子どものケガ予防につながる身体づくりとは?
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近年、子どもの転倒によるケガが増えているようです。
その原因として考えられるのは、昔は公園遊びなどで運動能力が自然と身についていたものの、近年は外遊びが減ったことなどから身体全体を動かしたり、身体への衝撃を受けたりなどの体験が少なくなり、基本的な運動能力が養われていない子が多いからです。
また、スポーツに打ち込んでいる子どもでも、特定のスポーツだけを行っているケースが多く、同じような動きを繰り返していたり、運動量が多すぎてしまうとケガをしやすくなってしまいます。
子どもがケガをしないためにも、普段からどんなことに気を付けておけばいいのかを知っておきましょう。
ケガをしない体作りには何をしたらいい?
ケガをしない体づくりのためには、基本的な運動能力を身に付けておくことが大事です。スポーツを頑張っているから、うちの子は大丈夫だと思っていても、最近は幼い頃から特定のスポーツだけを行っているケースが多く、幼少期から専門競技に特化してしまうと、そのスポーツで使う身体の動きは上達しても、それ以外の基本的な運動能力が発達していないというケースもあるのです。
伸長の発育がピークを迎える前に、いろいろな運動をしておくと、運動能力が高まり、基礎体力が身に付くと言われています。
また、オスグット病やシーバー病など成長期に起こりやすいケガもあります。成長期特有のケガを防ぐためには、日頃からストレッチなどを行って柔軟性を高めておくことが大事です。
身長がぐっと伸び始める前までに
基礎体力をつけておくことが大切
人は大人になるまでに、神経や骨、臓器などさまざまなものが発達していきます。下記は、「スキャモンの発達・発育曲線」といって、それらの成長度合いを、生まれてから20歳になるまでの間、リンパ系型、神経系型、一般系型、生殖器系型の4つに分けて表したものです。
※soccer MAMA WEBより流用
器用さやリズム感などを担う脳神経回路(神経系型)の発達は、12歳になる頃にはほぼ100%に達していますよね。そのため、9~12歳は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、あらゆる動作を習得するのに適している時期だと言われています。
でも、子どもは同じ年齢でも、身長や体格に差があるものです。そのため、近年は、生まれてからの暦の上での年齢「暦年齢」に合わせて運動能力を伸ばしていくよりも、骨年齢(身長)や生殖器の発達などを測った「生物学的年齢」も考慮したほうがいいと言われています。
中でも、とくに運動能力と関係すると言われているのが身長です。
身長の発育の速度が最も盛んになる期間を「PHV(Peak Height Velocity)」と言い、個人差はあるものの、男性のPHVは平均13~14歳頃、女性のPHVは平均11~12歳頃に訪れると言われています。
このPHVに入る前に、いろいろな運動をして基礎体力を養うとより身につくと言われています。ですので、この時期にいろいろなスポーツをすれば健康でバランスのいい身体や、ケガ予防にもつながるといえるでしょう。なお、急激に身長が伸びてからピークまでの間は、競技に必要な持久力を伸ばすといいと言われています。
子どもの予測身長を知っておこう!
お子さんの身長の伸び具合を把握していますか?子育て中は何かと忙しいので、ついつい見過ごしてしまうこともあるのではないでしょうか。
身長がぐっと伸び始める頃からピークを迎えるあたりの時期が「成長期」と言われ、成長期はまだ骨が成熟していないため、ケガが起こりやすい時期でもあるのです。
小学校では定期的に身体測定を行っているので、母子手帳の成長曲線のシートに身長や体重を書き込んで日頃から成長度合いを確認しておくといいでしょう。
また、子どもの最終的な身長を予測できていれば、成長期のピークや成長期がどれくらい続くのかの目安になりますよね。子どもの予測身長は、両親の身長から計算できます。簡易的な方法なので誤差はありますが、お子さんの成人になった際の予測身長として活用することができます。
男の子の場合:[お父さんの身長+(お母さんの身長+13)]÷2
女の子の場合:[お父さんの身長+(お母さんの身長−13)]÷2
※Target Height法
また、ケガをした際にレントゲンを撮る機会があれば、骨端線があるかどうかを確認してみてください。骨端線とは、骨と骨の間にあるすき間のことで、レントゲンには線のように写っています。骨端線は骨が成熟した状態になると閉じるので、骨端線があればまだ身長が伸びる可能性があると言えるでしょう。
