダンスは子どもたちが親しみやすい音楽に合わせて身体を動かすので、運動そのものを嫌いにならず、楽しく続けられることです。楽しさが加わることが、子どもたちの上達の早さにもつながっているようです。
幼少期は特定のジャンルにこだわらないのがおすすめ

ヒップホップダンスやジャズダンス、2024年のパリ五輪で人気となったブレイキン(ストリートダンス)などを始め、ダンスには数えきれないほどのジャンルがあります。
けれど、幼少期は、特定のジャンルにこだわらずに、いろいろなダンスや音楽に触れたほうがいいでしょう。
というのも、中学の保健体育で行う「現代的なリズムのダンス」(詳細は前編参照)は、ヒップホップダンスをベースにしてはいるものの、いろいろなダンスのいい部分が取り入れられています。幼少期にジャンルを問わずバランスよく学んでおくと、どんなダンスもスムーズに行えるはずです。
中学校保健体育で男女ともにダンスが必修科目になった2012年頃は、ヒップホップダンスやジャズダンスなど、ジャンルに分かれたダンススクールが多かったと言えます。
もちろん今でも、そういったスクールもたくさんあるのですが、先にも述べたように、子どもの頃はいろいろなダンスに触れるといいので、ジャンルにこだわらずに選ぶといいでしょう。「リズム(系)ダンス」「基礎コース」といった総称のスクールやクラスであれば、ヒップホップダンスをベースにしながら、さまざまなダンスを学べるはずです。近くにそういったコースがなく、ジャンルでしか選べない場合は、一番王道のヒップホップダンスを選択するのがおすすめです。
小学校中・高学年になると、いろいろなダンスを習う中で「ブレイキンがかっこいい!」「テーマパークのダンスを踊りたい」など好きなダンスや音楽が出てくると思うので、その時期に、趣味趣向に合わせてジャンルを決めるといいでしょう。最近は、K -POPの曲に合わせて踊る「K -POPダンス」というジャンルも人気があります。
子どものダンススクールを選ぶ時のポイント

ダンススクールを選ぶ際は、指導者の質を見極めることが大事です。スポーツでは必ずしも名選手が名監督や名コーチではないということと同じで、「○○コンテスト優勝」などダンスの実績をたくさん持っている方でも、しっかり指導できる技術を持っているかどうかというのは別だということです。
ダンスでは、子どもたちそれぞれの表現や動きなどをしっかり見てほめて、個性を伸ばす指導が大事になります。子どもに対しての指導や安全に配慮した指導ができているかを見極めるために、気になるスクールがあれば一度体験に行ってみるといいでしょう。
ダンスは華やかでかっこいい側面があるため、体験に行くと、どうしても指導者の上手なダンスやかっこよさに気を取られてしまいがちですが、指導者の教え方、子どもと目を合わせているか、子どもへの声かけなどをよく観察するように心がけましょう。たとえ指導の善し悪しがわからなくても、子どもに慣れているかどうかは、保護者の目で見てピンとくるはずです。
ダンスは良くも悪くも自由な部分が多いので、指導者の考えや教え方が特定の部分に集中しているスクールもあります。例えば水泳なら、どんなスクールでもまずはバタ足から教えるのが基本だと思うのですが、ダンススクールの場合は、いきなりバタフライのような高度なことを教えるケースも起こりうるということです。
ダンススクールの中には、しっかりしたカリキュラムを用意しているところはまだ少なく、指導者の頭の中で描いている内容をレッスンするというケースが多いのが実情ではないでしょうか。いい指導者にあたれば、それでもいいのですが、子どもを預ける習い事としては不安に感じるでしょう。カリキュラムがなかった場合は、「このスクールに通うことで、子どもはどんなふうに成長するのでしょうか」と質問をしてみるのがポイントです。そうすると、指導方針や考え方も見えてくるはずです。
また、コンテストのような競い合う場ではなく、発表会など成果を発表する場を設けているスクールを選ぶことも大事です。子どもにとってモチベーションになり、人前で緊張しながらも頑張ることは、成長にもつながるからです。
子どものダンスは何歳まで続けるべき?

