便秘の時、さつまいもはNG!?
便秘を防ぐポイントは?
意外と知らない子どもの便秘(後編)
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サッカー元日本代表、AuB(オーブ)株式会社代表取締役社長。腸内細菌の研究からアスリートをサポートする事業を中心に行っている。
便秘の時、さつまいもは逆効果!?
便秘の予防や改善に役立つ食物繊維。食物繊維が豊富な野菜というと「さつまいも」を頭に浮かべる方も多いのではないでしょか。食物繊維は2種類あるため、便秘になった時は、さつまいもだけにこだわらず、⾷物繊維が豊富な野菜・果物・海藻・穀類(もち⻨・雑穀・オートミールなど)・芋類・⾖類など様々な⾷材を摂って、腸内細菌の多様性を⾼めることが大事です。
2種類の食物繊維をバランスよくとろう
便秘を予防、解消する(腸内環境を整える)には、食物繊維の多い食事を摂り入れることが大切です。食物繊維は、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」と水に溶けやすい「水溶性食物繊維」の2種類に大きく分けられます。それぞれ腸内で違った働きをするため、便秘の改善には2種類の食物繊維をバランスよく摂り入れることが大事。さつまいもなどのいも類には、不溶性食物繊維が多く、わかめなどの海藻類には水溶性食物繊維が豊富に含まれています。納豆には、水溶性・不溶性の食物繊維がバランスよく含まれています。
食物繊維の種類
【不溶性食物繊維】
働き…便の量を増やして、腸の運動を活性化させ、便通をよくする
多く含む食材…野菜、きのこ、いも類、穀類など。ボソボソ・ザラザラとした食感が特徴
【水溶性食物繊維】
働き…腸内環境を整えて、便を柔らかくする
多く含む食材…(熟した)果物、海藻類、大麦などネバネバまたはサラサラしているものが多い
一般的に不溶性食物繊維に比べて水溶性食物繊維は摂りにくいため、不足しやすい傾向に。
よく、さつまいもを食べると便秘にいいと言われますが、さつまいもには不溶性食物繊維が多く含まれています。便秘で詰まっている腸内に不溶性食物繊維が豊富な食品を摂ると、余計に腸が詰まって便秘を悪化させることも。便秘気味な子は、さつまいもよりも水溶性食物繊維が豊富な果物や海藻を意識して摂るようにするといいでしょう。
★水溶性食物繊維を多く含む食品
・もち麦、押し麦
・プルーンなどのドライフルーツ
・熟したキウイ、オレンジ
・めかぶ、なめこ、オクラ、長芋、納豆
・アボカド
・寒天ゼリー(参考:寒天ゼリーで便通改善)
便秘解消のために朝食は必ずとることが大切
便秘を予防するには、朝食を食べて、腸に刺激を与えることが重要です。
朝食を抜くと、1日の食事量の減少(食物繊維や水分量の減少)にもつながるため、便の量が増やせなくなり、便秘につながりやすくなるのです。
朝、腸にある程度刺激を与えれば、排便のリズムをつくりやすくなります。
学校では排便を我慢してしまいがちなので、できるだけ朝トイレに行く時間を決めて、習慣にすることが大切です。
朝食を食べる習慣がない人は、まず1口でも何か食べるとこから始めましょう。気軽に食べることができるバナナやヨーグルトドリンクでもOKです。
規則正しい生活サイクルを作ることが大事
生活リズムが整っていないと、排便のリズムが整わないため、規則正しい生活サイクルも大事になってきます。起床・就寝時間を揃え、朝起きたら、太陽の光を浴びるといいでしょう。どうしても週末は生活リズムが乱れがちですが、週末も含めて生活リズムを整えることが大切です。毎⽇の⾷事時間もなるべく同じにし、寝る直前の⾷事はできるだけ避けることです。夜遅い時間に食事をしてしまうと、きちんと消化できずに便秘の原因になってしまいます。
また、腸内環境は睡眠によっても変化するため、規則正しい⽣活を⼼がけてよい睡眠をとるよことも大切です。睡眠の質を上げるには「朝食を食べる」「日中の運動量を増やす」「寝る1時間前くらいに湯船に浸かる」ことがポイントです。朝食を食べると、たんぱく質を作る材料となるアミノ酸の1つ・トリプトファンを摂取でき、それが夜に眠りを促すホルモンのメラトニンを生成させるのです。ちなみに、トリプトファンは大豆製品や乳製品、バナナ、ナッツ類、白米などに含まれています。また、睡眠の質を高めるため、湯船に浸かることも大事になってきます。
なお、腸内細菌の多様性が⾼いほど睡眠の質が向上することが分かってきているので、腸活に取り組めば睡眠の質を上げることにもつながると言えるでしょう。
お菓子やジュースは摂りすぎず、果物やドライフルーツを
お菓子やジュースを摂りすぎてしまうと、その分食事の量が減ってしまいますよね。そうすると、便の量が減ってしまい、お腹に溜まりやすくなることも。また、お菓子は脂質を多く含むものも多く、脂質の摂りすぎも便秘の原因になる可能性があります。