なお、スポーツに打ち込んでいる子は、身長が伸びきっていない時期に、チームの中で同じ年齢だからといって、負荷のあるトレーニングを行いすぎると、身体への刺激が強すぎてしまい、身長が伸びづらくなったり、ケガやスポーツ障害につながってしまうこともあるでしょう。負荷をかけるトレーニングは、身長の伸びがピークを迎えた後、徐々に行うことが重要です。
手を使う簡単な運動を取り入れよう
安全に気をつけながら遊ばせていても、子どもは時に転倒してしまうことがあります。転倒によるケガの中でも、転んだ時に手をついてしまい手首にヒビが入った、骨折したというケースが多いようです。それは、公園遊びが少ないがゆえ、滑り台や鉄棒など手を使う遊びが減っているのが要因の一つです。
ですので、公園や校庭などで、手を使う遊具で積極的に遊ぶことが、将来のケガを防ぐ対策になると言えるでしょう。
また、日頃から下記のような手を使う簡単な運動を取り入れるのもおすすめです。
・かえる跳び
しゃがんで両手を前につき、お尻を上げるように両足でジャンプ。慣れてきたら、両手を一度床から離してから手をついてジャンプ。
・くも歩き
仰向けになって両手を後ろにつき、お尻を上げた状態(四つん這いの姿勢)で、前後や左右に歩く。
他に、床にうつ伏せで寝た状態から、手をついてすぐに起き上がるという動作を繰り返すのもおすすめです。
柔軟性を高めよう
大人と違い、子どもの体は成長速度が早いため、骨の成長に対して筋肉の柔軟性が保たれていないとケガにつながってしまいます。
また、柔軟性が低いということは、ゴムでいうと縮むけれど伸びない状態のこと。例えば、筋肉が伸びない状態で膝を曲げると、膝に負担がかかることは想像できると思います。
ですので、ケガをしないためにも、日頃からストレッチなどを行い柔軟性を高めておくことが大事です。
成長期に起こりやすいケガ(オスグット病やシーバー病)をしないためには、単純に全体をストレッチするだけでなく、部位を決めて(ふくらはぎや太ももなどケガの要因になる箇所)ストレッチを行うといいでしょう。
正しい姿勢を身につけよう
同じ動作でも、姿勢によって体への負担は変わってきます。
例えば、背中が丸まった姿勢(猫背)で腰を真下に落とす場合、膝を多く曲げるはずです。一方、背筋をまっすぐにして腰を真下に落とすと、背中が丸まっている時より膝を使わないのではないでしょうか。
このように、姿勢ひとつ変わるだけで使う関節の割合が変わり、負担が多い箇所はケガのリスクも高くなってしまうのです。
よい姿勢を保つためには、股関節の使い方が大事になってきます。下記に記したような股関節をたたむ(曲げる)運動などを取り入れると、股関節を上手く使えるようになるでしょう。
・股関節をたたむ運動
①両膝立ちになり、棒(タオルを丸めたものでも可)を体の後ろで持つ。
②背筋を伸ばしたまま、お尻を後ろにゆっくり引き、元に戻す。10回程度、繰り返す。
※参照https://youtu.be/JY7VmCnNW58
食生活に気をつけよう
ケガをしない丈夫な体づくりのためにも、栄養バランスのよい食事を摂ることは基本です。どんなによいトレーニングしても栄養が不足していれば、体は疲労してしまうからです。野菜が苦手なお子さんも多いと思うのですが、緑黄色野菜を日頃からしっかり摂ることが大切です。緑黄色野菜に多く含まれているビタミンAが不足してしまうと、ケガをしても治るのに時間がかかると言われているためです。
睡眠をしっかりとろう
睡眠時間が短くなると筋肉のケガが多くなると言われています。学年が上がるにつれて、どうしても睡眠時間が減ってしまいがちですが、8時間~9時間は確保できるようにしましょう。
ケガをしやすいタイミングは?
スポーツの中でも、とくに体同士がぶつかりあうコンタクトスポーツをしている時はケガをしやすいものです。また、特定のスポーツを休みなく繰り返し行なっている場合や、運動量が多すぎてしまう時もケガをしやすいタイミングと言えるでしょう。
先にも述べたように、オスグッド病やシーバー病など成長期特有のケガは、体の柔軟性が低いと、起こりやすくなってしまいます。
コンタクトスポーツをしているとき
コンタクトスポーツとは、競技中に接触が起こるスポーツのことです。接触度合いはありますが、ラグビーやボクシングなどが代表的です。その他、サッカーや野球なども相手選手と接触をする競技になるのでコンタクトスポーツと定義することができます。
コンタクトスポーツがケガをしやすいのは、身体同士がぶつかり合うことで打撲をしたり、接触によってバランスを崩してしまうと捻挫などのリスクも高くなってしまうためです。
スポーツ障害とは?
