1980年に発売して以来、子どもたちに長く愛され続ける「くもんのこどもえんぴつ」。三角形のかたち、太さ、長さ、芯の濃さを試行錯誤して開発された鉛筆です。子どもたちにとって最高の書き心地で、書ける実感とやる気につながる。そんな「くもんのこどもえんぴつ」の開発秘話やこだわりについて、株式会社くもん出版の企画開発部玩具開発チームの山田健太リーダーと、製作部製作チームの桃井雅子さんにお話を伺いました。
握りやすく、書きやすい。「くもんのこどもえんぴつ」開発のきっかけは?
KUMONでは、1979年から幼児向けに運筆の練習をする教材の制作が始まりました。「そういった教材があるなら、初めて鉛筆を持つ幼児さんにぴったりの鉛筆が必要だろう」というのが「くもんのこどもえんぴつ」誕生のきっかけです。大きな特長は、三角形のかたちになっていること。初めて鉛筆を持つお子さんの小さな手でも、親指・人さし指・中指の三本の指で、自然と正しく握れる持ち方に導きやすいのです。さらに、無駄な力を入れすぎずに握れる太さを追求し、鉛筆操作に慣れていないお子さんもコントロールしやすい長さを試行錯誤し、設計しています。(山田)
さらに、まだ筆圧が弱いお子さんでも「自分で線が書けた!」という実感や意欲につながりやすいように、濃くて柔らかい芯材を採用しています。しかし、6Bの芯は濃く柔らかい反面折れやすいため、開発当時は太くしたり、材質の調合を調整したり、折れにくくするのに苦労したと聞いています。6Bなどはなかなか見かけない濃さだと思いますが、お子さんの書いた実感に繋げるためには、一番柔らかい6Bの芯だったんです。(桃井)
子どもの手にやさしく寄り添い、軽さを感じる秘密
「くもんのこどもえんぴつ」の製造工程としては、木の板の間に芯材を挟んで削る、という一般的な鉛筆の作り方と大きく違いはありません。ただ、「くもんのこどもえんぴつ」は太軸で芯も太いのに、持つと “軽い”と感じることが、大きなこだわりポイントです。その秘密は、鉛筆の表面。表面にニスが複数回塗られているので、さらさらとした触り心地を叶えているんです。重さ自体はそこまで大きく変わらないのですが、触り心地によって軽さを感じる工夫がされています。軽いと感じることで、子どもたちにとって最高の書き心地にも繋がります。私も初めてそれを聞いた時、驚きました!(桃井)
KUMONの教室でモニターを実施し、先生や生徒さんの声を改良や開発に反映
くもん出版では、「くもんのこどもえんぴつ」のほか、知育玩具やドリル、絵本など、さまざまな商品を開発しています。開発段階でモニターを実施し、実際にKUMONの教室で子どもたちに試作品を使っていただくこともあります。「くもんのこどもえんぴつ」の開発当時も、モニターを経て太さや長さ、濃さを細かく調整していきました。専用のえんぴつ補助具である「もちかたサポーター」も、実はくもんの先生のアイディアから生まれた商品なんです。(山田)
▲「くもんのこどもえんぴつ」専用の付属品。上から時計回りに、「えんぴつけずり」、「もちかたサポーター」、「キャップ」、「ホルダー」。
私たちは、”子どもから学ぶ”という姿勢を大切にしています。KUMONの教室に試作品を持っていくと、子どもたちが全く予想外の使い方をすることも多々あります。しっかり使ってもらい様子を観察することで、発見や気づきを得て改良していきます。また、くもんの先生も指導の観点からアドバイスをくださいます。日々子どもたちを見ておられるので、「どこでつまずくか」「どうしたら解決するか」「どのような絵柄や配置がよいか」など知見も豊富で、企画自体のヒントをいただくこともあります。KUMONの教室で補助として教具などを活用くださるケースもありますので、くもん出版の商品を通じて、先生方の指導のお役にも立てたらいいなと思っています。子どもたちの前向きな姿勢や、楽しくよりよい学びに繋がるように、商品の開発・改良を続けてまいります。(山田)
くもんの先生とも連携しながら、「子どもたちのよりよい学びのために」と商品開発を行うくもん出版。最後に、くもんの先生に興味を持ってくださっている方へのメッセージを伺うと、「私たちがモニターで教室に足を運ぶ間だけでも、子どもたちの成長を感じることが多々あり、とても幸せな気持ちになります。きっと先生は毎回このような瞬間を目の当たりにされているんだろうなと。子どもたちの成長に携われる素敵なお仕事だと思いますので、同じKUMONグループの一員として、ぜひ一緒に仕事ができたら嬉しいです」と、笑顔で答えてくれました。