糖分をとりすぎない
お菓子やジュースの過剰摂取には注意して、おやつに果物やドライフルーツなどを摂り入れると、便秘予防につながるものです。また、お菓子でも食物繊維豊富なブラン系のクッキーや乳酸菌入り製品を選ぶといいでしょう。
水分をこまめに摂る
なお、水分を多量に摂ったからといって、便が柔らかくなったり、便秘が解消しやすいわけではありません。ただし、⼦どもは⼤⼈に⽐べて代謝がよいため、脱水になってしまうと、便が硬くなってしまい、便秘の原因になることもあります。水分は十分とるように心がけましょう。
【飲料⽔+⾷事から1⽇に必要な⽔分量の⽬安】
幼児:1kgあたり約90〜100ml
児童:1kgあたり約60〜80ml
その他、便秘の予防には、腸内細菌の働きやすい環境を保つことが大事。ですので、湯船にゆっくり浸かる、運動する、冷たいものの摂り過ぎに気をつけるなど、お腹を中⼼に⾝体を温めることを意識するといいでしょう。また、お腹や腰まわりを温める「お腹の“の”の字マッサージ」なども効果的と言われています。
子どもの便秘に親子で気づくことも大切
前編でもお話ししたように、子どもは便秘になっていても気づいていなかったり、相談できずに自分で抱え込んでしまい、便秘がひどくなってから判明することもあります。ですので、2歳後半〜3歳くらいのトイレトレーニングの時期から、⼀緒にトイレに⼊って便を観察したり、理想の便の状態などの話をしておくと、便秘に気づきやすくなるでしょう。
【便の理想の状態】
・形:バナナ状、もしくは、とぐろを巻いた形
・量:バナナ1~2本程度
・硬さ:少し柔らかめ、なめらか
・色:黄土色や茶色
・におい:悪臭ではなく少しある程度
・重さ:トイレの水に少し浮くくらい
「どんなウンチだった?」と聞くことを習慣に!
子どもの便秘を見逃さないためには、普段から便について親子で会話をしておくことも大切です。高学年になると、便の話をしづらくなってしまう子もいるので、低学年のうちからお子さんに「どんなウンチだった?」と聞くことを習慣にしましょう。先に記した便の「形」「におい」「硬さ」を聞いてあげると、子どもの便秘に素早く気づいて、対処することができるはずです。
また、カレンダーなどを利⽤して親子で便記録をとるようにすれば、⾃然に便通の話題がしやすくなるでしょう。
どのくらい便が出ていないか、期間も把握する
便秘の定義は「3⽇以上排便がない状態,または毎⽇排便があっても残便感がある状態(⽇本内科学会)」とされています。けれど、下記の条件のうち2つ以上合致する場合は、便秘になっている可能性もあるのです。便について親子で会話をする際には、下記の内容についても話をするといいでしょう。
・排便頻度が3⽇に1回以下
・便失禁がある
・便を我慢することがある
・排便時に痛みがある
・便が硬い
・トイレが詰まるくらい⼤きな便が出る
さつまいもで便秘予防をするときのポイント
「レジスタントスターチ」という言葉、ご存知ですか?レジスタントスターチとは、炭⽔化物である糖質(デンプン)のうち、腸で吸収されずに⼤腸へと届く栄養素のことです。実は、さつまいもを食べる時に一工夫すれば、レジスタントスターチを摂り入れることができるのです。
さつまいもを調理する時の工夫
レジスタントスターチは、⼩腸で吸収されずに⼤腸まで届く成分で、腸内環境の改善に役⽴ちます。また、⼤腸を刺激するため、便の回数や量を増やすなどの効果も期待できるでしょう。簡単にレジスタントスターチを摂り入れる方法は、炭水化物を冷やすことです。ですので、さつまいもを調理する時は、焼き芋やふかし芋にした後、⼀度冷やしてから食べると、レジスタントスターチを摂り入れることができるのです。
まとめ
2~6歳は「腸育期」とも呼ばれる、多様な腸内細菌を獲得し腸内に定着できる、腸内の土台(基礎)づくりの時期です。多様な腸内細菌を獲得するためには、子どもと親の食習慣や食環境、規則正しい生活サイクルが大事になってきます。食事では、食物繊維以外にも、ヨーグルトや納⾖、塩こうじ、味噌、⽢酒など発酵⾷品を摂り入れるようにすると、色々な種類の菌を獲得することになり、腸内環境の多様性アップにつながるでしょう。
また、⼝と腸はつながっているため、⼝腔細菌を飲み込むことで⼀部の菌が腸まで届いて、腸内環境のバランスを崩す原因になる場合があります。ですので、日頃から子どもの口を清潔に保つように心がけることも大事です。腸に悪い菌を送らないためには、朝、起きてすぐの歯みがきやうがいが有効だと言われています。
幼い頃から食物繊維が豊富な食材や発酵食品などを摂り入れて腸の土台をつくっておくことが、子どもの便秘予防にもつながると言えるでしょう。
毎日便が出ていても便秘かも!?