スポーツによって起こるケガは、大きく「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」に分けられます。スポーツ障害とは、これらの総称で、スポーツに関して起こる運動器(運動に関わる骨・関節・筋肉・靭帯・腱・神経などのこと)のトラブルと言われています。
スポーツ外傷とスポーツ障害の違い
スポーツ外傷は転倒や衝突など1回の外力で損傷してしまったことを指します。例えば、打撲や捻挫、骨折、肉離れなどです。
一方、スポーツ障害は、比較的長期期間に繰り返される過度の運動負荷により損傷してしまったことを指します。例えば、オスグッド病やシーバー病、腰椎分離症、疲労骨折や椎間板ヘルニアなどが挙げられます。
成長期において、スポーツに打ち込んでいる子どもたちに増えていると言われているのが「スポーツ障害」です。幼い頃から特定のスポーツだけを行う子どもが増え、限定した身体の部位だけを頻繁に使うことの積み重ねが関係していると言われています。
中でも、かかとの骨に痛みが生じるシーバー病は、たくさん走るスポーツやジャンプ動作を伴う競技を行っていると、8~12歳頃に起こりやすいと言われています。
成長期に起こりやすい膝のスポーツ障害
成長期に起こりやすい膝のスポーツ障害には「オスグッド病」と「ジャンパー膝」が挙げられます。
サッカーやバスケットボール、テニス、バレーボールなど、膝に負担がかかるスポーツを行っていると、12歳頃から発症しやすいと言われています。膝を過度に使ってしまうことや、膝への負担に対して回復をさせる期間が足らないことが原因で起こることが多いでしょう。
オスグッド病
「オスグッド病」とは、膝の痛みのことで、成長痛とも呼ばれます。成長期の脛骨(膝と足首の間の太い骨)が、太もも前の筋肉に引っ張られることが続くと剥離し、痛みが生じます。
膝の使いすぎだけでなく、骨端線(上記参照)が閉じていないことや、急激な骨の発達で筋肉の柔軟性が足らないことによっても痛みが出る可能性があるので、先に挙げたような膝に負担がかかるスポーツを行っているお子さんだけでなく、身長が伸びる時期には起こることがあるでしょう。
ジャンパー膝
「ジャンパー膝」とは、膝蓋腱炎(しつがいこつえん)とも呼ばれ、膝蓋骨(膝のお皿)周辺に痛みが生じます。先に挙げたスポーツなどによりジャンプの動作を過度に繰り返していると生じることが多いでしょう。
「オスグッド病」や「ジャンパー膝」を防ぐためには、正しい姿勢を習得することや膝の痛みがある際は休息を設けることが重要です。
スポーツに打ち込んでいる子どもの場合、「膝は痛いけど続けられる」と練習を継続してしまうことも多いのですが、結果として満足のいくパフォーマンスが続けられないことが見受けられます。よいパフォーマンスを続けるためにも、「休養(リカバリー)もトレーニング」だと思って、練習を休み、安静期間を設けることが大事です。
まとめ
子どもの体づくりのためには、伸長の発育がピークを迎える前に、いろいろなスポーツを通して、基礎体力を身に付けておくことが大事です。
また、日頃から、正しい姿勢を気にかけてあげたり、栄養バランスのよい食事や睡眠時間を確保できるようにサポートしてあげましょう。
とくにスポーツに打ち込んでいる子どもは、成長期特有の「オスグッド病」や「ジャンパー膝」が生じる可能性があるので、日頃からストレッチなどで柔軟性を高め、過剰な練習量にならないように心がけることも大切です。
いかがでしたか?前編では、運動能力の発達時期や予測身長、正しい姿勢、食生活などケガをしない体づくりのために大切なことをお届けしました。後編では、スポーツに打ち込んでいる子どもに多い「スポーツ障害」について、より詳しくご紹介します。
スポーツに打ち込んでいる子どもがなりやすい!?
「スポーツ障害」について知っておこう
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「スポーツ障害」とは?