保護者にも馴染みのある水泳や体操であれば、「クロール・平泳ぎ・背泳ぎができるまで習わせる」「跳び箱8段まで飛べることが目標」など、続ける目安がなんとなく想像できるはずです。では、ダンスを習い始めたら、どれくらい続ければいいのでしょうか。実はダンスには、そうした目安がなく、終わりがないのがダンスの魅力でもあるのです。技やスキルなど、たくさん学ぶものはあるものの、スキルの習得だけを目指しているのではなく、自分の好きな音楽に合わせて、自分が考えたダンスを自由に踊るというのが究極にはゴールになるのです。実際に3~4歳から始めて大人になってもずっと続けている方も多く、ダンスは生涯スポーツになると言えるのではないでしょうか。
子どもがダンスを習い始めたら、「褒めて伸ばす」ことを心がけるといいでしょう。技が中々習得できなくても、保護者は躍起にならず、その子自身の成長スピードの中でできるようになったら褒めてあげることが大事です。「なんで覚えられないの!」「他の子はできているのに」などと口にしてしまうと、子どもはダンスが嫌になってしまうこともあるので、余計なことは言わずに見守ることが大切です。
人気の習い事「ダンス」で子どもに身につく力とは? 習い始める年齢やメリット
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久岡和也さん

一般社団法人ダンス教育振興連盟JDAC 代表理事。「ダンスで社会に新しい価値を創る」を理念に掲げ、教育型ダンススクールのフランチャイズ展開や、介護予防×ダンスのプログラムなど、企業・自治体と連携した多様な社会貢献活動を推進中。他に日本盆踊り協会共同代表など、教育・健康・スポーツ・文化をテーマに、様々な活動を行っている。
子どもにとってもダンスは身近な競技になっている!
ここ数年、ダンスは競技として注目を浴びています。その要因のひとつは、2012年から中学校保健体育で男女ともにダンスが必修科目になったことではないでしょうか。それに伴い、高校の部活動では、ダンス部の人気も高まっています。
2020年にはプロダンスリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)」が発足し、2024年のパリ五輪では、ブレイキン(ストリートダンス)が新競技になり、Ami(湯浅亜実)さんが金メダルを獲得して大きな話題に。また、SNSではダンス動画も人気です。今の子どもたちにとってダンスは、身近な競技になっているのです。
ダンスは小学校・中学校で必修に

今、小学1年生から中学校2年生まで、体育の授業ではダンスが必修になっています。
小学校の体育授業では、以前から「表現運動」を学ぶためにダンスが組み込まれていたのですが、中学校の保健体育では、長らく「武道・ダンス」から選択必修になっていました。それが先にも述べたように、2012年から中学1・2 年生は男女ともに武道・ダンスは必修科目となり、3年生は選択制になったのです。
その理由は、ダンスは運動不足の子やスポーツが苦手な子も身体を動かすことを楽しめる競技だからではないでしょうか。また、コミュニケーション不足の子や人見知りの子たちも、ダンスを通して心の成長が育めることも必修化された要因だと考えられます。
「中学の体育の授業で行うのは、ヒップホップダンスやストリートダンス」と思っている方はいませんか? 中学で行うダンスは、「フォークダンス」「創作ダンス」「現代的なリズムのダンス」の3種類です。
「フォークダンス」は、地域の伝統や文化に根付いた踊りで、「マイム・マイム」などが有名です。日本の民謡や盆踊り、ソーラン節なども含まれ、振り付けは決まっているものの、あまり難しくなく、運動能力にかかわらず取り組めます。
「創作ダンス」は、何らかのテーマに沿って踊りで表現するもの。制限がなく、自由に身体で表現できるのが特長です。
フォークダンスや創作ダンスは、昔から授業に取り入れられていることもありイメージがつきやすいものの、馴染みがないのが「現代的なリズムのダンス」ではないでしょうか。
新学習指導要領には「ロックやヒップホップのリズムの特徴をとらえ、決められたステップや形にとらわれるのではなく、自由な踊りを仲間と一緒に踊ったり見せ合ったりしながら交流することを中心にしていきます」などが記されています。
※参考:新学習指導要領に基づく中学校向け「ダンス」リーフレット
つまり「現代的なリズムのダンス」は、特定ジャンルのダンスではなく、ヒップホップやロックミュージック、ポップスはもちろん、最近流行っている曲に合わせて踊るダンス全般が含まれます。子どもたちが好きな曲に合わせて踊るということなのです。
学校により採用するダンスは異なり、3種類すべてを取り組む場合もあれば、選択するケースもあります。子どもたちには「現代的なリズムのダンス」が人気であり、このダンスを採用する学校は多いと言えます。一方、保健体育の先生の中には、「現代的なリズムのダンス」の教え方がわからないなどの理由から、「フォークダンス」を採用するといったケースもあるようです。
ダンスを習うと身につく力とは?