意外と知らない子どもの便秘(前編)
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鈴木啓太さん
サッカー元日本代表、AuB(オーブ)株式会社代表取締役社長。自社での腸内細菌の研究を土台に、「すべての人を、ベストコンディションに。」をミッションに、フードテック事業を展開し、現在は健康食品の販売を行っている。
子どもの便秘を見逃しているかも! 便秘の原因、症状とは?
小学生の6人に1人が便秘状態・便秘予備群!!
お子さんと、便について会話をしていますか?
「毎日話している!」という方は、少ないかもしれないですよね。便について周囲の人と比べたり、話をすることはほとんどないので、実は便秘だと自覚していない人がたくさんいるのです。
便秘の定義は「3日以上排便がない状態。または毎日排便があっても残便感がある状態」(日本内科学会)とされていることから、毎日便が出ていても、すっきりしなければ便秘ということになります。また、下記の条件のうち2つ以上合致する人は便秘の可能性も!
・排便頻度が3日に1回以下
・便を我慢することがある
・便が硬い
・トイレが詰まるくらい大きな便が出る
・排便時に痛みがある
・便失禁がある
※参考:国際的な便秘の定義 ROMEⅢ
さらに、とある調査によると…
・小学生の6人に1人(16.6%)が便秘状態。
・さらに3人に1人(37.3%)は便秘状態・便秘予備軍!
・便秘状態の小学生の47.2%は誰にも相談したことがなく、保護者の26.6%は子どもが便秘状態にあると認識せず。
※参考:NPO 法人 日本トイレ研究所「小学生の排便と生活習慣に関する調査」
という結果もあることから、ママが子どもの便秘を見逃している可能性も!
子どもの便秘は、我慢することがきっかけ
そもそも、子どもの便秘は、排便を我慢することがきっかけで起こるケースが多いものです。実際に、先にあげた調査によると「小学生の2人に1人(51.3%)が学校でうんちをしないと回答」「56.4%の子どもが学校でうんちをしたくなった時に我慢している」という結果が出ています。
参考:子どもの便秘の正しい治療
上記の図は、子どもの便秘の悪循環が起こる理由を表しています。
排便を我慢してしまうと、便が腸の中にとどまる時間が長くなるので、腸の水分が吸収されてしまい、便が固くなってしまいます。そうすると、より一層、便が出にくくなり、とくに子どもは押し出す力が弱いので、出すことができなくなるのです。また、便が固くなると、排便時に痛みを伴う場合もあるので、さらに便を出すのが嫌になり……と、一度便が溜まると悪循環が起きやすく、慢性的な便秘になりやすいのです。
便秘と感じたら、ビフィズス菌や酪酸菌を積極的に摂ること
腸内環境でいうと、便秘は、本来出さなければいけないものがずっと腸に溜まっている状態なので、腸内環境が乱れ、悪玉菌を増やすことにつながってしまいます。悪玉菌が作り出す有害物質が増えると、便秘だけでなく、身体の様々な不調の原因になる可能性もあるのです。
便秘を解消して悪玉菌の増殖を抑制するには、短鎖脂肪酸の多い腸内環境にすることです。短鎖脂肪酸は、腸内環境を整え、ぜん動運動を促すなど便秘の解消を助ける働きもあるからです。短鎖脂肪酸とは乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸などのことで、腸内では腸内細菌が食物繊維などを発酵することによって作り出しています。
短鎖脂肪酸を生成する代表的な腸内細菌は乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌です。そのため、これらの菌が増えるような食事を積極的に摂ると、便秘の改善にもつながりやすいと言えるでしょう。
おならの臭いは便秘の目安にも!