身長がぐんぐん伸びている成長期において、スポーツに打ち込んでいる子どもたちに増えているのが「スポーツ障害」です。幼い頃から特定のスポーツだけを行う子どもが増え、限定した身体の部位だけを頻繁に使うことの積み重ねが関係していると言われています。
■代表的なスポーツ障害の種類
スポーツ障害の中でも代表的なのが「オスグッド病」「シーバー病」「腰椎分離症」です。
「オスグッド病」は、膝の痛みのことで、成長痛とも呼ばれます。成長期の脛骨(膝と足首の間の太い骨)が、太もも前の筋肉に引っ張られることが続くと剥離し、痛みが生じます。サッカーやバスケットボール、テニス、バレーボールなど、膝に負担がかかるスポーツを行っていると、12歳頃から発症しやすいと言われています。また、スポーツに打ち込んでいなくても、身長が伸びる時期に生じることがあります。
「オスグッド病」になってしまったら、練習を休み、安静期間を設けることが必要だと言われています。
「シーバー病」とは、踵の痛みのことで、10歳~13歳頃に発生します。子どもの骨はまだ成熟していないので、足の裏の筋肉やアキレス腱など踵に関係する筋肉、腱が引っ張られる力で踵に痛みが生じる障害です。子どもは「かかとをつくと痛い」と表現することが多いでしょう。
練習後にのみ痛みが生じる場合は、まだ初期段階だと考えられるので、踵にクッションのあるシューズを履いて練習することです。練習中にも痛みがでる場合は重症になっている可能性があるので、安静期間を設ける必要があると言われています。
「腰椎分離症」は、腰の疲労骨折です。成長期は骨が柔らかいので、身体をひねる動作や背中を反らす動作を繰り返すことで、腰の骨が圧迫されて疲労骨折を起こしてしまいます。14歳頃に発症しやすいと言われ、最初は腰を捻った時に腰痛があり、徐々に痛みが増していきます。
「腰椎分離症」になってしまったら、MRIやCT検査を行い、安静を保つことが大切です。
また、再発のリスクを防ぐために体幹トレーニングも必要でしょう。
■スポーツ障害をチェックするには?
3つの症状の中でもとくに発症しやすいのが「オスグッド病」だと言われています。「オスグッド病」になっているかどうかは、身長がぐっと伸びてきた時にチェックすることができます。
膝の下の少し出っ張っているところを押してみて痛い場合は、「オスグッド病」の可能性があるかもしれません。
「腰椎分離症」になりやすいかどうかのチェックはお子さんの前屈姿勢から確認できます。前屈したときに腰の部分が丸まってなく、真っ直ぐな状態になっていたり、また、立った時に反り腰(腰が反っている状態)になっていたりすると、「腰椎分離症」になりやすいかもしれません。
ランニングが多いスポーツをしている子どもは、すねの内側の太い骨部分を押して痛くないかもチェックするといいでしょう。痛い場合は、スポーツ障害の一種である「シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)」の場合があるでしょう。
スポーツ障害やケガ予防のために身体を柔軟にしておこう
子どもが長く健康的な身体を維持し、好きなスポーツに打ち込めるように、日頃から身体を柔軟にしておくことが大事です。柔軟性のチェック方法や身体を柔軟にするためのストレッチをご紹介します。
■子どもの柔軟性をチェック
子どもは身体が硬いとケガはもちろん、先に述べたスポーツ障害につがなってしまう場合があります。下記の方法で子どもの柔軟性をチェックしてみましょう。
・足関節:立った状態から踵を浮かせずに両腕で膝をかかえてしゃがむ。しゃがめればOK。
・太もも前の筋肉:うつ伏せに寝て左手で左足をつかむ(右手、右足でも可)。踵がお尻につけばOK。
・股関節:仰向けに寝て左手で左足をつかむ(右手、右足でも可)。太ももの半分以上がお腹につけばOK。
・背中の筋肉:仰向けに寝て右膝を立て、左側に倒して床につける(左膝を立て、右側に倒しても可 )。身体を倒した時、 床に膝がつけばOK。
■スポーツ障害を予防するための方法
「シーバー病」は足の裏やふくらはぎの硬さが原因で発症する場合が多いため、足の裏にゴルフボールを置いてごろごろマッサージをしたり、ふくらはぎのストレッチをするといいでしょう。
「オスグット病」は太ももや股関節の前側の硬さが影響します。後述の太もものストレッチを行うようにしましょう。
前述の「腰椎分離症」になりやすいかのチェックで反り腰になっていた場合は、体幹部が安定していないので、体幹トレーニングを行うといいでしょう。
■今日から簡単にできるストレッチ
運動をする習慣がない子どもは、生活の中で同じ動きしか行わないので、身体の動きが小さくなり、どうしても筋肉が硬くなりがちです。さらに、運動をして体温が上がる機会が少ないので、血液循環が悪くなり筋肉が緊張しやすくなるため、身体が硬くなりやすいといえます。
スポーツ障害やケガを防ぐために、下記に紹介する簡単なストレッチなどを取り入れて、日頃から子どもの身体を柔軟にするように心がけましょう。
・腸腰筋(股関節の前側)のストレッチ
1片膝をついて、頭まで一直線になるような姿勢をとる。
2膝をついている側のお腹とお尻に力を入れ、両手で前の膝を軽く押し、深呼吸を2回する。
・大腿四頭筋(太ももの前側)のストレッチ
1横向きに寝て、下側の足を曲げる。
2上側の足を片手で持ち、膝を後ろに引き、深呼吸を3回する。