近年、子どもの習い事としても人気のダンス。ダンスを習うことでどんなことが身につくのでしょうか。
ダンスのジャンルはいろいろありますが、基本的にダンスは全身運動です。音楽に合わせて踊っていると息が上がるほどのダンスもあり有酸素運動になるのです。そのため、体力面の向上が期待できるでしょう。また、上半身と下半身の両方を使うのでバランスよく筋肉がつくのも特長です。身体の柔軟性やバランス感覚も養え、体幹も鍛えられるので、姿勢のよさにもつながるでしょう。
ダンスは、もちろん一人でできるのですが、日本においては集団で踊ることや、みんなで同じ振り付けをきれいに揃えて踊ることが重視されています。高校のダンス部なども、ほんのわずかな乱れもなく、ぴったりと揃っている演技が世界でも評価されています。
そうしたダンスでは、仲間とコミュニケーションを取りながら練習して作品をつくっていくため、コミュニケーション力を育むことができるのです。
また、ダンスは、一人で表現することもあれば、みんなで何かひとつの思いを表現していくこともあります。自分のことを表現することが苦手な子も、ダンスを通じて表現力を身につけることができるでしょう。
「人見知り」「内気で積極性がない」といった子どもは、一見、ダンスには不向きと思いがちですが、ダンスを習うことで変化していくものです。ダンスを通して自分の思いを表現し、それを褒められることで、子どもは自信を持つきっかけになるからです。ダンスは、自己肯定感を育むことにもつながっているのです。
それは、体育の授業の中でも同じです。小学生の体育の授業では、足が速い子や球技が得意な子が目立ち、どうしてもできない子との優劣がついてしまいがち。でも、体育が苦手でも、自分を表現したダンスが褒められると、子どもは身体を動かすことが楽しくなり、自信を持ち、生き生きしてクラスのヒーローになるというケースもよくあるのです。
ダンスを習う大きなメリットは「リズム感を養える」こと

ダンスを習うことの最大のメリットは、リズム感が養えることです。
保護者はよく「私にはリズム感がないので、うちの子もリズム感がなさそう…」と思いがちですが、リズム感は遺伝しないと言われています。むしろ、そんなふうに思っている方の子どもほど、上達が早かったりするものです。子どもの頃からダンスを習う中で、音楽に触れて、身体で表現していくことを繰り返すうちに、自然とリズム感は身についていきます。
リズム感は、野球をはじめ他のスポーツをするうえでも大事になります。幼少期からダンスを通してリズム感をつけておけば、他のスポーツを習った際に活かすことができるのです。
子どものダンスは何歳から始めればいい?
先にも述べたようにダンスは全身運動で、上半身、下半身をバランスよく使います。幼少期は、成長のためにも全身をくまなく動かしたほうがいいので、3歳くらいからダンスを習い始めるのがおすすめです。また、この時期から習っておけば、純粋に音楽や身体を動かすことを楽しめるのです。
もちろん、小学校高学年や中学生から始めてもいいのです。ただ、この頃になると、照れが出てしまったり、子ども自らリズム感がないと思い込んでしまったりする場合もあります。抵抗なく学べる時期から始めると、楽しみながら身体と心の成長につながるでしょう。
いかがでしたか?前編では、ダンスを通して身につく力やダンスを始める年齢などについてお届けしました。後編では、ダンススクールを選ぶ時のポイントについてご紹介します。