なお、子どもの便秘に気付く目安として、おならの臭いがあります。 おならは、腸内細菌が発酵してガスとして出るのですが、腸内環境のバランスがいいと、おならの臭いはさほどしないと言われています。一方、便秘などで腸内環境のバランスが悪くなると、うまく発酵されず、臭いがきつくなるとも。 お子さんのおならの臭いがすごく気になる場合は、便秘の可能性があるかもしれませんよ!
理想的な便の形や硬さは?
上記の表は便の状態を7段階に分けたものです。理想的な便は、バナナ状で黄土色、長さは30cm以上あることです。また、便の回数は1日1回以上、スッキリしたという感覚も大事です。腸内環境が整っていれば③~⑤のようなよい便が出るでしょう。日頃からお子さんに「どんなうんちだった?」と聞くことを習慣にし、①、②、⑥、⑦のような悪い便が出たと言った際は、昨日、何を食べたかを考えてみることです。そうすれば、どういった食材がお子さんの身体に合っていないかもわかるでしょう。
子どもの便秘改善に効果的な食事は?
便秘を改善するには、ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品から生きた菌を摂ることです。ヨーグルトはメーカー・ブランドによって入っている菌が異なるので、いろいろな種類のヨーグルトを食べるのがポイントです。また、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂ることも大事です。
水分をたくさん摂取する
便の成分は60%以上が水分でできています。水分不足になると便の形成がうまくできないため、便秘になってしまいます。便秘改善のためには、水分をたくさん摂るようにしましょう。ただし、飲み物といっても、ジュースはもちろん、お茶も適していません。お茶に含まれているカフェインには利尿作用があるため、出ていく水分を増加させてしまうからです。便秘解消のためには、水またはカフェインを含まない水分を摂るようにしましょう。
食物繊維豊富な食材で腸を刺激する
子どもの便秘がなかなか治らない時は、積極的に食物繊維が豊富な食材を摂ることです。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があります。水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになり、便を柔らかくする働きがあり、不溶性食物繊維は便の量を増やして、便通をよくします。そのため、2種類の食物繊維をバランスよく摂れば腸が刺激されて、便意にもつながるでしょう。水溶性食物繊維は、熟した果物、海藻類、大麦に、不溶性食物繊維は、野菜、きのこ、穀類などに多く含まれています。
子どもの便秘対策・予防方法とは
子どもの便秘を予防するためには、規則正しい生活で排便リズムを整えることが大切です。毎日、同じ時間に目覚め、朝ごはんを食べて、就寝時間を統一すれば体内時計が整うので、排便も習慣になっていくのです。
規則正しい生活の中でも、とくに影響が大きいのは朝ごはんです。朝ごはんを抜いてしまうと、1日の食物繊維や水分量も減少してしまうので、便の量が増やせなくなり、便秘につながりやすくなってしまいます。腸に刺激を与えるためにも、朝ごはんは必ず食べることが重要です。また、子どもは学校では排便を我慢してしまいがちなので、朝トイレに行く時間を決めて、習慣にするようにしましょう。
排便日誌をつけて便秘期間を把握
お子さんの年齢が上がっていくにつれて、親子の間で便に関する話題が減っていく傾向にあると思います。そのため、お子さんの排便が滞っていることに気がつきにくくなり、結果、便秘であることを把握するのが遅れるといったことがあります。そうならないためにも、排便日誌などをつけて、毎日親子で便についての話題が上がるような仕掛けをしてあげるとよいでしょう。
なお、排便日誌は、日本小児栄養消化器肝臓学会のホームページからダウンロードすることができます。
※日本小児栄養消化器肝臓学会のホームページ
普段から適度な運動をする
運動をすれば、お腹周りが動いて腸が刺激されますし、また、運動によって体内温度が2度上昇することで、腸内細菌が活性化する手助けにもなります。ですので、子どもの便秘を予防するためにも、日頃から適度な運動を心がけましょう。
子どもの便秘に気づくためには?
子どもは便秘になっていても気づいていない場合が多いものです。子どもの便秘にいち早く気づくためにも、幼児の頃から「どんなうんちだった?」と聞くことを習慣にしましょう。また、便秘になった時は、すぐに薬に頼るのではなく、水分をたくさん摂ったり、食物繊維の豊富な食材を摂り入れるなど、まずは腸を刺激することが大事です。何よりも規則正しい生活を送ることが、便秘予防につながります。